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プロローグ② 記憶――
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静けさが、ゆっくりと満ちていった。
先ほどまで確かにあったはずの風も、音も、 いつの間にか遠ざかっている。
剣の重みも、冷たい空気も、そこにはもうない。
残っているのは――文字だけだった。
白い余白の上に、黒く刻まれた言葉。それらは戦場の名残を静かに閉じ込め、ひとつの物語として、綴じられている。
テラスに、午後のやわらかな光が差し込んでいた。
レースのカーテンが風に揺れ、木漏れ日のような影が床にゆっくりと流れていく。
机に向かい、筆を走らせているのは――イシュタル。
風が吹くたび、長い髪が頬にかかる。彼女はそれを手で押さえながら、最後の一行を書き記した。
――AN0986 ――
イシュタル=ハーン
筆を置いた、その瞬間。
少し強い風がテラスを吹き抜け、ページがパラパラと音を立ててめくられる。
一枚、また一枚。時間を遡るように、文字が後ろへと流れていく。
やがて、本は最初のページへと戻った。
そこに記されていたのは――
『ノルヴェリアの鍵』第三部 三節
カーテンが、静かに揺れる。
そのとき。
「イシュタルー。紅茶、入れたから少し休憩したら?」
「あ、うん。ありがとう。」
「ちょうど今書き終えたとこ。」
「イシュタルお姉ちゃん、書き終わったの?」 「私、お話読んでみたい!」
コト…。
イシュタルの前に、湯気の立つ紅茶が置かれる。
「ふふっ。難しい言葉で書いてるから、まだ読めないかも?」
「えー……じゃあ……読んでほしい……」
「大きくなったらね……それまで我慢。」
「……お話……聞きたい……」
少し困ったように、イシュタルは微笑んだ。
「いいよ。読んであげるよ。」
「え!?いいの?」
「うん。私もちょうど、はじめから読み返したかったから。」
「ごめんね、イシュタル。」
「大丈夫。じゃあ……」
イシュタルは鞄から、一冊の本を取り出す。
「『ノルヴェリアの鍵』第一部から。」
「お姉ちゃんありがとう。」
「じゃあこっち来て。」
イシュタルに、子どもが寄り添う。
ページをめくる。
「『ノルヴェリアの鍵 第一部』アルフィリアとシュウゲンの出会い……」
これは私が現実に見て、確かに聞いて、記録した話……
このアルカディア大陸で起きたことを、すべて記録して――世に広める……それが私の役目……
先ほどまで確かにあったはずの風も、音も、 いつの間にか遠ざかっている。
剣の重みも、冷たい空気も、そこにはもうない。
残っているのは――文字だけだった。
白い余白の上に、黒く刻まれた言葉。それらは戦場の名残を静かに閉じ込め、ひとつの物語として、綴じられている。
テラスに、午後のやわらかな光が差し込んでいた。
レースのカーテンが風に揺れ、木漏れ日のような影が床にゆっくりと流れていく。
机に向かい、筆を走らせているのは――イシュタル。
風が吹くたび、長い髪が頬にかかる。彼女はそれを手で押さえながら、最後の一行を書き記した。
――AN0986 ――
イシュタル=ハーン
筆を置いた、その瞬間。
少し強い風がテラスを吹き抜け、ページがパラパラと音を立ててめくられる。
一枚、また一枚。時間を遡るように、文字が後ろへと流れていく。
やがて、本は最初のページへと戻った。
そこに記されていたのは――
『ノルヴェリアの鍵』第三部 三節
カーテンが、静かに揺れる。
そのとき。
「イシュタルー。紅茶、入れたから少し休憩したら?」
「あ、うん。ありがとう。」
「ちょうど今書き終えたとこ。」
「イシュタルお姉ちゃん、書き終わったの?」 「私、お話読んでみたい!」
コト…。
イシュタルの前に、湯気の立つ紅茶が置かれる。
「ふふっ。難しい言葉で書いてるから、まだ読めないかも?」
「えー……じゃあ……読んでほしい……」
「大きくなったらね……それまで我慢。」
「……お話……聞きたい……」
少し困ったように、イシュタルは微笑んだ。
「いいよ。読んであげるよ。」
「え!?いいの?」
「うん。私もちょうど、はじめから読み返したかったから。」
「ごめんね、イシュタル。」
「大丈夫。じゃあ……」
イシュタルは鞄から、一冊の本を取り出す。
「『ノルヴェリアの鍵』第一部から。」
「お姉ちゃんありがとう。」
「じゃあこっち来て。」
イシュタルに、子どもが寄り添う。
ページをめくる。
「『ノルヴェリアの鍵 第一部』アルフィリアとシュウゲンの出会い……」
これは私が現実に見て、確かに聞いて、記録した話……
このアルカディア大陸で起きたことを、すべて記録して――世に広める……それが私の役目……
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