伯爵令嬢に生まれ変わった元騎士は憧れの人に恩返しをしたい

羽山コウリ

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フリードの記憶

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この国の魔法は何代も前の王が魔女狩りを行った為、廃れている

魔法を学ぶには、資料も師もなく
魔法使いも少なくなっていた

白い魔女テレージアはこの国の最後の魔女だ

テレージアに魔法を教わって
さらなる知識を欲するフリードは
隣国にあると言う炎の魔法書が見てみたかった

フリードには炎の魔法が馴染んでおり
扱いやすかったからだ


昔、隣国に逃げのびたこの国の魔女がまとめた魔法書

数年、テレージアの元で過ごし
フリードは国境を抜けて隣国ボルデンド王国に入った

この国の王は事あるごとに国境付近でいざこざを起こしていた

しかし、ラスティア王国から逃げてきた魔女がもたらした魔法の恩恵はボルデンドに浸透していて学べることはたくさんあった

フリードはテレージアに教わった知識と魔法で能力を認められ

ボルデンド王国の城に使える魔法使いとなっていた

炎の魔法書も手に入れ
研究に没頭し10年ほど経った時

また、国境でいさかいが起き
たまたま、派遣された先で

フリードは出会った
黒い髪の男だった
その手には小さな女の子が眠っている

あの谷から逃げてきた親子だった

娘が谷に落とされそうになり
逃げてきた二人にフリードは
衣食住を手配し匿った

国境付近のいざこざがお互いの兵や村に被害をもたらした時

ラスティア王国の騎士が派遣され
レアードを見つけた

魔力は無くなっていたが、すぐにわかった

死んだ母の面影のある生き別れた弟

10年以上忘れかけていた
黒い何かが静かに湧き起こる感覚

まだ、あの谷の村で行われている
忌まわしい儀式

それを間逃れた弟、弟のために助けに来てくれなかった母、死んでしまった、もう会えない母、谷で過ごした暗い日々

忘れていたのに

どうしょうもない、やるせない妬み

そして、敵国同士
敵として
魔法使いと騎士団長として再会してしまったのは運命だとでも?

魔物と兵士、騎士たちが入り乱れ戦う中

レアードもまた、敵の魔法使いに目を奪われた

黒い髪、生きていた時の父に似た兄

兄が生きているとは思わなかった

なぜ、そこにいるのかも

ただ、兄は自分の味方を殺してまわる恐ろしい魔法使いとなっていた

「兄さん!」

そこに感動の再会などなく

ただ、冷たく怒りに満ちた殺気のこもった眼光がこちらを見ただけだった

やがて、お互いの国は消耗し引き下がっていく

ラスティア王国の村の外に強固な壁が築かれた

一夜でこれだけの壁を作る魔法使いが騎士の中にいたのか、はたまた、魔法士を連れてきていたのかはわからない


ただ、湧きでる憎しみが収まらず

頭の中が輝く青を纏った騎士のことでいっぱいになっていった

フリードはさらに魔法の研究にのめり込んでいく

あの黒い竜を倒す、できないようなら操って、村の連中に復讐するために利用してやる、レアードを殺すためにも
魔法を研究した


しかし、あの竜だけは、、、
自分を守り、生かしてくれた竜だけは
迎えにいこう


さらに
3年経ち、谷へ密かに降りて一番大きい、古い竜を魔法で操ることに成功した

そして、試しにラスティア王国の国境付近で放った

忌まわしい古い黒い竜は自我を奪われて
自分に操られるがまま辺りを破壊していく

「ふ、ははは」

そうして、青の騎士団が現れた

竜と対峙した騎士たちは巨大な竜に手も足も出ず
死んでいく

騎士にしては珍しく魔法を使う若い男だけは最後まで
レアードを守って

死んだ

しかし最後の魔力を剣に込め
とんでもない武器をレアードに託し
レアードは竜を倒した

力尽きたが生きていたレアードの前に立ち

向かいあった

多分、谷に落とされた時から
狂っていたのだ

自分の顔は醜く歪んでいたに違いない

フリードの放った爆炎を
レアードが七色に光る剣で受け止めた時

剣は大きく弾かれ遠くに刺さる

受けずに斬ればフリードは死に
レアードは死ななかったかもしれない

フリードは感情が削げたように
もう一撃
放った

最大魔力で放った爆炎はレアードを跡形もなく消し去った


フリードはそれからフラフラと森を彷徨った


どこをどう歩いたのか

どれくらいそうしていたのか

やがて見えたのは
森に佇む小さな一軒家

白い魔女が住む暖かい家

扉は魔力で封じられ、テレージアは不在だった

わずかに残った魔力で解錠する

いたのは白いウサギだけだった

「フリード、帰ってきたのか!」

喋るウサギはピョンと近づいてきた

「ジアなら、お前を探しにあちこち出掛けてまだ、戻ってこない」

「俺を、、探して?」

テレージアは竜の谷から助けてくれた白い少女の姿をした魔女で

魔法を教えてくれた師でもある

母と弟を助けたのもテレージアだ
レアードを殺めた俺を彼女は許さないだろう

優しいあの女の顔が自分を軽蔑する顔など見れない


フリードは家から出た

「まてよ、フリード!ジアはこの10年お前を探してきたんだよ、ここにいてくれ、きっともうすぐ戻ってくるから」

追い縋るウサギに苛立ち
感情にまかせて魔力を放った

「うるさい!」

小さい白い体がはじけ飛ぶ

はっと振り返ると

白いウサギはもう動かなくなっていた

「ラン、、、!」

フリードはすぐ治癒魔法をかけるが
手遅れだった
もともと治癒魔法は得意ではない

フリードはウサギに保存魔法をかけ
指にはめてあった
指輪に魔力と記憶を込めた

テレージアが教えてくれた
魔女はその記憶と魔力を指輪に込め
引き継いでいく

フリードはそれを家の裏の木の下に埋めた


もう二度とここには戻れない
ここで暮らしていた頃にも戻れない

フラフラと彷徨い

結局、谷へ戻ってきた

谷底にいるあの竜に寄り添う

弟を殺し、テレージアの眷属のウサギまで殺めた

ただ静かにこのまま眠って死ねたらいいのに

そう思っていた

そうして月日が経つ

何年も谷底で死んだように死ねずに生きていた

子供の頃は出られなかったが
今はそんなことはない

死んでもいいと思っていたから
いまはここが自分に相応しいとも思えた

そんなある日

ドンと何か大きな音で目が覚めた

辺りに黒い魔力と血の匂いが漂う


フリードは炎で辺りを照らす

床に血だまりが広がる

子供が目を開けたまま動かなくなっていた

その子の魔力が抜けるように漂う

何体か竜が近寄り魔力を吸い取りはじめた

遺体は放置されていた

フリードはガツンと頭を叩かれたような気分になった


村の奴らはいまだにこんな事を繰り返していた

忌まわしい儀式

自分は竜の背に落ちたから助かった

そうでなければこの子供のように
すぐ死んだに違いない

憎むべきは人間だった

この村の奴らこそ復讐に値する
村への復讐心がまた湧き上がる

中型の黒い竜を操り、背に乗ると一気に上昇し、地上にでた

空から見下ろす村に対して
火の矢を放つと
フリードは村人を殺しまわった

根絶やしにしてやる

逃げ惑う村人に容赦なく魔法を放つ

一際大きな建物に入り、長老や、村長を見つけて虐殺した

そうして皆殺ししているところへ

テレージアが現れた


「フリード!やめるんだ!」


十数年ぶりに見たテレージアは
いまだに小さい少女のままだった










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