伯爵令嬢に生まれ変わった元騎士は憧れの人に恩返しをしたい

羽山コウリ

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アレンとミュリエル

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父の領地から王都に向かう馬車が襲われた
ちなみに父は今回留守番なのでここにはいない

一台目に乗っていた母と兄が心配でミュリエルは後続の二台目の馬車から飛び出した

「お嬢様!」

小さい時から使える侍女マリベルが止めようと手を伸ばすが
ミュリエルは素早く、捕まえようと伸ばした手は届かない

野盗の一人が馬車を運転していた御者に剣を振る
ミュリエルは勢いのままその男に蹴りを放つと、野盗はまともに蹴りをくらって吹っ飛んだ

華麗に着地すると腰の長剣を抜く
スラっと一気に抜けば細い美しい剣がきらめいた

少し赤みのある淡いピンクゴールドの髪は長く真っ直ぐでサラサラと風に舞う
ミュリエルが振り向き高純度の琥珀色の瞳が野盗を射抜く

背後で何が起こったのか理解できず呆然と固まっていた野盗の男達は
その迫力に後ずさる

彼女の手が剣を一振りすると電撃が弾けた
バチッと大きな音がして

「なん?魔法?」

「痛っぃ!」

「うわぁぁ、許して!」

痺れた手から武器を落とすと野盗達は一目散に逃げていく
蹴り飛ばされていた男は気絶しており
辺りを見回すと自分達以外の気配がないことを確認してミュリエルは剣を納めた

