雨降る夜道……

Masa&G

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最終話 前に……

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あの日――

私は、ずっと待っていた。 浩太郎さんの帰りを。

でも……帰ってこない。

(どうして……帰ってきてくれないの?)

それから先のことは、覚えていない―― 

その日から……ついさっきまで。

ただ、浩太郎さんの帰りを待つ。 それだけだった。

雨が降りしきる夜。 かなではアパートへ足を進める――

白いレインコートは雨に濡れ、街灯の光を受けて淡く滲んでいる。
 足元のアスファルトに、小さな水たまりがいくつも揺れていた。

でも―― 

さっき……浩太郎さんに会えた。

いつもの浩太郎さんだった。

泣き虫って、また言われちゃった。

白のレインコート……似合うって言ってくれた。

最後に……愛してるって言ってくれた―― 

ちゃんと聞こえたよ。

アパートに着き、傘をたたむ。
ドアを開け、静かな室内へ入る。

玄関でレインコートを脱ぎ、ハンガーに丁寧に掛けた。

ポタ……ポタ……

濡れた布地から、水滴が床へ落ちる。

部屋の電気をつけ、かなではゆっくりと辺りを見渡した。

大きく息を吸い…… そして、静かに吐く。

スマホを取り出し、通話ボタンを押す。


トゥルルル…… トゥルルル……


かなでです。

夜分に……すみません。

はい……。

いえ……お義母さんにも、ご迷惑をかけてしまい……。

大丈夫です……。

ご心配、おかけしました。

明日の葬儀に、参列します。

はい……。

はい……。

かなでは、わずかに声を詰まらせる。

わかりました。ありがとうございます。

はい……。

失礼します……。

スマホを耳から離し、通話を切った。

浩太郎さん――

ちゃんと……向き合うから……。

だから……安心して……。

壁のボードに貼られた、二人の写真。

かなでは涙目のまま、微笑み、その輪郭をそっと指でなぞった。
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