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10章【生誕祭プロブレム】
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しおりを挟む秋在は潤んだ瞳で、冬総を見ている。
……ちなみに。
余談ではあるが、秋在の瞳が潤んでいるのは情事の後だからだ。
それ以上の意味は、無い。
真っ直ぐで純粋な視線に耐えかねた冬総は、ヘラリと笑みを浮かべた。
「……秋在は怒るかもしんないけどさ。俺は、秋在から貰えるんだったら……正直、なんでも嬉しいんだよ。マジで」
「木彫りのクマでも? シカのツノが生えた、可愛くない男の子のご当地ぬいぐるみでも?」
「秋在が俺のために選んでくれたんなら、嬉しいに決まってるだろ?」
冬総の想像通り。
「……っ」
秋在は、ムッとした表情を浮かべた。
しかし、このイベントの主賓は冬総だ。
「……じゃあ。その【嬉しい】の中でも、上の方のものを教えて」
普段の秋在より、ほんの少し控えめに見える。
ふくれっ面を浮かべる秋在の頬を撫でて、冬総は笑った。
「しいて言うなら……そうやって、俺のために悩んでくれてる秋在、かな」
そのオプションがつくだけで、ご当地のなんとも言えないお土産や、使い道に困る要らないものだって……冬総にとっては家宝レベルの品に変わるだろう。
すると、やはり不満げな秋在は……。
「――いてッ!」
頬を撫でる冬総の手に、カプリと、噛みついた。
「秋在、痛いって……いてて、ッ」
「うーっ!」
「犬みたいに唸る秋在、だと……? レ、レアだ……ッ!」
冬総はすぐさま、写真を撮ろうとスマホを探す。
その動きに気付いた秋在は、瞬時に背を向けた。
(……残念だ、凄く)
けれど、秋在は本気で拗ねたわけではないだろう。
説明はできない確信を抱きながら、冬総は背を向ける秋在と距離を詰める。
そして、秋在のうなじに歯を立てた。
「……ん、っ」
ピクリ、と。
秋在が小さく、身じろぐ。
「……秋在。もう一回、シたい」
一糸纏わぬ秋在の姿を見て、冬総は性に多感な青少年らしく、欲望をぶつけた。
歯を立てたうなじに、冬総はそのまま舌を這わせる。
「……慣らさなくても、入ると……思う、けど」
拗ねたフリをし続けている秋在は、背を向けたまま小さく、返答した。
(顔見ながらシたかったんだけどな……)
――やはり、ほんの少しだけ怒らせてしまったのかもしれない。
小さな罪悪感を抱きつつ、冬総は秋在の上半身に手を伸ばす。
平らな胸を手のひらで撫でると、秋在が小さく息を呑んだ。
(それでも、秋在相手だとすぐ興奮しちまう俺って……マジで、浅ましいよなァ……?)
そう思った冬総は、秋在の臀部に下半身を押しつけながら。
「秋在、好きだ。……挿れる、からな?」
そう囁き。
自嘲的に、笑ってしまった。
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