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「なんだよぅ。」
剛は突然起こされて、不機嫌に文句を言う。
「なんだって…アンタ、仕事しに来たんでしょうが!
もう、これから頼むから、よろしくね。」
私は、わざと横柄に剛に頼む。
「ちえ。」
剛、相変わらず、『え』の発音が小憎たらしい。
「不貞腐(ふてくさ)れてる場合じゃ無いでしょ?もう、早く、そのコス脱ぎたいんでしょ?仕事しなさいよ。」
私は、母親の小言のように剛をさとし、不満そうな剛に話を始めた。
物語の分岐…
これは、ストーリーゲームと作者だけに与えられる特権で地獄。
選択が正しければグッドエンド、間違えれば…文字どおりの無限地獄が待っている。
私は、いくつものエタの沼で溺れている…血の池地獄に頭まで浸からせられる亡者のように…
いかん!
「もう、何でも良いから話を聞いてくれる?」
私は、高圧的に剛をにらむ。ふざける時間はないんだよぅ(>_<)
「えー。俺、そんなの聞かされても理解できないよ。」
数学の話をふられた中学生の様に剛は抵抗する。
もうっ…
私は台所へ行き、ウイスキーとソーダ水を持ってきた。
「いいから、アンタはこれ飲んで、ボーッと聞いてくれれば良いわ。」
「なーんだ。それなら出来るよ。」
剛は楽しそうにグラスに継がれるウィスキーを眺める。
アンタ、ウィスキー飲むとこだけ、出来るって意味じゃないでしょうね?
と、嫌みを言いたくなるのをぐっとこらえた。
小さな、ぐい飲みグラスにほんの少しウイスキーを継いだ。
スペイサイトのシングルモルト…
私は、酒に弱い分、高い酒を買うことができた。
小瓶でも、ゆうに一年はもつから、良い酒を楽しんでいた。
剛は、国産の、大衆的な酒を良く飲んでいた。
ビールと焼酎…
ウイスキーは高いから、アルコール度数も、金額も、あまり飲んだりはしなかったが、私が時より在庫処分に飲み会に持ってきたウイスキーは、嬉しそうに飲んでいた。
その、なんか、嬉しそうな顔に…
ああ、コイツは本当にうまい酒なんだなぁ…
と、実感したのを覚えている。
まあ、ともかく、うまい酒は、人を穏やかにゆとりを持たせるもので、これから話す、良くわからない滅亡の話も、剛はぼんやりと受け入れる気持ちになったようだった。
私も、極薄いウィスキーソーダを口に含み、BGMをかける。
モーツァルトの『レクイエム』
この曲は、映画『アマデウス』でも劇的に使われたモーツァルトの未完の遺作。
未完に追われる私には、相応(ふさわ)しい選曲では無いだろうか?
モーツァルトの曲を野菜に聴かせると、旨い野菜になるらしいが、さて、私の物語はどうだろう?
私は、乾いた笑いが込み上げるまま、話始めた。
「私のレベルの作家が公募に応募しても、まずは落選よ。
でも、落選したからって、スゴスゴ帰えるようじゃ、小銭なんて稼げないわ。ほら、フリマも早じまいする人が多いと、暇な客が見に来てくれるじゃない?」
私は、懐かしい夏のイベントを思い出す。
夕暮れ、他の人が片付けているところを、雑談していると、いつもは来ないような男性客が覗いてくれたりする。
で、わりと、大雑把に千円クラスの買い物をズバッと決めて帰るのだ。
「そうだね、来ないときもあったけど。」
剛はネガティブだが、確かに、そんなときもある。
「まあ、そうね。でも、私の場合、落選から先が大事だって話なのよ。」
「ふーん。」
「そうなのよ。大体、一万人の応募者から、数十人なんて、選ばれる方が奇跡だし、大体、選ばれる人は、はじめっから、ポイントやブックマークが沢山ついてる人なんだよ。」
