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不調 ふちょう 絶不調
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保健室に入るとそこは異世界でした。
なに言ってるか、分かんないだろうけど。僕にも分かんない。なんで保健室にキングサイズのベッドが置いてあるのさ。明らかに校舎からはみ出る大きさでしょ。
お城を連想させるシャンデリアと高価そう豪華な内装に「ここはどこなの?」と、思わず口が開いちゃった。
ベッドの上でシーツがごそごそ動いてる。
誰かいる!
思わず身構えてベッドを注視する。
細く白い腕とその腕の倍ありそうな逞しい腕がシーツの波から見え隠れしている。赤みがかった金色の輝きがゆるりと揺れ動いている。寝返りにしては派手な動きですね。息が上がってる感じ? 声は二人分。男の声だ。プロレスしてるって訳じゃないよね。知っている。あれって深夜ネットのBL動画によくあるシチュだ。ううう。なんで調子が悪いのよう。こんな状態じゃなきゃ、じっくり観察するのに。生BLじゃんって。詳しくしたいし、ウキドキしたいって言うのに。
でも僕は本気で早く寝転がりたいんだよぅ。足痛いんだよ。遅れてきた成長期ってやつ。クラスで1、2を争う低身長から大脱出するチャンスなのに。こんなシチュじゃなきゃ、今の状況喜ぶんだけどな。情報量多い? ごめんね。成長期の腐男子なんだよ。
後ろに目を向ければ、まだ戸を開けたままだった。学校の廊下が見える。幸い戸から手を離してないから、こそっと帰れるかも。
ゆっくり後退りしようとして失敗した。戸の溝に足を取られて床を蹴っちゃった。調子の悪さがこんな所で出るなんて嘘でしょ。
見つかりませんようにとベッドに顔を向ければ金色頭の男とがっちり視線がぶつかった。
「うあっ!」
次の瞬間、金属の擦れる音と同時に肩に鋭い痛みが走った。
睨みつけられる金色頭の濃い琥珀色の瞳孔が、見る間に縦に縮み糸のようになった。鬼気迫るライオンのような目だった。恐怖に縮み上がる。
「このまま、この場で斬られたいか。それとも捕まって裁判にかけられて処刑されたいか。どっちがいい」
大柄で真っ裸の金色頭がサーベルを僕に突き刺していた。肩が焼けるように痛い。思わず座り込んだ。
どっちにしろ僕は斬られる運命らしい。一か八かで廊下に飛び込んでもいいけど、逃げ切る前に斬られる未来しか想像できない。でもやるしかない。多分このまま後ろに倒れれば、開いた戸から脱出できるはず。後ろでんぐり返りだ。
ガツっ
勢いをつけた後頭部と背中を強かに壁に打ち付けた。反射的に頭を抱えた。さっきまで戸が開いていたのに。躓いた段差も消えている。嘘嘘帰れないじゃん。涙目になる。
「混乱しているのか。自害なぞさせん。誰に頼まれた!」
男が刺したサーベルをぐりぐり食い込ませる。熱い。痛い。怖い。
誰って言われても僕も困る。だって、保健室のベッドで寝転がりたかっただけなんだもの。体が震えて声も出ない。
「クワットロ。やめろッ」
「ティートレット、庇い立ては無用だ。こいつは俺の私室を侵したのだぞ」
「違う。私は見ていた」
「事実は事実だ」
「聞け。違うんだ。その子を傷つけるな!」
ベッドからもう一人の男が這い出て、金色頭のに体当たりした。その人は痩身で飛び込みの選手みたいに引き締まった上半身をしていた。頭は長い髪で見えないけど多分美人。
タックルされたのに大柄金色頭は逞しい厚みのある胸筋で跳ね返すみたいになっていた。漢って感じ。眼福眼福。
ああ、こんな時にも腐男子筋肉チェックを……。朦朧としながら観察してしまう。
二人が言い合いを始めてしばらくして、サーベルが引き抜かれた。もうダメ……。僕は体を支えきれなくなって床に伏せた。目の前が暗くなる。意識を保つのも辛い。死んじゃうのかな……。
どうなっちゃうんだろう。僕。
なに言ってるか、分かんないだろうけど。僕にも分かんない。なんで保健室にキングサイズのベッドが置いてあるのさ。明らかに校舎からはみ出る大きさでしょ。
お城を連想させるシャンデリアと高価そう豪華な内装に「ここはどこなの?」と、思わず口が開いちゃった。
ベッドの上でシーツがごそごそ動いてる。
誰かいる!
