5 / 19
4話 evil
しおりを挟む
とある高層ビルの屋上から、明空 俳徒《あけぞら はいど》は13エリアを眺めていた。
普段は人で溢れ活気づいていた都市は数時間前、管理局の大規模作戦に伴う緊急避難警報により、
13・14エリア共に静寂に包まれた。この場所から、人が姿を消したのだ。ここにはもう「人間」はいない。
「明空。」
静寂を裂いたのは、猫屋敷 冬真《ねこやしき とうま》だった。
「そろそろ時間だ。みんなお前を待ってる。」
「…あぁ。」
「丹波のジジィ供がお怒りだ。早くここから逃せだとよ。」
もうすぐ13・14エリア全域に、第六管理局のevilに対する弾圧が始まろうとしていた。
他のエリアに繋がる全4つのルートは封鎖され、既に退路は断たれていた。
「自ら動かず、何も出来ない無能に貸してやる耳など無い。」
そうだなと、〇〇は鼻で笑って返し、明空の方へ近づく。丁度、景色を眺める彼の隣に。
「何を見てたんだ?」
「ここから見下ろせる風景。…それと、第4ゲートの管理局の動き。」
「あんな豆粒みたいなのをか? よく見えるなお前。」
「目が良いんだよ。昔から。」
地上180m前後、ここ13エリア支部局から見下ろせる景色は、圧巻のものであった。
どうやら、ここの元支部局長は景観にも力を入れていたようだ。
「動きを見る限り、全ゲートは封鎖済み。何人投入されているのかは分からないが、最悪エリアを完全に包囲されていると考えた方がいいな。」
絶望的状況。にもかかわらず、彼等からは不安や落胆などと言ったものは感じられない。
「そんで。お前のことだ。何か策はあるんだろ?」
「そうだな。数的不利はどうしようもないが、用があるのは結果だ。引き分け以上になら持っていける。」
「具体的には?」
「質問ばかりだなお前は。」
「悪いか?」
「はっ…、そうじゃ無いさ。詳細は下で話す。」
二人は支部局内部へ戻ろうとする。下層では、evil達が指導者を、明空の指示を求めている。
「それと、」
明空はそう言って向き直る。
「『あれ』を使う。」
「…既に回収はしてある。だけど、支部局の連中をあれほど殺るとはねぇ。思い出すとゾッとする。」
空を仰ぎ見る。夕刻だ。陽は沈み、空が紅くなってゆく。
しかしその紅はいつもより深く、まるで血で染まった様な不気味さを生み出していた。
「使えるものは使う。たとえそれが今、我々の手に余るものであったとしても。」
普段は人で溢れ活気づいていた都市は数時間前、管理局の大規模作戦に伴う緊急避難警報により、
13・14エリア共に静寂に包まれた。この場所から、人が姿を消したのだ。ここにはもう「人間」はいない。
「明空。」
静寂を裂いたのは、猫屋敷 冬真《ねこやしき とうま》だった。
「そろそろ時間だ。みんなお前を待ってる。」
「…あぁ。」
「丹波のジジィ供がお怒りだ。早くここから逃せだとよ。」
もうすぐ13・14エリア全域に、第六管理局のevilに対する弾圧が始まろうとしていた。
他のエリアに繋がる全4つのルートは封鎖され、既に退路は断たれていた。
「自ら動かず、何も出来ない無能に貸してやる耳など無い。」
そうだなと、〇〇は鼻で笑って返し、明空の方へ近づく。丁度、景色を眺める彼の隣に。
「何を見てたんだ?」
「ここから見下ろせる風景。…それと、第4ゲートの管理局の動き。」
「あんな豆粒みたいなのをか? よく見えるなお前。」
「目が良いんだよ。昔から。」
地上180m前後、ここ13エリア支部局から見下ろせる景色は、圧巻のものであった。
どうやら、ここの元支部局長は景観にも力を入れていたようだ。
「動きを見る限り、全ゲートは封鎖済み。何人投入されているのかは分からないが、最悪エリアを完全に包囲されていると考えた方がいいな。」
絶望的状況。にもかかわらず、彼等からは不安や落胆などと言ったものは感じられない。
「そんで。お前のことだ。何か策はあるんだろ?」
「そうだな。数的不利はどうしようもないが、用があるのは結果だ。引き分け以上になら持っていける。」
「具体的には?」
「質問ばかりだなお前は。」
「悪いか?」
「はっ…、そうじゃ無いさ。詳細は下で話す。」
二人は支部局内部へ戻ろうとする。下層では、evil達が指導者を、明空の指示を求めている。
「それと、」
明空はそう言って向き直る。
「『あれ』を使う。」
「…既に回収はしてある。だけど、支部局の連中をあれほど殺るとはねぇ。思い出すとゾッとする。」
空を仰ぎ見る。夕刻だ。陽は沈み、空が紅くなってゆく。
しかしその紅はいつもより深く、まるで血で染まった様な不気味さを生み出していた。
「使えるものは使う。たとえそれが今、我々の手に余るものであったとしても。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる