伯爵令嬢に生まれ変わった元騎士は憧れの人に恩返しをしたい

羽山コウリ

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黒と白の過去

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一人戻ってきたミュリエルは
拠点で待っていた4人にテレージアが竜の魔法使いの元へ行ったことを伝えた


「じゃあ、テレージア様は一人であの魔法使いに会いに行ったのか、」

ライアンが呟く

「うん、ジアには彼がどこにいるかわかるみたい」


「ミュリエル、師匠、、白い魔女に傷を負わせたのはその魔法使いだと思う」


「わかってる、でもジアは彼を一人で説得したいんだよ」

ミュリエルはウルド、ライアン、ヴェリル、最後にロージーを見た

「知りたい情報は手に入ったから、王都に戻ろうと思う」

ライアンとウルド、ヴェリルは拠点を整理して荷物をまとめると

5人は魔法陣の中に立った
白い竜もちゃっかりミュリエルのそばに立つ

ロージーとミュリエルが転移陣に魔力を流すと光り輝く



光に包まれ、次の瞬間

そこは見慣れたライランド邸の庭だった

騎士が二名待機しており、すぐにランディに報告される

「あ、お兄様!おはよう」

知らせを聞いて現れたランディに
ミュリエルは手を振る

ヘラっと笑うミュリエルの頭にランディの拳が炸裂した

しかし痛いのはランディであった

「!」

ミュリエルは咄嗟に物理攻撃を弾く障壁を張ってしまった

「あ、ごめん、お兄様つい」

赤く腫れ上がった拳をロージーが優しく治す

(そんな力いっぱい殴ろうとしなくても
痛そうだから、防御したんだけど)

「なぜ、応答しない!何度も呼びかけたんだぞ?」

「ごめんなさい」

魔力切れで意識なかったとか言ったらもっと怒られる

ミュリエルはサッと邸宅へ逃げた

「ちょっと体を洗ってきます」

残された4人と竜

「なんだコレは」

ランディが白い竜を指差した

「ミュリエルに懐いているのでついてきたみたいです」
ウルドが答えると

ランディはライアンを見た

「、、、ヴェリルが言うには、黒い竜が浄化され白くなったと」

ライアンはチラッとヴェリルを見た
ヴェリルはスイっと視線を逸らす

ランディはヴェリルとライアンに視線をよこすと

「殿下へ報告しに行くついてこい」
「ウルドは、ミュリエルの護衛に残れ」

と告げ、二人を伴いそのまま城に向かった

ロージーはウルドの母親の眠る客室に様子を見に行くと言うのでウルドもついていく

「一度目を覚まし、ひどく驚いていたようです。パン粥を召し上がって、また眠りました」

看病をしていたライランド家のメイドが礼をして部屋を出ていくと

二人はベッドに眠る女性を見た

少し自分に似た、黒髪の綺麗な女性は静かに眠っている

「師匠の話では25歳くらいだと言っていたよ」

「母さん、、か、」

「いつか、思い出せるかな?」

「ああ、きっと」




ミュリエルは自室に戻ると
テレージアの日記を開いた

表紙を開くと
白紙の1ページ目にジワリと文字が浮かび上がる

《この日記の所有者は最後の魔女テレージアからミュリエル・ライランドへ引き継がれた》

《この日記は所有者のみ使用可能》


「この日記自体が魔法の書ということ?」そう呟き

ミュリエルは2ページ目を開く

そこから、小さく繊細な字でテレージアの日記が綴られていた
日付は100年以上前、

「すごい」

日常や、魔女の薬のレシピ、失われた魔法や、新たに開発した魔法、薬草の効果、ありとあらゆる貴重な情報が記してある

パラパラとめくり
まず知りたいことを探していく




40年前の日付だった

〈見つけた。ローの未来を見た時に見つけた。アレンあの子だ。あの子に触れなければ。あの子が神子に繋がる鍵となる〉




次は27年前

〈孤児院に暮らすアレン、教会に通い
ついにアレンに会う。出自はわからないが、この子には魔法の才能が眠っている。魔力の量も成長するにつれ増えるだろう。〉


「?アレンは孤児院でテレージアに会ったことがある?」

思い出せない


〈アレンに触れた未来で明日、レアードとアレンが近づくタイミングをみた
レアードともっとも近づいた時アレンに酔っ払いをけしかける。建物の中にいるレアードから見える位置で
レアードはアレンを必ず助ける。あの子はフリードに少し似ているから、、。〉


