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子供同志

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森の素材集めから数日


いつもの日課となった
ロイドによる診察と施術を終え
ティアリアは治療院を後にしようと廊下を進む

途中
病室の廊下に立つ少年と遭遇した

茶色の髪の、ティアリア(幼女)より少し背の高い男の子は
病室の中を心配そうにのぞいていた

ティアリアは少年の目線を追う

ベットには可愛らしい茶色の髪の少女が眠っていた

「あの子が心配なの?」

その声に少年は振り向くと

そこには見たこともないような可愛らしい幼女が立っていた

「そう、妹なんだ、、、」

「心配ないよ、ここの治療院の人たち、とっても腕がいいから」

幼女はニコっと笑うと服のポケットから
飴を取り出す

「はい、あげる。元気になる飴」

クロードが水と砂糖とロイドの調合した薬草を混ぜて練って、かためた飴は綺麗な丸で、それとは別にりんごの果汁で作った普通の飴の方を少年に渡す

「こっちはわたしのおくすり」

幼女は緑色の丸い飴を口に放り込んでコロコロと口の中で転がした

「大丈夫、きっとすぐ良くなるよ」

自分より小さい女の子は自分の頭を撫でて慰めてくれた

「お、ティア、まだいたの?」
ロイドが白衣を羽織りながら近寄る

「あ、ジルお見舞いかい?」

「先生、こんにちは」

「ジルって言うのね、わたしはティア」

ティアは眠っている女の子を見る
ちょうど、今のティアと同じくらいの背丈だろうか

「あの子のお名前は?」

「エイミー」

「かわいい名前だね」

「エイミーは処置が終わって薬が効いているから目が覚めるのは今日の夜か、朝かなー」
ロイドが言うと
ジルは

「それでもいいんです、そばにいてもいいですか?」

「うん、いいよ、だけど夕方になったらちゃんと家に帰ってね」

「はい」

「ティアも、帰りは一人なんだろ?気をつけて帰ってね」

「はーい」

ロイドは忙しいのか、二人を残し去っていった

ジルは病室に入ると、エイミーの手を握る

ティアはなんともなしに、病室に入り
その部屋の窓から外を見た

「雨が降りそう」

ジルが顔を上げティアを見た
「え、こんなに晴れているのに?」

ティアはニコっと笑うと
部屋の角にあった椅子を持ち上げ、ジルにすすめる

(う、以外と重かった)
この体は、魔力が少なくていいから回復にはちょうどいいけど体力的に効率が悪い

しかし、体に魔力が溜まって溢れないような感覚が戻ってきた気がする

塔に戻れる日も近いな

戻ったら、あの食事やお風呂、、クロードとの生活も終わってしまう

窓に手をついてそんなことを考えていると、空の向こうが暗くなってきた

「ジル、わたしはもうかえるね」

「うん、気をつけてな」

ティアリアはエイミーの病室を出ると治療院を後にする

今日は、また体が大きくなった時用に大人用の服を買って行こうと思っていた

「魔法で伸び縮みする服とかつくれないかな?」もしくは大きめの服を普段から身につけるとか?

城下町を歩きながらそんなことを考えていると、ハイゼルが教えてくれた服の店に着いた

「おー、おっきい」
ハイゼルの姉が営むお店は思ったより大きく、お客さんで賑わっていた

ティアリアは小さなポシェットを身につけている
それに自ら魔法陣を仕込み、魔法のポシェットを作った

いくら大魔法使いといっても、幼女が空間魔法を使いこなしていたら目立つのでポシェットに空間魔法をくっつけてみたのだ

小さいが、クロードの家の物くらいは詰め込める

そこからお財布を取り出して中身を確認する

「クロードがくれたお小遣いで買えるかな?」

これは塔の扉が開いたら、返さないと

「よし」
気合いを入れて店に入る

この姿になって初めてのひとりでの買い物だ

カランカランと

ドアベルの音に、店主メリーナは
いらっしゃいませ
と挨拶をした、が、扉は開けど客はなし

「?」

棚で隠れていたドアの下あたりを見ようと体をずらして覗きこむと
そこには5.6才くらいの女の子が立っていた

プラチナブロンドの髪が美しい
お人形のように可愛らしい幼い女の子はキョロキョロと店内を見回した

「か、かわいい!!」
メリーナはスッと女の子の前に立ち
フワリとしゃがむ

目線を女の子にあわせると
とても優しい笑顔で話しかけた

「お嬢様、今日はどのようなものをお探しで?」

普通、こんな小さな子が一人で店に入ってきたら親とか、お金とか気にして不審がりそうなものだけど

ティアリアが話しかけてきた女性を見ると、なんとも良く似た知り合いを思い出した

(ハイゼルを女性にして、すごく美人にした感じ!)

