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パラサイト
葉緑素
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「今なら、私のしたかった事、理解してくださるわね?」
草柳レイが私に笑いかける。
それは、諦めの入った悲しげな笑顔だった…
夜が、終わろうとするのを感じた。
「葉緑素…ですか。」
葉緑素を取り込んで光合成をする人間が頭に浮かぶ。
緑色の肌なんて、SFだけの話だと思っていた。
「そう…。これ以上、日差しが強くなれば、人は生きては行けないもの。
森が維持できないのだから、人が酸素を産み出す方が合理的でしょ?プラスチックを混ぜた皮膚なら、丈夫だし、火星で暮らすときにも重宝するでしょ?」
草柳レイの話を私は混乱しながらきいていた。
「そんな事…出来るのですか?」
「無理ね。」
私の問いに速攻でレイは答えた。
「なら…なぜ?」
「自然に任せたら、よ。その為に、人間を遺伝子について理解できるようにしたんじゃない。」
レイは、悪びれずにそう言って、真顔で温室ごしに空を見た。
磨かれたガラスの向こうにオリオン座が見えた。
「もう、三千年は…もたないと思うわ。」
レイの言葉に胸が締め付けられる。
「それでも…我々は、生きようとは、しますが、ね。」
北川が困った人を見る目でレイに言った。
「そうね…私も…努力はするつもりよ。
それが、無駄な事だと思っていても。」
レイは、気だるくそう言って、それから私のところへやって来た。
そして、地面にへたりこむ私の手をとり、背後を北川が見張る常態で、私の顔をじっと見つめた。
「ごめんなさいね…状況が、こんなに変わっているなんて、今、分かったの。
朝が来たら…あなたは普通のおじさんに戻るけれど…それでも、生きのびたいと願うなら、研究は進めてね。」
レイの瞳に吸い込まれそうになった。
「葉緑素の組み入れ…に、ついてですか?」
人間の遺伝子組み換えなんて、私には荷が重すぎる。
それに、遺伝子を組み換えて火星に移住なんて、昔の漫画のようで恥ずかしかった。
「別に…こだわらなくてもいいわ。それについては…他のコが始めるだろうから。
あなたは、昆虫と仲良くしてくれたら…それでいいんだわ。」
レイは笑った…そして、月の光のように淡く輝きながら私の目の前から消えていった。
「れ、レイさんっ!!」
私は彼女の手の温もりを思いきり握りしめた……
が、柔らかかった彼女の手は節くれだった固い蔓のようにかわり、美しい顔は、目玉のなくなったミイラと化していた………
「わぁぁぁぁーΣ( ̄□ ̄)!」
私はしばらくして、何を握っているのかを知って、何者かのミイラをぶん投げると、ドアの辺りまで一気に移動した。
草柳レイが私に笑いかける。
それは、諦めの入った悲しげな笑顔だった…
夜が、終わろうとするのを感じた。
「葉緑素…ですか。」
葉緑素を取り込んで光合成をする人間が頭に浮かぶ。
緑色の肌なんて、SFだけの話だと思っていた。
「そう…。これ以上、日差しが強くなれば、人は生きては行けないもの。
森が維持できないのだから、人が酸素を産み出す方が合理的でしょ?プラスチックを混ぜた皮膚なら、丈夫だし、火星で暮らすときにも重宝するでしょ?」
草柳レイの話を私は混乱しながらきいていた。
「そんな事…出来るのですか?」
「無理ね。」
私の問いに速攻でレイは答えた。
「なら…なぜ?」
「自然に任せたら、よ。その為に、人間を遺伝子について理解できるようにしたんじゃない。」
レイは、悪びれずにそう言って、真顔で温室ごしに空を見た。
磨かれたガラスの向こうにオリオン座が見えた。
「もう、三千年は…もたないと思うわ。」
レイの言葉に胸が締め付けられる。
「それでも…我々は、生きようとは、しますが、ね。」
北川が困った人を見る目でレイに言った。
「そうね…私も…努力はするつもりよ。
それが、無駄な事だと思っていても。」
レイは、気だるくそう言って、それから私のところへやって来た。
そして、地面にへたりこむ私の手をとり、背後を北川が見張る常態で、私の顔をじっと見つめた。
「ごめんなさいね…状況が、こんなに変わっているなんて、今、分かったの。
朝が来たら…あなたは普通のおじさんに戻るけれど…それでも、生きのびたいと願うなら、研究は進めてね。」
レイの瞳に吸い込まれそうになった。
「葉緑素の組み入れ…に、ついてですか?」
人間の遺伝子組み換えなんて、私には荷が重すぎる。
それに、遺伝子を組み換えて火星に移住なんて、昔の漫画のようで恥ずかしかった。
「別に…こだわらなくてもいいわ。それについては…他のコが始めるだろうから。
あなたは、昆虫と仲良くしてくれたら…それでいいんだわ。」
レイは笑った…そして、月の光のように淡く輝きながら私の目の前から消えていった。
「れ、レイさんっ!!」
私は彼女の手の温もりを思いきり握りしめた……
が、柔らかかった彼女の手は節くれだった固い蔓のようにかわり、美しい顔は、目玉のなくなったミイラと化していた………
「わぁぁぁぁーΣ( ̄□ ̄)!」
私はしばらくして、何を握っているのかを知って、何者かのミイラをぶん投げると、ドアの辺りまで一気に移動した。
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