地獄への道は善意で舗装されている

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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12章【明日ありと思う心の仇桜】

24 *

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 桃枝が突然、遠慮のない動きを始めた。
 山吹の理解がそこまで及ぶよりも先に、本能が快感に支配されていく。


「ぁあ、ふぁっ! しゅごいっ、や、らめぇっ!」


 細い体が、ビクビクと痙攣している。よほど強い快感が、山吹の体を駆け巡っているのだろう。

 わざとらしく聞こえる喘ぎ声だが、これは山吹自身でさえ出したくて出したものではないはず。快楽に身を悶えさせながらも、山吹は自らが発してしまったはしたない声に、顔を赤らめた。


「やらっ、や──んんッ、んぅ、ッ!」


 射精はしていないが、確実に達しているだろう。喘ぐ山吹を見上げながら、桃枝はそう気付く。
 快感に困惑してる山吹の体を突き上げながら、桃枝は眉を寄せた。


「なにが凄くて、なにが駄目なんだよ」
「あんっ、あっ! 課長の、ペニスがぁっ。ボクのこと犯すために、どんどん大きくなって──あぁっ!」


 上に乗る愛しい男が、淫らに喘いで、いやらしい姿を晒している。山吹の痴態を眺める桃枝には、言うまでもなく【余裕】の二文字はない。


「気持ちいぃっ! 久し振りの、セックスぅ……っ。気持ち良すぎてっ、ボク、ボクおかしくなっちゃう……っ!」


 ちなみにこれは蛇足だが、山吹にとって今が【久し振りのセックス】であるのなら。


「緋花……ッ」


 桃枝にとっても、今は【久し振りのセックス】だ。

 山吹の後孔が、甘えるように桃枝の逸物を締め付ける。奥まで突けば悦び、引き抜こうとすると嫌がるかのように強く締め付けてきて……。無意識の反応だとしても、それが山吹の体であるのなら、桃枝にとっては堪らない。


「緋花、ナカに出したい。……いいか?」
「モチロン、ですっ。嬉しいです、白菊さん……っ」


 山吹に触れたくて、桃枝は手を伸ばす。
 伸ばした手はすぐに握られ、山吹は両手をしっかりと桃枝の指に絡める。


「これ、すごいっ。白菊さんと手を繋ぐと、好きって伝わってきてっ。んっ、あっ、んんっ!」


 律動に合わせて、山吹も体を動かす。

 自らの欲求と、桃枝に快感を与えるため。山吹の腰遣いにすら胸をときめかせながら、桃枝は繋いだ手に力を込める。


「緋花……ッ」


 低く、まるで呻くように。最愛の恋人の名を呟いた後、桃枝はビクリと体を震わせた。


「ぁあっ、あッ、んぅ……ん、ッ!」


 宣言通り、内側に劣情を注がれている。断続的に声を漏らしながら、山吹は桃枝に跨ったまま、体を震わせた。

 絶頂の余韻と恋人の可愛さに浸りながら、桃枝は山吹から逸物を引き抜こうとする。


「悪い、緋花。すぐに、お前のナカから精液を──……緋花?」


 だが、桃枝は気付いた。


「ボク、まだ……イッてないです、からぁ。だから、まだ抜いちゃダメ、ですよ……っ?」


 確かに絶頂を迎えたはずの山吹が、射精を堪えていた……と。
 きゅぅ、と逸物を締め付けられながら、桃枝は山吹を見上げる。


「緋花? お前、イッたよな?」
「イッてない、です。ボクまだ、射精して……ない、です……っ」


 そうされてようやく、桃枝は思い出した。


「だから、まだ【一回】は終わってない、ですよね? だから、だから……ぬこぬこって、してぇ……っ」


 自分の彼氏は小悪魔属性持ちだった、と。主観がすぎる現実を、クラクラと揺れてしまいそうな理性は思い出したのだ。

 ……が、既に遅い。そして、そんなことはどうだって良かった。


「あぁ、分かった。お前がイクまで、ちゃんと可愛がってやる」


 恋人に甘えられて応じないなんて、そんなのは桃枝の本意ではない。
 ベッドの上に山吹を押し倒した後、桃枝はいっぱいいっぱいな様子の山吹にキスをする。

 するとすぐに、山吹は照れくさそうに笑った。


「ん、ふ……っ。ヤです、やだ……。イッた後も、甘やかしてください」
「んんッ。承知した……ッ」


 前言撤回。やはり、小悪魔属性はただものではない。
 恋人の可愛さを痛感しながら、桃枝は蕩けた表情を浮かべる山吹の体を再度、揺さ振り始めた。




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