大嫌いな幼馴染みは嫌がらせが好き

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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6話・大事にするのが好き

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 小首を傾げたまま、胡桃沢さんを見つめる。


「あ、えーっと……」


 すると胡桃沢さんは、明らかに動揺していた。
 気まずそうに、それでいてあからさまに、視線を逸らされる。


「胡桃沢さんって、優しい人……だよ、ね」


 美鶴をまだ、嫌っていたとき。

 廊下でハデに転ばされたら、胡桃沢さんはすぐに助けてくれた。
 俺が美鶴に虐められると、そばにいたら助けてくれる。

 徹も、胡桃沢さんも……優しいんだ。


「……そんなんじゃ、ないわよ」


 褒めたつもり、だった。

 なのに胡桃沢さんは、俺の言葉を否定したのだ。


「ご、ごめんっ! 変な意味はなかったんだけど……気、悪くしちゃった……かな?」


 慌てて謝罪の言葉を述べると、胡桃沢さんが俺に視線を向けた。

 ――何故か、ほっぺを赤くして。


「真冬くんって……小さい頃から、美鶴のことばっかりよね」


 顔の赤い胡桃沢さんは突然、心外なことを口にする。
 予想外の言葉に、俺は絶句した。

 それでも、胡桃沢さんは続ける。


「小さい頃からずっとずっと、美鶴のことだけ考えてて……真冬くんは『嫌い』とか『興味ない』とか言ってたけど、あんなの……その反対にしか見えないわよ……」
「は、反対、って……?」
「だ~か~ら~っ!」


 ズイッと、胡桃沢さんは距離を詰めてきた。


「――美鶴のこと、意識しまくってたでしょってこと!」


 ……。

 …………?

 ……はい?


「あっ、気付いてたのはアタシだけよ? さすがに、徹も気付いてないと思う。でも、最近はあの俺様バカとなにか進展あった感じでしょ? たぶん今は徹も気付いて――」
「ま、まま、待ってまってっ! 胡桃沢さん、ちょっと待って!」


 困惑する俺をどんどん置いていき、胡桃沢さんが話を続ける。
 だから俺は慌てて言葉を遮って、胡桃沢さんを見た。


「……話がよく、分かんないんだけど……っ?」
「もっと分かり易く言ってほしいの? 真冬くんが、子供の頃から美鶴のこと大好きだったって話をしてるのよって?」
「いやいやいやいやっ!」


 小さい頃から?

 俺が、美鶴を?

 だ、だいっ、だだっ、大好き?


(そうだったのかっ?)


 余談だけど、小さい頃から胡桃沢さんの勘は当たるらしい。
 つまり……胡桃沢さんの視点から見た俺の言動は、美鶴のことが大好きと訴えまくっていたらしくて?

 俺は美鶴のことが、大好きだったと……そう、直感したんだろう。


「嫌いと好きは紙一重って言うけど、真冬くんのは相当よねぇ。子供の頃になにがあったのか知らないけど、それがよっぽどショックだったんでしょ? 拗らせちゃったのかしらね?」
「こ、こじ、らせ……っ」


 本当に、そう見えていたのだろうか?

 だとしたら、物凄く恥ずかしいんだけど……。




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