万華の咲く郷 ~番外編集~

四葩

文字の大きさ
14 / 36
番外編~日常小噺~

【Word chain game】

しおりを挟む
 とある昼下がり。ひかしょのソファに朱理しゅり陸奥むつが寝転び、何やら単語のやり取りを交わしていた。しりとりの真っ最中らしい。
 ちょうど朱理のターンだ。

乳様突起にゅうようとっき
急雨きゅうう
雲下うんか
勝掛かちかけ
血海けっかい
陰会いんかい
稲妻いなづま
松風まつかぜ
「〝ぜ〟かぁ……きちぃな……」
「朱理には特別〝せ〟でも良いよ」
「まじ? ラッキー。じゃあ潜龍せんりゅう
雲月うんげつ
釣鐘つりがね
「うわ! くっそ……〝ね〟って無いんだよなぁ。やばい……」
「流石に〝ね〟は代えが効かねーな」
「うーん……ちょっと待って、思い出すから……」
「無駄だと思うけど頑張れ、陸奥」

 楽しげに笑う朱理と頭をかかえる陸奥の姿に、通りかかった妹尾せお渡会わたらい吉良きら月城つきしろはほっこりとなごんでいた。

「しりとりしてる朱理さん、可愛い……」
「なんだかんだで仲良いよな、あの2人。言ってる単語はまったく意味不明だけど」
「道具とかの名前なんじゃねぇの? 茶道とか華道とかのさ」
「確かにそれっぽいね。ただのしりとりまで風流だなぁ。流石はツートップ太夫」
「しりとりなんて、もう何年もしてないよ。楽しそうだし、俺も混ぜてもらおうかな」
「渡会が行くんなら俺も行くー!」

 渡会と吉良が嬉々として朱理らに近づこうとした時、2人の肩がガシッと掴まれた。振り返った先には、青ざめた鶴城つるぎと仏頂面の冠次かんじが立っている

「馬鹿、やめろお前ら!」
「今、彼奴あいつらに近寄るな。死ぬぞ」
「どうしたんですか? そんなに血相変えて……」
「大袈裟っすよ、ただのしりとりじゃないですか」
「いや、アレはただのしりとりじゃないんだ……」
「彼奴らが言ってるの、全部、人体の急所だぜ」
 「 「「「 え 」」」」

 冠次のひと言に絶句する新造4人。追い打ちをかけるように、鶴城から補足説明が入る。

「……ちなみに負けたほうは、勝ったほうが最後に言った急所を攻撃される……」
「〝ね〟から始まり、〝ん〟で終わらない急所は無い。陸奥さんの負けかくだ」

 と、そこへ陸奥の悲痛な叫びが室内にこだました。

「ぅぁあ駄目だわ!! やっぱ無いわ!!!!」
「やったー! 今回も陸奥の負けなー」
「……あの、ちょっと待って……。本当にソコだけは勘弁して……。仕事出来なくなるからまじで……」
「やだ。身上がりすれば良いじゃん」
「お前の血は緑なのか!? 同じ男なら分かるだろ!!」
「だってー、負けは負けじゃん? 大丈夫大丈夫、つぶしはしないから。あ、でも1個くらい潰れても問題無いんだっけ?」
「大問題だわ! お前まじでやりそうで怖ぇもん! 本当に厭だ!!」
「うるっさいなー。駄々こねてると余計に危なくなるぞ。さっさと部屋行こーぜ。ここで騒ぐとみんなに迷惑だろ」
「うぅ……分かったよぉ……。でもほんと、まじで、潰すのはだけは無しでお願いします! なんでも言うこと聞くから──!」


「……陸奥さん、引きずられてっちゃった……」
「あんなに取り乱す陸奥さん初めて見たけど、大丈夫なのかな。朱理さん、なにする気なんだろう」

 妹尾と月城が心配そうに朱理たちを見送ると、冠次の鼻で笑う声が聞こえた。

「ざまぁ」
「えっと……朱理さんが最後に言ったのって、何でしたっけ……?」

 渡会の問いかけに、鶴城が震え声で答える。

釣鐘つりがね……」
「と、言うと?」
睾丸こうがんだ」

 冠次の言葉で、いっきに控え所の体感温度が下がったとか下がらなかったとか。
 売れっ子太夫らは、遊びまで凡人離れしていると思い知った新造達であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

『定時後の偶然が多すぎる』

こさ
BL
定時後に残業をするたび、 なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。 仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。 必要以上に踏み込まず、距離を保つ人―― それが、彼の上司だった。 ただの偶然。 そう思っていたはずなのに、 声をかけられる回数が増え、 視線が重なる時間が長くなっていく。 「無理はするな」 それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、 彼自身はまだ知らない。 これは、 気づかないふりをする上司と、 勘違いだと思い込もうとする部下が、 少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。 静かで、逃げ場のない溺愛が、 定時後から始まる。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

処理中です...