思わず身構えてベッドを注視する。
細く白い腕とその腕の倍ありそうな逞しい腕がシーツの波から見え隠れしている。赤みがかった金色の輝きがゆるりと揺れ動いている。寝返りにしては派手な動きですね。息が上がってる感じ? 声は二人分。男の声だ。プロレスしてるって訳じゃないよね。知っている。あれって深夜ネットのBL動画によくあるシチュだ。ううう。なんで調子が悪いのよう。こんな状態じゃなきゃ、じっくり観察するのに。生BLじゃんって。詳しくしたいし、ウキドキしたいって言うのに。
でも僕は本気で早く寝転がりたいんだよぅ。足痛いんだよ。遅れてきた成長期ってやつ。クラスで1、2を争う低身長から大脱出するチャンスなのに。こんなシチュじゃなきゃ、今の状況喜ぶんだけどな。情報量多い? ごめんね。成長期の腐男子なんだよ。
後ろに目を向ければ、まだ戸を開けたままだった。学校の廊下が見える。幸い戸から手を離してないから、こそっと帰れるかも。
ゆっくり後退りしようとして失敗した。戸の溝に足を取られて床を蹴っちゃった。調子の悪さがこんな所で出るなんて嘘でしょ。
見つかりませんようにとベッドに顔を向ければ金色頭の男とがっちり視線がぶつかった。
「うあっ!」
次の瞬間、金属の擦れる音と同時に肩に鋭い痛みが走った。
睨みつけられる金色頭の濃い琥珀色の瞳孔が、見る間に縦に縮み糸のようになった。鬼気迫るライオンのような目だった。恐怖に縮み上がる。
「このまま、この場で斬られたいか。それとも捕まって裁判にかけられて処刑されたいか。どっちがいい」
大柄で真っ裸の金色頭がサーベルを僕に突き刺していた。肩が焼けるように痛い。思わず座り込んだ。
どっちにしろ僕は斬られる運命らしい。一か八かで廊下に飛び込んでもいいけど、逃げ切る前に斬られる未来しか想像できない。でもやるしかない。多分このまま後ろに倒れれば、開いた戸から脱出できるはず。後ろでんぐり返りだ。
ガツっ
勢いをつけた後頭部と背中を強かに壁に打ち付けた。反射的に頭を抱えた。さっきまで戸が開いていたのに。躓いた段差も消えている。嘘嘘帰れないじゃん。涙目になる。
「混乱しているのか。自害なぞさせん。誰に頼まれた!」
男が刺したサーベルをぐりぐり食い込ませる。熱い。痛い。怖い。
誰って言われても僕も困る。だって、保健室のベッドで寝転がりたかっただけなんだもの。体が震えて声も出ない。
「クワットロ。やめろッ」
「ティートレット、庇い立ては無用だ。こいつは俺の私室を侵したのだぞ」
「違う。私は見ていた」
「事実は事実だ」
「聞け。違うんだ。その子を傷つけるな!」
ベッドからもう一人の男が這い出て、金色頭のに体当たりした。その人は痩身で飛び込みの選手みたいに引き締まった上半身をしていた。頭は長い髪で見えないけど多分美人。
タックルされたのに大柄金色頭は逞しい厚みのある胸筋で跳ね返すみたいになっていた。漢って感じ。眼福眼福。
ああ、こんな時にも腐男子筋肉チェックを……。朦朧としながら観察してしまう。
二人が言い合いを始めてしばらくして、サーベルが引き抜かれた。もうダメ……。僕は体を支えきれなくなって床に伏せた。目の前が暗くなる。意識を保つのも辛い。死んじゃうのかな……。
どうなっちゃうんだろう。僕。
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