ティアリアはニコッと笑うと
「大きいお洋服を買いに来たの」
と言う
「お金はちゃんとあるので大人のお洋服を見せてください」

「かしこまりました、こちらです」

案内されるまま、歩いていく
店には、ドレスやワンピース、下着や子供服、いろいろなものが飾られていて
お客さんが笑顔で店員さんと話している

(いいお店だ)

「お母様にプレゼントですか?」

(そういう事にしておこう)

「はい!」

メリーナが立ち止まると、そこは服がたくさんかけてあるコーナーで
ありとあらゆるサイズが展開していた

「色やサイズは充実しております」

「ほんとだ」

背が低い為サイズをあらかじめメリーナに伝え、良さそうな色を指差していく

メリーナがその服を取り出して、低い位置にかけて並べてくれた

ティアリアは、青いワンピースと黄色いワンピース、寝衣、を選ぶ

あと下着と靴がほしいと言うと同じように選んでくれた

財布からお金を取り出して会計を済ませる

「少し重いですが大丈夫ですか?」
メリーナが心配そうに少し大きい紙袋を手渡してくれた

「大丈夫!お兄様が魔法のポシェットくれたから」

(そういう設定で)

ポシェットを開き、紙袋をスルッと収納すると

メリーナの目が光る

「お嬢様!そのポシェット!」

「?」

「うちの商品ですよね?」

はっ

そういえば、これハイゼルにもらった紙袋に入ってたポシェットだった

そのポシェットに、ティアリアは魔法を定着させたのだ

「そうなんですか?」
とぼけてみた

「はい!これは最近売り出した子供用の新作なので、間違いありません」

まさか普通のポシェットが魔法のポシェットになっているとはメリーナは驚愕した

「ど、どこ、どこでそのような細工を施してもらったのでしょう?」

「ごめんね、もらったものだからわからなくて」
(知らないテイでいく!)

「そうですよね、、、!すいません
お嬢様」

メリーナはピッと小さな紙を手渡す
それはこの店の店主の名刺だ

「もし、このポシェットに細工を施した魔法使い様をご紹介いただけるならこちらにと、お兄様にお伝えくださいまし」



ティアリアは仕方ないと
名刺をうけとると、それもポシェットにしまった

お礼を言って店を出ると結構な時間が経っていた

空は暗く曇っている

日も傾きすでに夕方

「わー、早く帰らないと」
クロードより遅くなると心配させてしまう

ティアリアは小走りにクロードの家をめざす

その時、町の喧騒の中

「たすけて!」

遠い路地裏から、かすかに聞こえた声に
ティアリアは足を止める

ティアリアは路地裏に入り
二人の大人に捕まえられた子供を見つけた

「何をしている」
可愛らしい声は怒気をはらんで
そのプラチナのようなオパールのような
美しく輝く瞳が子供を捕まえている男たちを睨んだ

「ティア!」
捕まえられていたのは
さっき治療院であったジルだった

ジルはティアを見ると叫んだ

「ティア!逃げて!大人を呼んできて」

そう言ったジルを男が殴りつける
「黙ってろ」

「おい、傷つけるんじゃねーよ」

もうひとりの男がニヤつきティアリアに近づいてきた

「それより、じょーちゃん
すげー上玉じゃないか!これは高く売れるぞ」

ティアリアは怪訝な表情をした
「人を売る?、お前らこの国の者じゃないの?ここでは人の売り買いは禁止されているのをしらないの?」

男の一人がティアリアに手を伸ばしてきた

ティアリアは魔法を発動しようとする

「ティア!後ろ!」
ジルが叫ぶ

急に口を塞がれ眩暈がした

薄れていく意識の中で、後ろから来た3人目の男の顔をみた

男は赤い髪の金色の目をしていた

やはり小さくなって、危機察知能力が低下しているようだ
後ろから来た3人目に気づかなかった

(油断した、、、)

ティアリアの体がフラっと傾く

赤い髪の男がティアリアの体を抱き止めた

赤い髪の男がジルを捕まえている男に持っていた布を投げるとジルもまた口を塞がれ意識をなくした

「よし、ずらかるぞ」

二人の子供は抱えられ人知れず連れ去られた




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