恋模様シーイング

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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オマケ話【突発的ニックネーム】

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 ――ズドンッ!

 まるで飛びつくように、冬総は秋在へ抱き着いた。


「わぁ……っ」


 冬総の突進により、秋在は反動でベッドに押し倒される。

 驚いたような、感嘆じみたような声を秋在は上げた。

 そんな秋在を抱き締めたまま、冬総は叫んだ。


「もう一回呼んでくれッ!」
「フユちゃん」
「もう一回ッ!」
「フユちゃん。……耳、うるさい」
「ハッ! ご、ごめんッ!」


 強く抱き締めていた腕の力を緩め、ハッとした様子で冬総は秋在から離れる。

 そしてすぐさまベッドの上で正座をし、冬総はポケットの中からスマホを取り出した。


「秋在、秋在! 今度はここに向かって『フユちゃん好き』って言ってくれないか!」


 【ここ】とは、スマホのカメラだ。

 冬総は即座に録画の体勢に入り、秋在へカメラを向けた。

 秋在は特段驚いた様子も、ましてや恥じらった様子も見せない。


「フユちゃん、大好き」
「俺もだッ!」


 録画を終えた冬総は、瞬時にスマホを抱き締めた。


「あぁ……ッ、幸せだ……ッ!」


 しばらく冬総が幸福を噛み締めながらスマホを抱き締めていると、不意に……。


「普段のボクよりも、お母さんを模倣したボクの方がいいんだ」


 秋在が、ぷくっと頬を膨らませた。

 唇を尖らせた秋在を見て、冬総は慌ててスマホをポケットへとしまい込む。


「な……ッ! 違う! そんなことはないぞッ! 俺はどんな秋在も愛してるし、秋在が俺のことをなんて呼んでもこの気持ちは変わらないッ!」


 すぐに、冬総は秋在を抱き締めようとした。

 ……しかし。


「――ナツナリくんなんて、嫌い」


 秋在のその一言で。

 ――ズドンッ!

 冬総は先ほどと同じような音を立てて、ベッドの上に倒れこんでしまった。


「――カハッ!」


 そう呻き、冬総はベッドにうつ伏せ状態となる。


「秋在に嫌われたら、俺は、死ぬ……」


 比喩や過剰表現ではなく、冬総にとっては本気だ。

 うつ伏せで力なく倒れている冬総の上へ、秋在が即座に跨る。

 秋在の体重を感じながら、冬総は呻いた。


「秋在に嫌われた俺は、秋在の重みで圧死するしかない。……だけど、秋在が軽すぎて死ねそうにないぞ。秋在、好きだ」
「ボクはナツナリくん嫌い」
「死ぬ」


 ウジウジし始めた冬総の上で、秋在は前後に揺れる。

 そのまま、前に倒れて冬総の耳元へ顔を寄せた。


「ナツナリくんは借りを返さないで死ぬような薄情さんなんだね。ふぅん」
「ッ! そんなことは断じてないッ!」
「じゃあ、頑張って生きなくちゃね」


 秋在は上に乗ったまま、普段通り抑揚のない声で告げる。


「貸しは、そう簡単に返させないから」
「……それはつまり、俺に『死なないで』って言ってるのか?」
「ふぅん。ナツナリくんはボクを置いて死んじゃうんだ」
「それはないッ! 同じタイミングで墓に入るつもりだッ!」


 ギャンと吠える冬総に跨ったまま、秋在は黙り込む。

 そして……。


「――うおッ!」


 不意を衝くように、秋在は冬総の耳朶を甘噛みした。




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