「よし、被害なし」

馬車の運転をしていた御者に礼を言われて、母と兄が乗る馬車の扉を開ける

「ご無事ですか?お母様、お兄様」

兄のランディは父に似た赤い髪をかきあげてため息をつく

「一瞬で倒してしまったなミュリエル強すぎるぞ」

金の髪が美しい母親エミリアは心配そうに娘のミュリエルを引き寄せた

「怪我はないようね、えらいわ」

もう16歳だというのに母は過保護だと思う
それは前世で家族がいなかったアレンとしての記憶があるせいかもしれないが
ミュリエルはこの16年大切に育てられてきた

「しかし王都も近いというのに野盗など出るとは、騎士団は何をやっているんだ」

兄の一言にミュリエルは思い出す
王都の外は青の騎士団の兵士達が見廻っていたはずだ
だから野盗などいないと思っていた

16年ぶりに王都に戻る、青の騎士団は健在だろうか

努力の子、アレン改めミュリエルは1歳になる前から歩き
2歳になる前から舌足らずではあるが会話ができる天才児としてもてはやされた

前世でも底なしだった魔力もそのままで魔法も使える3歳児

父ウエイン・ライランドは恐れ慄いたが、
母はすごいと褒めて、やがて父も慣れていった

凄い天才神童お嬢様として、ただただ大事に育てられた
アレンだったミュリエルは驕ることなく、4歳で剣を習う。

まえのわたしにたりないものそれは剣技!
前世で自分に足りなかったものを極めるように1日も欠かさず剣を振るった

剣の師 カイルは元黒の騎士団の剣聖とまで言われた人物で
父が引退したカイルを師として招いてくれたのだ

兄はこの時10歳でミュリエルは5歳
「お前は一体何になるつもりだ」
兄に言われてミュリエルは淀みなく当たり前のように答えた

「わたしは騎士になるの、青の騎士団よ。みんなをたすける」

ランディは天才すぎる妹にコンプレックスを抱いていたみたいだったが
ある事件をきっかけに妹を良きライバルとして精進するようになった

ミュリエルが王都に行きたいと言い出したのは10歳の時
しかし母の一存でミュリエルは16歳になるまで領地から出ることを禁じられた

この家は母が絶対であった
優しくおっとりとしているのに、父も兄もだれも母に逆らわない
それはミュリエルも同様だ

月日が経ち16になるとミュリエルは王都で行われる
大きい規模の夜会へ赴くこととなったのだ。


野盗を倒した後
そのまま母と兄の乗る馬車に揺られ王都へ行く道すがら

「ミュリエルは魔法学校には通わないのか?」
兄に聞かれた

「魔法は十分よ。魔法学校に入ったら最後、魔法士になれってきっと言ってくる」

前世でもアレンは魔法師長に付きまとわれ勧誘されたのだ、面倒すぎる

「でもデビュダントは約束通り参加すること」

母の一言に
「わかってる」と答えた、
しかし面倒だ
剣の鍛錬と並行して、令嬢としてのたしなみや作法も勉強せねばならないことで
苦戦した。

特にダンス、未知の領域に慄く
貴族とはなんと面倒

平民出のアレンはダンスとは無縁だった
夜会など出席したこともない

しかし、剣の腕はメキメキ上達した
いい師に巡り逢えたことを嬉しく思う

もしかしたらミュリエルはアレンより運動神経がいいのかもしれない
いろいろなことを思い出しているうちに馬車は王都の門をくぐる

馬車の窓から16年ぶりの王都を眺めた
変わったところもあるが、変わっていないところもある
懐かしさと嬉しさが込み上げ、泣きそうになってしまった
がグッと堪えた

「お母様、王都の邸宅はどの辺にあるの?」

団長の屋敷と近いといいな

「ふふ、ずっと王都に来たがっていたものね」

エミリアはミュリエルの髪を優しく撫でる
母の淡い金髪と父の赤い髪色が混ざったようなピンクゴールドの髪は
ストレートでサラサラしている

母はミュリエルの髪を撫でるのがとても好きなのだ
ミュリエルも母の手が心地よく、いつも好きにさせている

「城の近くの区画だからもう少しかかるわね」

みんな元気だろうか、
早く自由に王都を歩きたい

伯爵令嬢だがミュリエルは領地の中でも戦闘力2位なので護衛は必要ない

一位は高齢だが元剣聖、カイル師匠だ
まだ一度も勝てていない

しかし魔法も使えば勝てそうな気がする
師匠曰く
ミュリエルの剣は王都の騎士達にも劣ることはなく、むしろ勝ってると言っていた。

騎士団入団試験までは後二ヶ月
今回は剣も自信がある
楽しみである

その前に王族主催の夜会もあるのだが
そうこう考えているうちに馬車がゆっくりと止まった

兄のランディは父に似て赤い髪をしていて瞳は琥珀色
兄妹共に父の琥珀色の瞳を受け継いでおり、特にミュリエルの瞳は鮮やかな色だった

両親とも容姿が神がかって整っており、
その子供であるランディとミュリエルも美男美女であった。

邸宅の前に止まった馬車から兄が降りるとミュリエルに手を差し出す
その手を取りミュリエルがゆっくりと降り立った時
周囲の視線が二人に集中した

注目を浴びたのが何故だかわからないがミュリエルはニコっと微笑む
これはアレンでいた時からの処世術で
ニコニコしてる方がすんなり事が運ぶと思ったから

兄の手を離れて邸宅を見上げる
領地の屋敷も大きく立派だけど、
この王都にあると言う仮住まいの邸宅は邸宅というより豪邸だった豪邸屋敷

でかい

こういったことは16年何度もあった
アレンの平民感覚とミュリエルの伯爵令嬢の環境、落差がすごい

成長するにつれ慣れていった。でもミュリエルは領地の全ての孤児院に赴き
惜しげなく援助していった。
アレンであった時の貧しさも忘れない

自分の中のアレン達を助ける、自分が伯爵令嬢として生まれたのは好都合だ
平民でも誰でも困っている人達を助けることができる
団長のように
金はいくらあっても困らないのだ

母が兄の手を借り馬車から出ると、周囲から感嘆のため息が聞こえた

そうだろう、母は自分が見てきたどの女性よりも美しい。自慢の母なのだ

生まれた時に見た印象はいまもかわらず
そして二人の子持ちに見えないのだ
母も周りの視線に気がついたのか、おっとりと微笑む

この日は、王都の邸宅に住むことになった住人の話題で持ちきりだったという


邸宅の中に設えられた自分の部屋に入ると、
領地の部屋と同じように整えられていた
落ち着く

クローゼットを開けると、ドレスと同じくらいの騎士服のような動きやすさ重視の
服がかけてある

それを着用するとふうと一息

前世から着慣れているのでやはり落ち着く

女性用につめて作られたその服はミュリエルのお気に入りで
父にはもっと女性らしいドレスをと強要されがちだったけど
母が、ミュリエルは何を着ても似合うと褒めてからは父も強くいってこなくなった
ミュリエルにとって母は女神である

さて、サラサラと器用に髪を纏めて靴もブーツに履き替えると
一階のリビンルームへ

そこには侍女マリベルが淹れた紅茶をエミリアが優雅にいただいているところだった

「お母様、少し出かけてきます」

「あら、早速お出かけ?一人で大丈夫?」

ミュリエルは王都に初めて来たが、アレンの記憶は鮮明に思い出せるので
むしろ庭

「大丈夫です。お土産買ってきますね」

エミリアは了承し

「気をつけてね、お土産楽しみに待ってるわ」と微笑んだ

「はい、行ってきます」

本当に母は変わっている。
普通伯爵令嬢を一人で外出させたりしないものだけど
規格外のミュリエルのことをわかってくれていると思うとそれはそれで嬉しい

馬車の御者から「どちらへ参りますか?」と聞かれたが
歩いていくから平気だと断った

ひさしぶの王都である
足取りは軽い

なんなら鼻歌を歌っているくらいだ
令嬢らしくないけど

城の近くから見慣れた懐かしい路を歩いていくと
かつて通っていた団長の屋敷が見えてきた

塀からチラッと中を伺う、懐かしさで胸がいっぱいだ
日中だし団長はいないだろう

次の目的地へ行こうと踵を返した時
ボフッと顔を柔らかいものにぶつけてしまう

「あ、すいません」

と前を見たら服。この青い服は、、、団服、!

ゆっくり視線を上げるとそこには見知った面影
紫色の瞳に茶色い髪 団長を若くしたような厳ついが整った若い男が立っていた
背が高い
まさか、、、

「誰だ、君は」

声が団長に似ている!

