無職無双〜無職になった僕は妹と旅に出る〜

タカノス🦅

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幕間 ソフィアの受難

前編

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「アリスさまー! アリスさまー!」

私、ソフィアはお屋敷の中を走り回っておりました。

20歳になりますます成長した胸が、走るたびに揺れて視界に入るのでとても邪魔くさいです。

ぺったんなアリスさまが羨ましいです。

そう言うといつもアリスさまに睨まれてしまうのですが。
アリスさまはこれからだと思いますけどね。

と、いけません。余計なことを考えていました。

「アリスさまー! どこですかー!」

こうも必死に走り回るのには理由があります。

私がお使いしているキレイル家のご令嬢が行方不明になってしまったのです。

これは一大事です。

キレイル家は代々王家に使える騎士の家系です。
お屋敷の主であるアルファード・キレイル男爵は【剣鬼】の職業を持ち、そのひと睨みで相手を萎縮させてしまうほどの鷹のような鋭い瞳と鬼気迫る剣技から鷹の狂剣士ホークバーサーカーと呼ばれています。

奥様のアリシア・キレイル様も騎士として名高い【剣聖】の職業を持つ、強くて朗らかな方です。
普段はほわほわしていてとても話しやすい方ですが、怒ると怖いことを私は知っています。
はい。
身に染みて知っていますとも。
二度と壺は割りません。

そんなお二人の愛娘であるアリス・キレイル様が行方不明になられたのですから、お屋敷が騒がしくなるのは当然のことでしょう。

キレイル家の正当な血が流れる、がいなくなってしまったのですから。

その責任の一端がアリス様のお世話係兼メイドである私にあるのは自明です。
自分の首がまさしく斬られてしまう前に、私はアリスさまを見つけないといけないのです。

本当にやばいです。私は今ピンチなのです。

「ここにもいません。 どこに行ってしまったのですかーー! アリスさまーーー! 」

最後の部屋にもアリスさまはいらっしゃいませんでした。
もう終わりです。神様に祈るしかありません。
神様、どうかソフィアの命をお助けください。
本当に。お願いします。ここで死にたくありません。
彼氏ができないまま死ぬなんて、私の人生終わってます。

そういえば、どうして私には彼氏がいないのでしょう。

偶然通りがかった鏡に映る自分を見て、ふと疑問に思います。

他の貴族にお遣いしているメイド友達や、村の幼馴染には恋人がいて結婚している人もいるのに、その人たちよりルックスが良くてお給料も貰ってる私に彼氏がいないなんて納得いきません。

「どう見ても顔は悪くないと思うのですが……」

鏡に映るのは美人さんです。肩まで切り揃えられた艶やかな漆黒の髪。くりっとした瞳。長いまつ毛。手入れを怠っていない、10代を思わせるピチピチの肌。

それに何と言っても出るところは出て細いところは細い肢体。

完璧ですよ。
我ながら完璧すぎます。

「はぁ……美しいって罪ですね」

我ながら見惚れてしまいます。

彼氏はできませんが。
婚期逃しつつありますが。

「あぁー! 私の王子様は何処にー! こんなに可愛い子がフリーですよー!」

会う人会う人胸は凝視してくるくせに目を合わせようとすると視線を横にやるんですよね。

なんなんですか、あれ。
不快なんですよ。
自分だけいい思いするなんてズルいです。
顔も見てくれたっていいじゃありませんか。

こんなに可愛いのに。
こんなに頑張ってるのにー。

「メイド長や皆んなに聞いても霞んでる、としか言ってくれませんし」

霞むってなんですか。
そんなに個性がない顔でしょうか。

「もう少し化粧を濃くしてみましょうか」

もう二度と霞んでるって言われたくありませんし。

「はぁ……私の王子様……」

どこかにいないでしょうか。

「ソフィア! あなたそこで何してるのですか! 探しましたよ!」

鏡の前でうっとりしていたときです。

メイド長が血相を変えてパタパタと早足でやってきました。

メイド長は掃除に人生をかけているような人です。
なんと掃除スキルがカンスト(lv99)しているんだとか。

5年働いている私でさえlv3なのに、どうやったらカンストするのでしょう。

頭おかしいですよ。この人。名前もクリーンですし。掃除のために生まれてきた、おばさんです。

「メイド長……私はなぜ彼氏ができないのでしょう」

「またそれですか。貴方のせいではありませんから、あまり気にしない方がいいと思いますよ」

メガネの位置を直しつつ呆れながらメイド長は言いました。

「なんですかそれー。霞むって何が霞むんですか」

「それはですね……って、そんな場合ではありません! ソフィア、アリス様は見つかりましたか?」

あ、そういえばそうでした。自分にうっとりしている場合ではありませんでした。

私は今アリスさまを死ぬ気で探さないといけませんでした。
屋敷内は探しましたし、残りは中庭と馬小屋あたりでしょうか。

「部屋にはおられませんでした。これから中庭に……」

「そうですか。外は隈なく探しました。あとはソフィア頼りだったのですが見つからなかったようですね。
……ソフィア」

「はい」

なんでしょう。いつも気難しい表情をしているメイド長が優しい笑みを浮かべています。気持ち悪いです。

「今までご苦労様でした。貴方と働けて楽しかったですよ」

あ、これ。
首チョンパ確定なやつです。

「いやぁあああああああああああああ!! 死にたくないですぅぅううううううううう!!」

私はメイド長に泣きながら抱きつきました。
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