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4章【不時着サプライズ】

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 忙しない音が、トイレの個室に響く。

 それと同じくらい、恥ずかしい声も。


「はっ、あ、ふぁっ! だめ、ボク……イった、ばっかりで――あっ!」
「ごめんな、秋在。……でも、メチャクチャ可愛いよ……ッ」
「謝罪に、なってないぃ……っ! んっ、あっ、ふあ、っ!」


 服の中に手を入れ、秋在の素肌をまさぐる。


「秋在は、ココを虐められるの……好き、だよな?」
「ぁあ、っ!」


 ツンと立った、胸の突起。

 冬総はわざと強めに、その突起をつねった。

 脱力していた秋在の体に、力が戻る。


「ひっ、ぃう……っ! つねっちゃ、だめぇ……っ!」
「何で? お尻のナカ……すげぇ嬉しそうだけど?」
「そっ、そんな……っ! 意地悪言うフユフサは、いや、あっ!」
「俺のこと、嫌いになるのか……ッ?」


 勿論、本心からではない。……はずだ。

 それでも冬総は、秋在からの言葉に一喜一憂してしまう。


「俺以外の奴と、こういうことシたいのか?」
「ふぁあ、っ! いきなり、そこばっかり――あっ、あぁ、っ!」
「秋在、答えて? ……俺以外と、セックスするのか?」


 どう答えたらいいのか。

 価値観の違う秋在でも、今だけは冬総の考えが分かる。

 何度も首を横に振り、秋在は縋りつくように答えた。


「し、ない……っ! フユフサとしか、エッチ、しないぃ……っ! だから、あっ! だからあんまりっ、虐めないでぇ……んっ!」


 そう言い、秋在は冬総にしがみつく。

 ――今日の秋在は、いつもより甘え上手な気がする。

 ぼんやりと、冬総はそんなことを考えた。

 きちんと欲しい答えをくれた秋在を、冬総は片腕で抱き締める。


「ありがと、秋在。……俺も、秋在としかシない。だから、な?」


 ぐりっ、と。

 奥に、冬総の劣情が押し付けられる。


「もうそろそろ、出していいか……ッ?」


 それはつまり……もうちょっとだけ、激しくするという意味。

 冬総の言いたいことに気付いた秋在は、何度も頷いた。


「ん、ん……っ! いい、よ、いいっ! フユフサがシたいように、シてぇ……っ!」


 そう、秋在が答えるのと……ほぼ、同時。


「――ひあ、あぁ、っ!」


 冬総が、秋在の体を強く抱き締める。

 片手では、秋在の胸を愛撫しながら。

 内側を……何度も何度も、穿つ。


「秋在、出る……ッ」
「だめっ、んあっ! ボクも、またぁっ! あっ、ぁあっ!」


 限界を訴える秋在が、冬総にしがみつく。

 その瞬間。

 秋在はコンドーム越しに、冬総の熱を感じた。


「んんっ、ふっ、ぁあ……っ!」


 小刻みに震える秋在の首に、冬総は唇を寄せる。

 ――このままココに、痕を付けたい。

 しかし、絶頂の熱に浮かされていた冬総でも……なんとか、思いとどまる。

 ――秋在が、嫌がるかもしれない。

 その懸念が一パーセントでもあるのなら、冬総は自分の欲を抑えることができる。


「あ、ぁ……っ、フユ……フ、サぁ……っ」


 脱力した秋在が、冬総へもたれかかった。

 その姿が、愛おしくて。

 時間が許す限り……冬総は秋在を、抱き締め続けた。




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