128 / 208
パラサイト
帰宅
しおりを挟む
西条八十の都市伝説から飛び出す、あっと驚く虫の話…
私は、奇想天外な話に混乱しながらもワクワクした。
北城は、北宮家の親族であり、奴のぼやきを聞くところによれば、様々な資料が埋もれている予感がした。
そう、この屋敷の持ち主だった、私の尊敬する北宮 尊徳先生は、生物学者であり、国内外に友人が多い。
フランス人の昆虫記を翻訳するにあたって、アドバイスのやり取りなどの手紙の束などが保存されているかもしれなかった。
私は、資料の整理をしながら北城の様子を伺った。 信州には、尊敬する生物学者がたくさんいる。
それらの直筆の手紙を見る機会なんて……早々あるものではない。
いや、他の資料でも見てみたい。
私の期待を知らずに、北城は、何か文を作り、そして、あの…私が見つけたしおりを見つめていた。
それから、本棚の一般書を一つ一つ眺めはじめた。
「どうした?」
私の質問に、北城は、しおりを私に渡してこう言った。
「しおり…この謎は、ネットだけでは解けない気がする。
次のヒントの挟まる本があるはずなんだ。」
「本…北城、一体、お前は何を探してるんだ?」
私が聞くと北城は、渋い顔で棚を見ながら少し考えた。それから、
「わからん。」
と、答えた。
「はぁ?わからんって、なんだよ、なげやりだな。」
私が不満そうにぼやくと、北城は、観察対象を見るような目付きで私を見る。
「そう言えば…、池上、お前、このしおりをどうやって見つけた?」
「たまたまだ。」
北城に聞かれて、私は即答した。
「たまたま…だと?」
「ああ、本を全て整理のために取り出したのだから、たまたま、手にしただけだ。なんなら、この本を二人で手分けしてみたら…。」
私は近くの本を一つ取り出した。それは、あのしおりの挟まっていた昆虫図鑑の仲間で海洋生物のものだった。
「そうだ、たまたま、子供用の昆虫図鑑を手にしたんだ。そうしたら、ウスバキトンボのページに挟まっていた。別の図鑑に続きがあるかもしれない。」
私は、子供の図鑑の棚を見た。この中に、次のヒントがあるかもしれない。
「いや、それほど単純ではない。
本にしおりを挟んだのは、この場所にいなければ、答えを教える気が無いと言うことだろう。
そして、『砂金』の本でも分かる通り、ヒントは書斎(ここ)にあるとは限らない。
この家の本のリストを知り、確実に本の題名を知った上で探さなくては、見つからない。」
北城は、難しい顔をして言う。
「面倒くさいな、何の余興なんだろう?
しかし、そんなもの、後で探せばいいじゃないか。
それより…お前、下は良いのか?
まだ、撮影してるんだろ?」
自分でいいながら、背筋に寒いものが走るのを感じた。
私の言葉を聞きながら、北城は、皮肉げに笑う。
「しかし…それでは、タイムアップになってしまう。」
「タイムアップ…」
その言葉が、部屋を重苦しく包む。
私は、何かを忘れている気がする……
こんな風に、のんびりと謎解きなんてしている場合だろうか?
あの時…北城がこの部屋に来る前…
私が倒れる前…何があった?
下では撮影が進んでいた。
私は、なにか…そう、花の開花を知らせようと立ち上がって…倒れた…
思い出すと頭が重く感じてくる…
耳鳴りがする。
記憶がよみがえる…
秋吉の叫び声を聞いた…
それにつづいて、あの低く心を揺らす溶生の声を聞いた………
あの人が…帰ってきた。と。
私は、奇想天外な話に混乱しながらもワクワクした。
北城は、北宮家の親族であり、奴のぼやきを聞くところによれば、様々な資料が埋もれている予感がした。
そう、この屋敷の持ち主だった、私の尊敬する北宮 尊徳先生は、生物学者であり、国内外に友人が多い。
フランス人の昆虫記を翻訳するにあたって、アドバイスのやり取りなどの手紙の束などが保存されているかもしれなかった。
私は、資料の整理をしながら北城の様子を伺った。 信州には、尊敬する生物学者がたくさんいる。
それらの直筆の手紙を見る機会なんて……早々あるものではない。
いや、他の資料でも見てみたい。
私の期待を知らずに、北城は、何か文を作り、そして、あの…私が見つけたしおりを見つめていた。
それから、本棚の一般書を一つ一つ眺めはじめた。
「どうした?」
私の質問に、北城は、しおりを私に渡してこう言った。
「しおり…この謎は、ネットだけでは解けない気がする。
次のヒントの挟まる本があるはずなんだ。」
「本…北城、一体、お前は何を探してるんだ?」
私が聞くと北城は、渋い顔で棚を見ながら少し考えた。それから、
「わからん。」
と、答えた。
「はぁ?わからんって、なんだよ、なげやりだな。」
私が不満そうにぼやくと、北城は、観察対象を見るような目付きで私を見る。
「そう言えば…、池上、お前、このしおりをどうやって見つけた?」
「たまたまだ。」
北城に聞かれて、私は即答した。
「たまたま…だと?」
「ああ、本を全て整理のために取り出したのだから、たまたま、手にしただけだ。なんなら、この本を二人で手分けしてみたら…。」
私は近くの本を一つ取り出した。それは、あのしおりの挟まっていた昆虫図鑑の仲間で海洋生物のものだった。
「そうだ、たまたま、子供用の昆虫図鑑を手にしたんだ。そうしたら、ウスバキトンボのページに挟まっていた。別の図鑑に続きがあるかもしれない。」
私は、子供の図鑑の棚を見た。この中に、次のヒントがあるかもしれない。
「いや、それほど単純ではない。
本にしおりを挟んだのは、この場所にいなければ、答えを教える気が無いと言うことだろう。
そして、『砂金』の本でも分かる通り、ヒントは書斎(ここ)にあるとは限らない。
この家の本のリストを知り、確実に本の題名を知った上で探さなくては、見つからない。」
北城は、難しい顔をして言う。
「面倒くさいな、何の余興なんだろう?
しかし、そんなもの、後で探せばいいじゃないか。
それより…お前、下は良いのか?
まだ、撮影してるんだろ?」
自分でいいながら、背筋に寒いものが走るのを感じた。
私の言葉を聞きながら、北城は、皮肉げに笑う。
「しかし…それでは、タイムアップになってしまう。」
「タイムアップ…」
その言葉が、部屋を重苦しく包む。
私は、何かを忘れている気がする……
こんな風に、のんびりと謎解きなんてしている場合だろうか?
あの時…北城がこの部屋に来る前…
私が倒れる前…何があった?
下では撮影が進んでいた。
私は、なにか…そう、花の開花を知らせようと立ち上がって…倒れた…
思い出すと頭が重く感じてくる…
耳鳴りがする。
記憶がよみがえる…
秋吉の叫び声を聞いた…
それにつづいて、あの低く心を揺らす溶生の声を聞いた………
あの人が…帰ってきた。と。
0
あなたにおすすめの小説
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/25:『がんじつのおおあめ』の章を追加。2026/1/1の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/24:『おおみそか』の章を追加。2025/12/31の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/23:『みこし』の章を追加。2025/12/30の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/22:『かれんだー』の章を追加。2025/12/29の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/21:『おつきさまがみている』の章を追加。2025/12/28の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる