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盗賊と森の中

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「ティアリアが、魔物狩に行くだと?」

「はい、素材を取りに」

クロードがトラビスの執務室を訪ねると机の未決裁箱には書類が積まれて忙しい様子が見てとれた

「一人では危険ですので、護衛として同行の許可をいただきたく」

「、、、クロードだったか、ティアは君と二人で住んでいると聞いたが、、その、様子はどうだ?」

「、、、はい、よく食べて、よく寝て、健康的に、、」


クロードは朝の事を思い出し
少し俯き、礼でごまかす

「まあ、あの幼い姿では何にも無いと思うが、」

トラビスはそう言い、クロードを見た
クロードは俯いているが耳が赤い

(まさか、あの幼女の姿のティアと何かあったというのか?)

実際は一瞬大人に戻ったティアと何かあったのだが


「俺も同行しよう」

「は?」
は?と言ったのはハイゼルだった

「殿下、この山のような書類、見えてます?」

「ハイゼル、これを見てみろ」

トラビスは机上の書類を掴むと
ハイゼルの前にヒラリと掲げる

「森近くの街道で野盗による強奪行為が横行している、死者も出ている調査解決依頼」
ハイゼルが書類の中身を読み上げ怪訝な顔をする

「これの調査だ、ティアに同行するのはついでだ」

「殿下自ら赴かなくても、それこそ、森に行くクロードとティアリア先輩についでに調査をお願いしたらいいのでは?」

「ティアは今子供なんだぞ?守らなければ!」

「殿下に何かあれば、ティアリア先輩が悲しみます」

「う」

実際はティアリアは怒るだろうと
ハイゼルは思ったが
トラビスを止めるため畳み掛ける

「戦場で命懸けで守った殿下が野盗や魔物に怪我でも追わされたらティア先輩の苦労が報われません」

「、、、、ハイゼル、だから、ティアを1人危険な場所に行かせるわけにはいかないんだよ」

クロードがついていくから1人ではないがトラビスの真剣な表情にハイゼルは仕方なく了承した

「わかりました、早く帰ってきてくださいね」



クロードが家に戻ると
ティアリアはその後ろにいたトラビスをみて驚いた

「何してるの?忙しいんじゃないの?第二王子様がこんな城下町でウロウロしていていいわけ?」

「森の近くの街道での調査があって、ついでに、同行することになったんだよ。お前の素材取りに」

「出た、ついで」

2人は馬で来たらしく、トラビスがティアリアを抱っこし、自分の前に載せて城下にある門から森まで馬を走らせた

城下町を出て少しいくと街道があり、そこを少し行くと森がある

そこは魔素が溜まりやすく、それに釣られて魔物が出没していた

街道へ出てくる前に騎士がそれらを討伐するが
今回は素材集めのためついでに一掃しようと思っていた

「街道に盗賊が出るの?」

「ああ、死人も出ている、その調査をして盗賊も捕まえられたらいいが」

「ふーん、殿下自ら大変だね」

「お前はどうなんだ?少しは回復してるのか?」

「うん、今朝少し体が元に戻ったから、ロイドの治療が効いてるんだと思う」

「戻った?」
トラビスはクロードを見たが、クロードはフイっと目をそらした

「私が寝ぼけて、、、」

説明をしようとした時

「ティア様」

クロードに咎めるように名前を呼ばれた
顔を見ると
じいっと見られた

(言うなってことかな?)

また見たことない表情だ、最近クロードの表情が色々見れて面白い

「一瞬で戻っちゃったけどね」

「そうか、、、そんなんで魔物と戦えるのか?」

「うん、魔法具持ってきたし、クロードもいるから」

「殿下、街道が見えました」
クロードが馬で並走しながら言うと、ティアリアは街道を見る

馬車がいる
止まってるようだ

「あれ、襲われてる?」

止まっている馬車を数人の男たちが囲んでいる

その手には槍や、剣が握られていた

「トラビス、早速仕事だよ」
ティアリアが振り向きながら言うと
トラビスは馬を加速させ剣を抜く

「ティア、馬から降りるなよ」

トラビスは馬で突っ込むと一人、剣で斬り
ヒラリと馬から降りた

ティアリアは言われた通り馬に乗っていると、馬はスルスルと戦場から離れた所に待機した

「なに、あんた、頭いい」
馬を褒め、なでなでしていると
あっとゆうまに盗賊らは捕らえられた

トラビスにやられた盗賊たちは一人も死ぬこともなくクロードの手により木にぐるぐるに縛り上げられた

剣で斬ってたけど、どれも傷は浅かった

トコトコと、馬は主人に近寄っていく
ティアリアは馬の賢さに感激し馬に抱きつき首をなでなでした

トラビスは馬とティアリアが一瞬で仲良くなっていることにビミョーな顔をした

「この馬なんて名前なの?」

「ラウ」

「ラウ!えらい」
なでなでなで

「ティア様、降りましょう。今から森に入りますから馬はここに繋いで行きます」

「、、、わかった」

クロードにヒョイと持ち上げられ地面に降ろされる

「トラビスもついてくるの?」

トラビスはティアリアを見下ろし、頷く

馬車に乗っていたのは商人で
トラビスはお礼を言われ別れた

「盗賊はどうするの?」

「俺たちが森から出るまでここにくくりつけておく」

「逃げちゃわない?」

「そうだな、目を離すと心配だな」

「ラウに見張っていてもらおう」

ティアリアはトコトコとラウに歩み寄り

手を当てる

ふわりと光がきらめく

「ラウ、君には物理攻撃無効の魔法をかけたよ、こいつらが逃げそうになったら容赦なく踏んでいいからね」

そう言うと、盗賊らは蒼白な顔色になる

クロードの馬にも同じ魔法をかけた

「あ、あと、」
魔法陣の中から人参を取り出す

「人参たべるかな?」

平たい石の上に何個か人参を置き

ティアリアはクロードとトラビスと共に森に入って行った

薄暗い森を進んでいく
途中、素材になりそうな魔物を狩りつつ
奥の開けた場所にでた

「そんなに魔素は溜まってないね」

「何年か前にお前が浄化してから薄くなったよな」

「あ、ああ、あの時は無限に湧いていたもんね」

ともあれ、ティアリアはアデラのリストを確認して魔物を狩る

魔法は使わずに工房で作った、魔法の罠を放ちクロードに仕留めてもらう

「よし、こんなものかな」

だいたい集まった、空を見ると木々の合間にある日がだいぶ傾いている

「ティア、疲れただろおんぶしてやろうか?」
トラビスがしゃがみ、背を向ける

「え、やだ、子供扱いしないで」

スタスタっと歩き出したティアリアだったが、だいぶ歩いたところで足がもつれた

転けそうになった時、クロードに支えられて持ち上げられた
お姫様抱っこである

「だから言っただろ」
トラビスが振り向き様に言う

「クロードのはおんぶじゃないから子供扱いではないのよ」

トラビスは改めて二人を見る

「お姫様抱っこ?ならいいのか?」

「当たり前でしょ、これは子供扱いではなく、女性扱い?よ」

そして、クロードのお姫様抱っこは安心する

やがてウトウトとティアリアが眠るころ、森を抜けて、辺りはまだ、明るい

盗賊たちは縛られていた縄で一列に繋がれトラビスに引きづられていく

クロードはティアリアを抱いたまま馬に乗り帰路についた




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