「ジアが言っていたのはこの事?」


団長と出会えたのはジアの仕業だった

あの時のことはよく覚えている
あの酔っ払いはアレンが避けたのに
わざとぶつかってきた

あの時、団長に会って、憧れた
きっかけはどうあれ、あの人に会えたことはアレンにとっては宝物

青の騎士団に入れたのも、一緒に戦って彼の片腕になれたのも

誇らしい事だった

だから、きっかけはどうあれ誰かを責めることにはならない

パラっと次のページをめくろうとした時

首の後ろがビリッと痛んだ

「!」

ミュリエルは日記を空間魔法にしまうと胸に手を当てて、ウルドに呼びかけた






ちょうど、ロージーと別れ、ミュリエルを探していたウルドの胸元がピリッとして光る

『ウルド!中庭に来て!』

ミュリエルの声にウルドは走り
外に出た

中庭には白い竜とミュリエルがすでに待っていて

ミュリエルが竜の背に飛び乗る

「手を!」
ミュリエルの差し出した手にウルドが手を伸ばす

ぐんと引っ張りあげられ、ウルドはミュリエルの後ろに跨った

力が強い

いつのまに付けたのか、白い竜には手綱のようなものがつけられていた

「さすがに鞍は馬のものと合わなかった」
ミュリエルが言って手綱をウルドに渡す

手綱をウルドが持つと
ミュリエルが竜に語りかけた

「今からジアの元に転移するから」

ミュリエルはテレージアと話した時
彼女の首筋に印をつけた  

死を覚悟したであろうジアに
勝手に、こっそり

抱きしめた時に

ミュリエルの首筋がパァっと光る

ウルドはミュリエルの首筋に自分の胸元にある似た印を見た

印を持つ者同士が使える魔法

通信、魔力の供給、転移
ミュリエルはそれに他にも魔法を付加をつけたりする

「白い魔女に何の魔法を付け加えたんだ?」

「一度きりの絶対防御、それが使われたら私にわかるようにした」

次の瞬間、竜ごと光が二人を包み
転移した



テレージアは何が起こったのかわからず自分の体に触れた

黒い髪のフリードはテレージアを不思議そうに見ている

炎の大剣を魔力で練り上げテレージアに突き刺さした

はずだ

しかし、炎は散り魔力は弾かれ
無傷な白い魔女もまたフリードを見ている

前もこうして、テレージアに致命傷を負わせた、あの谷底で、
追い込まれ、返り討ちにした

テレージアは滝の裏に逃げ込み

あの水晶に閉じこもって傷を癒した

何年も、彼女の様子を見に行った
傷つけた白い魔女は静かに生きていた

それが、傷を癒し
また目の前に現れた

「また、俺の邪魔をするなら」

そうして、今度こそ断ち切るつもりで
最大魔法を打ち込んだのに


テレージアの指に見覚えのあるモノが光った

「なぜ、それを、、、」

「さっき、家に寄ってセレンの木の下から見つけた」

テレージアは指にはめた黒い真珠の指輪を大事そうに撫でた

「この記憶と魔力は君のものだ」

「すてたんだよ」

フリードはまた手のひらに魔力を集めて
今度は無数の矢を空中に作り出す

「テレージア、お前もその指輪も俺にはもう必要ない」


炎の矢がテレージアを狙う

「もう、レアードもいない、黒い谷の村も滅ぼしただろう?」

「レアードは生きている、感じるんだよ黒い魔力を」
フリードは左手で左目を抑える

左目から黒い魔力が迸る

「生きていたとしても!あのこは君の弟だ!なぜ憎む!?」

「あいつがいなければ、母さんは俺を諦めなかった!」


フリードの右手が振りおろされる

炎の矢が次々とテレージアに降り注いだ

テレージアは防御魔法を展開する
すでにフリードの方が魔力も上だ

テレージアの防御は次々と破壊され

炎の矢は白い魔女に迫った

「?、!」

テレージアは首の後ろに違和感を感じ振り返る

眩い光が輝き中から白い竜が躍り出る

それはテレージアの前に出ると

カッとブレスを放った

フリードに白い光が迫り、黒い男はギリギリでそれをかわす

テレージアを狙う炎の矢はミュリエルの放った水の矢とウルドの持つ大剣で撃ち落とされた


白い竜はミュリエルを慕い庇うように寄り添っていた

「まさか、黒い竜を浄化したのか?」

フリードは信じられないものをみるような目でミュリエルを見た

そしてもう一人の男

フリードはウルドを見た

「ああ、まさか、自ら俺のもとに来るとはな」

ウルドは
ニヤリと笑う黒髪の男と目が合った
黒い光がバチッと弾け

それがキッカケとなった
ウルドの頭がズキズキと痛む

記憶が溢れた

村が竜に襲われ
火が人々を飲み込んでいく

ふらふらと炎の中を歩く男が
まっすぐ自分に近づいてくる

ニヤリと笑う男の黒い瞳が光り
憎悪で歪む顔が
重なる


汗が流れて、ウルドはまた男を見た

あの時と違い少し年老いた男の顔がまた憎悪に染まる

近づいてくる
足音に
また、過去が見えた

母さんが僕を庇って倒れた

ウルドは振り返る

ミュリエルがウルドの前に出た

「ウルド、テレージアさんのそばに」

そう、、あの時も白い少女と銀狼が助けてくれた

人が焼ける、母さんが腹から血を流して

母さんを狼が運んで、白い少女と
領主様の館に逃げた

記憶が、、、ブレた

こんなことが、、、もっと昔に

あの時も、母さんを運んでくれたのは狼と喋るウサギ

白い髪の少女だった

ズキズキと頭が割れるようだ

ミュリエルは腰の剣を抜く

「あなたは、どうしても団長を、、、谷の村の生き残りを許せないの?」


「お前にはわかるまい、谷底で生きる孤独を癒すのは生贄を屠る竜だった」

生贄である自分に寄り添って助けてくれたのも邪悪な黒い竜だった



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