ライアンだ
何歳になったのだろう、彼は青の騎士団の団服を着ている

一瞬アレンだと言おうとしてしまった口を押さえて、咳払いをして誤魔化す

名乗るわけにはいかない見た目は別人なのだ

「今日から近くに住まうことになりました。
ミュリエル・ライランドと申します
近くを散策しておりましたらお庭が綺麗だったので
少し拝見しておりましたすみません。これで失礼いたします。」

そう言ってライアンから離れるが

「お待ちを」とひと言かけられた

「ご令嬢お一人で?共もつけずに?」

しかもその格好

そんな目だ
ライアンは完全に訝しんでいる

「わたしこれでも騎士を目指しております、女ですが強いのでご心配は不要です」

「ご令嬢が騎士、、、?」

ハッとした
そういえばアレンの記憶では女の騎士がいなかったように思う

「その、あなたは青の騎士団の方とお見受けいたします、
もしかして女性は騎士にはなれませんか?」

「そうですね、私の団には女性はおりませんが、
なる人がいないだけで、なれないことは無いと思います。
他の国の騎士には女性もいると聞いたことがあるので。」

ミュリエルの表情がふわりと明るくなった

「よかった、ありがとうございます」

そういうとミュリエルは
名残惜しくはあったが今度こそライアンから離れ、去っていった

残されたライアンは顔を赤くして立ち尽くしていたとも知らず

憂も晴れたミュリエルはさらに浮き足立って路をすすむ

ライアン、さすが団長の息子だ。

団長もそうだった。彼らは自分を否定せず次の道を照らしてくれる
はやく騎士団試験に合格して仲良くなるのだミュリエルとしてみんなの側で、前以上に役に立つ。

近いうちに団長にも会えるだろうか
青の騎士団に入団し、また団長の側で彼の役に立つ事が
ミュリエルの生きる道なのだけど
押しかけるのではなく自然と出会い一から信頼を築いていきたいと思っている

ルンルン気分で坂を降り、かなり歩いた先に目的の教会があった
そこは以前から開け放たれており誰でも祈りを捧げることができる

懐かしい扉を開きコツコツとブーツの進む音が響いた冷たい石畳、
美しいステンドグラス。
温かみのある色合いのステンドグラスから
自分の瞳のような琥珀色と赤い光が降りそそぐ


女神像の前へ進み、手を組む
アレンの記憶をそのままに

今、とても恵まれたミュリエルは真剣に感謝の祈りを捧げていた
すると奥の扉が開き少し歳をとった院長が顔を出した

「おや、女神が女神像に祈ってらっしゃる」

なんだその冗談は、歳をとって相当丸くなったのか、
フレデリク・トーレン院長はゆっくりこちらに近づいて来た
印象がより優しくなった気がする

「勝手に入ってしまい申し訳ありません、素敵な教会ですね」

「どこも古くてぼろぼろですけど、ステンドグラスと女神様は自慢です」

そういうと院長は女神像を見上げて微笑んだ
もう今日は何回も涙腺が緩んでしまう
それを隠すように曖昧に微笑んでミュリエルは言葉を絞り出す

「また来てもいいでしょうか」

「ええ、もちろん女神様も歓迎しています」

教会を後にし、目的の居場所がちゃんとあることを確認したミュリエルは
現実を噛み締めるように歩き出す

次は憧れのスイーツ店だ
実はアレンは大の甘党で果物が乗ったスイーツが大好物だった

王都にある格式高い人気のスイーツ店に通い、人目も気にせず、
店内のイートインスペースで新作が出るたび堪能していた。
平民の時には考えられなかったが、騎士になり、副団長になってからは
足蹴なく通うほど

そしてミュリエルもまた甘いものに目がない
アレンがもう一度食べたかった王都のスイーツ
憧れの、目的の店はまだちゃんとあった

ガラス扉を開けるとカランカランとベルが鳴る

店内のガラスケースには色とりどりのケーキやタルト
美味しそうなスイーツ達が飾られていた。

ミュリエルは大好きだったフルーツタルトとコーヒーをイートインで注文し、
お土産用に十個ほど包んで欲しいとお願いする

代金を払い、席に着くと待ち望んでいたタルトとコーヒーが運ばれてきた
一口ごとに昔の記憶が蘇る
「おいしい!」

行きたいところを堪能して邸宅に帰ったのは夕方だった
夕食を終えて、食後のデザートにお土産のスイーツを出してもらう

「なんて綺麗で美味しいの」

母は感動している

「ミュリエル、ありがとう、とっても幸せ」

母の幸せそうな顔を見ていると自分も幸せを感じる

王都での1日を振り返ると二ヶ月後が待ち遠しい

「はぁ、舞踏会さえなければ、、、、」

母との約束は絶対、これを乗り切ればなんでも好きにしていいと言われている
夜会は一ヶ月後
まずデビュダント

そして騎士団入団試験
ミュリエルは不安と期待を膨らませるのだった
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