話ながら、ふと、シンデレラにでもなった気がした。
所詮、心が美しくても、ナイスバディでも、身を飾るドレスや装飾品がなきゃ、まず、パーティにも出られないのだ。
「大変だね。」
剛は他人事のようにボヤいて、旨そうに酒をのむ。
「うん!大変なんだよっ。もう。でもさ、落選しても、ネットはその後があるんだよ。」
私は説明した。
ポイントがもらえるサイトや、自作の電子書籍、同人誌について。
こんなものは、忙しくてやってられないから、私の場合、少女時代に憧れたスターのように遠い話だけれど、あの時のように、好きなアイドルの振り真似をしながら、友人とスターを真剣に目指す事は可能なのだ。
「そうか、人がいるところで、宣伝するんだね。」
剛はフリマの話をして納得する。
家の前にガラクタを並べても、近所の人に不審者だと思われるが、イベントならガラクタを売ることが出来る。
経験したことは、理解が早い。
「まあ、そんなとこよ。で、私みたいなのは、落選が大体、決まってるわけよ。」
「そんな事ないよ。」
剛、とりあえず、慰める。
「ありがとう。まあ、奇跡的に一次選考にのれば、それは、凄いけど、落ちる方が確率高いから、そっちの方面で作戦は練っておくわけよ。」
偉そうに話ながら、なんだか、情けなくなってくる。
「うん。」
「なんていうか…野球漫画とかも、甲子園に行けなくて泣いたりするじゃない?あれ、感動的でしょ?で、人を引き付けるじゃない?」
「そうだね。」
「落選もね、美しく落選したら、新たな集客が見込めるわけよ。」
嗚呼…話していて悲しくなってきた。
昔、フリマのビジネス拡大を酔っぱらいの山臥(やまふし)が話していて、最後は道の空き缶拾いをビジネスとか言い出した事を思い出した。
こんな田舎で空き缶拾いをビックビジネスには出来ない。
私も…1人、いるかいないかの新規の読者の獲得をビックビジネスとか喚いて無いだろうか…
ええい、そんな事より、今は、完結。
それがダメでも、剛の呪いをとかなくては!
「まあ、なんだ、ゲームと同じで、選択肢を間違えるとバットエンドになるんだよ。で、まあ、頭を整理したいんだ。」
私は、ファティマについて話始めた。
剛は突然起こされて、不機嫌に文句を言う。
「なんだって…アンタ、仕事しに来たんでしょうが!
もう、これから頼むから、よろしくね。」
私は、わざと横柄に剛に頼む。
「ちえ。」
剛、相変わらず、『え』の発音が小憎たらしい。
「不貞腐(ふてくさ)れてる場合じゃ無いでしょ?もう、早く、そのコス脱ぎたいんでしょ?仕事しなさいよ。」
私は、母親の小言のように剛をさとし、不満そうな剛に話を始めた。
物語の分岐…
これは、ストーリーゲームと作者だけに与えられる特権で地獄。
選択が正しければグッドエンド、間違えれば…文字どおりの無限地獄が待っている。
私は、いくつものエタの沼で溺れている…血の池地獄に頭まで浸からせられる亡者のように…
いかん!
「もう、何でも良いから話を聞いてくれる?」
私は、高圧的に剛をにらむ。ふざける時間はないんだよぅ(>_<)
「えー。俺、そんなの聞かされても理解できないよ。」
数学の話をふられた中学生の様に剛は抵抗する。
もうっ…
私は台所へ行き、ウイスキーとソーダ水を持ってきた。
「いいから、アンタはこれ飲んで、ボーッと聞いてくれれば良いわ。」
「なーんだ。それなら出来るよ。」
剛は楽しそうにグラスに継がれるウィスキーを眺める。
アンタ、ウィスキー飲むとこだけ、出来るって意味じゃないでしょうね?
