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12章【明日ありと思う心の仇桜】
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しおりを挟む桃枝が突然、遠慮のない動きを始めた。
山吹の理解がそこまで及ぶよりも先に、本能が快感に支配されていく。
「ぁあ、ふぁっ! しゅごいっ、や、らめぇっ!」
細い体が、ビクビクと痙攣している。よほど強い快感が、山吹の体を駆け巡っているのだろう。
わざとらしく聞こえる喘ぎ声だが、これは山吹自身でさえ出したくて出したものではないはず。快楽に身を悶えさせながらも、山吹は自らが発してしまったはしたない声に、顔を赤らめた。
「やらっ、や──んんッ、んぅ、ッ!」
射精はしていないが、確実に達しているだろう。喘ぐ山吹を見上げながら、桃枝はそう気付く。
快感に困惑してる山吹の体を突き上げながら、桃枝は眉を寄せた。
「なにが凄くて、なにが駄目なんだよ」
「あんっ、あっ! 課長の、ペニスがぁっ。ボクのこと犯すために、どんどん大きくなって──あぁっ!」
上に乗る愛しい男が、淫らに喘いで、いやらしい姿を晒している。山吹の痴態を眺める桃枝には、言うまでもなく【余裕】の二文字はない。
「気持ちいぃっ! 久し振りの、セックスぅ……っ。気持ち良すぎてっ、ボク、ボクおかしくなっちゃう……っ!」
ちなみにこれは蛇足だが、山吹にとって今が【久し振りのセックス】であるのなら。
「緋花……ッ」
桃枝にとっても、今は【久し振りのセックス】だ。
山吹の後孔が、甘えるように桃枝の逸物を締め付ける。奥まで突けば悦び、引き抜こうとすると嫌がるかのように強く締め付けてきて……。無意識の反応だとしても、それが山吹の体であるのなら、桃枝にとっては堪らない。
「緋花、ナカに出したい。……いいか?」
「モチロン、ですっ。嬉しいです、白菊さん……っ」
山吹に触れたくて、桃枝は手を伸ばす。
伸ばした手はすぐに握られ、山吹は両手をしっかりと桃枝の指に絡める。
「これ、すごいっ。白菊さんと手を繋ぐと、好きって伝わってきてっ。んっ、あっ、んんっ!」
律動に合わせて、山吹も体を動かす。
自らの欲求と、桃枝に快感を与えるため。山吹の腰遣いにすら胸をときめかせながら、桃枝は繋いだ手に力を込める。
「緋花……ッ」
低く、まるで呻くように。最愛の恋人の名を呟いた後、桃枝はビクリと体を震わせた。
「ぁあっ、あッ、んぅ……ん、ッ!」
宣言通り、内側に劣情を注がれている。断続的に声を漏らしながら、山吹は桃枝に跨ったまま、体を震わせた。
絶頂の余韻と恋人の可愛さに浸りながら、桃枝は山吹から逸物を引き抜こうとする。
「悪い、緋花。すぐに、お前のナカから精液を──……緋花?」
だが、桃枝は気付いた。
「ボク、まだ……イッてないです、からぁ。だから、まだ抜いちゃダメ、ですよ……っ?」
確かに絶頂を迎えたはずの山吹が、射精を堪えていた……と。
きゅぅ、と逸物を締め付けられながら、桃枝は山吹を見上げる。
「緋花? お前、イッたよな?」
「イッてない、です。ボクまだ、射精して……ない、です……っ」
そうされてようやく、桃枝は思い出した。
「だから、まだ【一回】は終わってない、ですよね? だから、だから……ぬこぬこって、してぇ……っ」
自分の彼氏は小悪魔属性持ちだった、と。主観がすぎる現実を、クラクラと揺れてしまいそうな理性は思い出したのだ。
……が、既に遅い。そして、そんなことはどうだって良かった。
「あぁ、分かった。お前がイクまで、ちゃんと可愛がってやる」
恋人に甘えられて応じないなんて、そんなのは桃枝の本意ではない。
ベッドの上に山吹を押し倒した後、桃枝はいっぱいいっぱいな様子の山吹にキスをする。
するとすぐに、山吹は照れくさそうに笑った。
「ん、ふ……っ。ヤです、やだ……。イッた後も、甘やかしてください」
「んんッ。承知した……ッ」
前言撤回。やはり、小悪魔属性はただものではない。
恋人の可愛さを痛感しながら、桃枝は蕩けた表情を浮かべる山吹の体を再度、揺さ振り始めた。
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