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選択の分かれ道

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食事を食べ終わるとミュリエルとテレージアは元は領主の城だった石造りの建物に来ていた

「君に見せたいものがある」

テレージアは奥にあった、女性を発見した部屋に入ると、隅にあった机の引き出しから一冊の本を取り出した

「これは、日記だ」

白い表紙の本で、なぜか背表紙だけ赤く染められていた

「私が死んだら眷属に見つけるように言っておいたものだ」

「君の知りたいことが全て書いてある」

ミュリエルの心臓がドクドクと大きな音をたてる


「私から説明してもいいけど、長くなってしまいそうだ」

テレージアから厚みのある日記を受け取る

触れると魔力を感じた

「これは、封印ですか?」

「魔力と私の血で封印してある。眷属と魔法使いで封印を解除できるように」

テレージアは魔法で指に傷を作り
小さな血のついた指で本の背表紙に触れる

パァっと見えない封印の魔法が解除された

「私が死んだら、眷属に血を、あと魔力のある魔法使いが協力して読めるようにしていたんだけど」

テレージアは力なく微笑む

「自ら封印を解いて、君にこれを手渡すことができるとは」

俯いた先にはミュリエルの持つ日記があった。長い水晶の眠りにつく前まで綴ってきた長い日々

そこには白い魔女のこれまでの選択の道筋が書き残してある

ミュリエルはテレージアを見つめる

「あの竜の魔法使いの元へ行かれるのですね」

「ああ、あの子を止めることはできないとわかってる。けど、説得して復讐をやめさせてあげたい」

テレージアは顔を上げるとミュリエルを見た

「心残りはアレンのことだ
あの子の人生を歪め、、
君を、、アレンをあんなふうに死なせてしまった私を恨んでほしい」

ミュリエルは目を見開いた

「ジア、きっとこれを読めば経緯はわかるのでしょう、、。でもあの時」

アレンが団長を生かすために死んだのは私のせい

「ああすることしか出来なかったアレンは団長を死なせてしまったことを悔いたけど」

「あの時のために団長のそばにいれたと思うのです」

黒い竜を倒せなかったら、王都だって、ここと同じように滅びていたかもしれない

「あなたのおかげできっと、私が今ここにミュリエルとしているのでしょう」

アレンが死ななければミュリエルは、いなかったかもしれない

「あなたについていきたいけど、どうも彼は私を目の敵にしているようだし、

ジア、無理しないでください。彼と話して解決出来なかったら戻ってきて」

ミュリエルはテレージアの小さな体を抱きしめた

きっと、テレージアは死ぬ気だと
ミュリエルは感じた

この日記をくれたのは、きっと一刻も早く彼の元へ行くため

そして、私にこれを遺すため

ミュリエルはゆっくりテレージアから離れた

「ジア、ウサギさんはあなたを心配していました」

「ああ、ありがとう。ミュリエル」




外へ出ると

蒼白く光る銀の狼が二人を待っていた

「シン、君は残ってミュリエルの力になってくれ」

テレージアの言葉に、銀狼はじっとテレージアを見つめていた

「君は私の最後の眷属だけど、これからはミュリエルに、、」

いい終わる前に

銀狼、シンはフイッとテレージアの前を歩く

「シンは、ジアをずっと守っていたんですよ?
今更あなたから離れるわけないですよ」

ミュリエルがテレージアに笑いかけ
先を歩くシンに声をかけた

「シン、ジアを頼みましたよ!」










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