と、嫌みを言いたくなるのをぐっとこらえた。
小さな、ぐい飲みグラスにほんの少しウイスキーを継いだ。
スペイサイトのシングルモルト…
私は、酒に弱い分、高い酒を買うことができた。
小瓶でも、ゆうに一年はもつから、良い酒を楽しんでいた。
剛は、国産の、大衆的な酒を良く飲んでいた。
ビールと焼酎…
ウイスキーは高いから、アルコール度数も、金額も、あまり飲んだりはしなかったが、私が時より在庫処分に飲み会に持ってきたウイスキーは、嬉しそうに飲んでいた。
その、なんか、嬉しそうな顔に…
ああ、コイツは本当にうまい酒なんだなぁ…
と、実感したのを覚えている。
まあ、ともかく、うまい酒は、人を穏やかにゆとりを持たせるもので、これから話す、良くわからない滅亡の話も、剛はぼんやりと受け入れる気持ちになったようだった。
私も、極薄いウィスキーソーダを口に含み、BGMをかける。
モーツァルトの『レクイエム』
この曲は、映画『アマデウス』でも劇的に使われたモーツァルトの未完の遺作。
未完に追われる私には、相応(ふさわ)しい選曲では無いだろうか?
モーツァルトの曲を野菜に聴かせると、旨い野菜になるらしいが、さて、私の物語はどうだろう?
私は、乾いた笑いが込み上げるまま、話始めた。
「私のレベルの作家が公募に応募しても、まずは落選よ。
でも、落選したからって、スゴスゴ帰えるようじゃ、小銭なんて稼げないわ。ほら、フリマも早じまいする人が多いと、暇な客が見に来てくれるじゃない?」
私は、懐かしい夏のイベントを思い出す。
夕暮れ、他の人が片付けているところを、雑談していると、いつもは来ないような男性客が覗いてくれたりする。
で、わりと、大雑把に千円クラスの買い物をズバッと決めて帰るのだ。
「そうだね、来ないときもあったけど。」
剛はネガティブだが、確かに、そんなときもある。
「まあ、そうね。でも、私の場合、落選から先が大事だって話なのよ。」
「ふーん。」
「そうなのよ。大体、一万人の応募者から、数十人なんて、選ばれる方が奇跡だし、大体、選ばれる人は、はじめっから、ポイントやブックマークが沢山ついてる人なんだよ。」
話ながら、ふと、シンデレラにでもなった気がした。
所詮、心が美しくても、ナイスバディでも、身を飾るドレスや装飾品がなきゃ、まず、パーティにも出られないのだ。
「大変だね。」
剛は他人事のようにボヤいて、旨そうに酒をのむ。
「うん!大変なんだよっ。もう。でもさ、落選しても、ネットはその後があるんだよ。」
私は説明した。
ポイントがもらえるサイトや、自作の電子書籍、同人誌について。
こんなものは、忙しくてやってられないから、私の場合、少女時代に憧れたスターのように遠い話だけれど、あの時のように、好きなアイドルの振り真似をしながら、友人とスターを真剣に目指す事は可能なのだ。
「そうか、人がいるところで、宣伝するんだね。」
剛はフリマの話をして納得する。
家の前にガラクタを並べても、近所の人に不審者だと思われるが、イベントならガラクタを売ることが出来る。
経験したことは、理解が早い。
「まあ、そんなとこよ。で、私みたいなのは、落選が大体、決まってるわけよ。」
「そんな事ないよ。」
剛、とりあえず、慰める。
「ありがとう。まあ、奇跡的に一次選考にのれば、それは、凄いけど、落ちる方が確率高いから、そっちの方面で作戦は練っておくわけよ。」
偉そうに話ながら、なんだか、情けなくなってくる。
「うん。」
「なんていうか…野球漫画とかも、甲子園に行けなくて泣いたりするじゃない?あれ、感動的でしょ?で、人を引き付けるじゃない?」
「そうだね。」
「落選もね、美しく落選したら、新たな集客が見込めるわけよ。」
嗚呼…話していて悲しくなってきた。
昔、フリマのビジネス拡大を酔っぱらいの山臥(やまふし)が話していて、最後は道の空き缶拾いをビジネスとか言い出した事を思い出した。
こんな田舎で空き缶拾いをビックビジネスには出来ない。
私も…1人、いるかいないかの新規の読者の獲得をビックビジネスとか喚いて無いだろうか…
ええい、そんな事より、今は、完結。
それがダメでも、剛の呪いをとかなくては!
「まあ、なんだ、ゲームと同じで、選択肢を間違えるとバットエンドになるんだよ。で、まあ、頭を整理したいんだ。」
私は、ファティマについて話始めた。
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