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16話 その悪は世界を壊す
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司令部では村上中佐の怒号が飛んでいた。
「何なんだこれは!どこからの放送だ!」
「分かりません!既に13、14エリア全域のモニター、ネット上にも放送されているようです!」
「くそ。特定急げ!発見次第奴らを処分しろ!」
「落ち着け村上。」
突如入室してきた名雲が鎮める。
「しかしこれはっ!」
「無駄だ。特定したところで、そこに奴らはもういない。」
「…録画?」
「だろうな。」
六道寺の予測に、蔵馬は同意を示す。
「それで、特務官。司令部はなんて?」
「第4ゲートの状況を確認次第、直接少尉に連絡するそうです。」
「そうか。君の身体バフ、後何分もつ?」
「通常であれば、あと6分は。」
「十分だ。私達も向かうぞ。」
蔵馬は他4人の遊撃隊を連れて、第4ゲートへと向かう。裏路地へ入り、両手のビルの壁を蹴って屋上へ出る。
【私たちは今までのevilを否定する。非暴力に徹し、来るかも知らぬ人間の慈悲を当てにし、奪われ続ける運命を受け入れる。その腐った定めは私が砕く。…我々が本気であることを、ここに証明しよう。】
突然、男の後方の扉が開いた。
複数のevilと思われる男に連れてこられたのは、口を塞がれ、両手を縛り付けられた、小太りの老いた男だった。
「丹波…?」
遊撃隊の一人がそう言った。蔵馬はビル群を駆け抜けながら、14エリアのモニターを見る。
【紹介しよう。旧evilの指導者、丹波総一郎だ。】
明空はそう言って、丹波の口を塞いでいたガムテープを剥がさせた。
口が開けたと同時に、丹波は体をガクガクと震わせながら、必死に懇願する。
【た、助けてくれっ!誰か!おい!】
【この男は、私達evilの為に全力を尽くした。evilが管理局の脅威から逃れ、安全な生活圏の構築を目的とした自治都市構想の創案者であり、我々の代表ともなりえた男だ。
しかしすべてはまやかし。
この男の正体は、国に密かにevil感染者の位置を伝え、感染者の駆除に手を貸し、その見返りとして、多額の報酬を受け取っていた裏切り者だ!
自治都市構想も、もとより管理局とevilの軋轢が生じると踏んだうえで、駆除が加速することを念頭に置いた行動だったのだ。
我々が信じたこの男は、上辺だけを取り繕い、仲間を売り、自らの私腹を肥やしていただけのゴミクズだ。】
【わ、わ、私じゃない!私はそんなことはやっていない!】
明空の手に、一つの音声ファイルらしきものが握られていた。
【流せ。】
【『結果的にevilの駆除を大幅に進めるのであれば、evilに自治権を与えてみてはいかかでしょうか。』】
【『ええ、管理局の人間が承諾するはずもありません。この案を真に受けたevilも管理局に対する反発を大きくするでしょう。』】
【『管理局が万が一承諾したならば、それはそれで結構ですよ。ゴミが一か所に集まるのですから。』】
【あ、…わ、…わた】
【まだこれでも白を切るつもりか?】
【あ、あ、明空!許してくれ!わ、あしが…悪かった!だ、だから】
【許しを請う相手は俺じゃない。お前が裏切ったすべてのevilだ。】
【…ご、ご、ごごごめんなs】
丹波の言葉を遮るように、突然、鋭利な黒によって彼の首が飛ぶ。
司令部から、蔵馬へ通信が入る。
「蔵馬少尉。聞いてくれ。」
【古く腐りきった君主は、今ここに死んだ。
私が掲げるのは、力だ。
何も知らずに腕を振りかざし、無秩序に何もかも奪い去ってゆく人類に鉄槌を下す。
自らが上だと胡坐をかいた連中に、裁きを下す。
孤独なる同胞たちよ、私の元へ集え!
悲しみに暮れる日はもう来ない。
すべてに怯える日はもう来ない。
私達の手で、私達だけの未来を作る。
だから、告げる。】
「第四ゲートが、落ちた。」
「…!」
【世界を、壊せ。】
「何なんだこれは!どこからの放送だ!」
「分かりません!既に13、14エリア全域のモニター、ネット上にも放送されているようです!」
「くそ。特定急げ!発見次第奴らを処分しろ!」
「落ち着け村上。」
突如入室してきた名雲が鎮める。
「しかしこれはっ!」
「無駄だ。特定したところで、そこに奴らはもういない。」
「…録画?」
「だろうな。」
六道寺の予測に、蔵馬は同意を示す。
「それで、特務官。司令部はなんて?」
「第4ゲートの状況を確認次第、直接少尉に連絡するそうです。」
「そうか。君の身体バフ、後何分もつ?」
「通常であれば、あと6分は。」
「十分だ。私達も向かうぞ。」
蔵馬は他4人の遊撃隊を連れて、第4ゲートへと向かう。裏路地へ入り、両手のビルの壁を蹴って屋上へ出る。
【私たちは今までのevilを否定する。非暴力に徹し、来るかも知らぬ人間の慈悲を当てにし、奪われ続ける運命を受け入れる。その腐った定めは私が砕く。…我々が本気であることを、ここに証明しよう。】
突然、男の後方の扉が開いた。
複数のevilと思われる男に連れてこられたのは、口を塞がれ、両手を縛り付けられた、小太りの老いた男だった。
「丹波…?」
遊撃隊の一人がそう言った。蔵馬はビル群を駆け抜けながら、14エリアのモニターを見る。
【紹介しよう。旧evilの指導者、丹波総一郎だ。】
明空はそう言って、丹波の口を塞いでいたガムテープを剥がさせた。
口が開けたと同時に、丹波は体をガクガクと震わせながら、必死に懇願する。
【た、助けてくれっ!誰か!おい!】
【この男は、私達evilの為に全力を尽くした。evilが管理局の脅威から逃れ、安全な生活圏の構築を目的とした自治都市構想の創案者であり、我々の代表ともなりえた男だ。
しかしすべてはまやかし。
この男の正体は、国に密かにevil感染者の位置を伝え、感染者の駆除に手を貸し、その見返りとして、多額の報酬を受け取っていた裏切り者だ!
自治都市構想も、もとより管理局とevilの軋轢が生じると踏んだうえで、駆除が加速することを念頭に置いた行動だったのだ。
我々が信じたこの男は、上辺だけを取り繕い、仲間を売り、自らの私腹を肥やしていただけのゴミクズだ。】
【わ、わ、私じゃない!私はそんなことはやっていない!】
明空の手に、一つの音声ファイルらしきものが握られていた。
【流せ。】
【『結果的にevilの駆除を大幅に進めるのであれば、evilに自治権を与えてみてはいかかでしょうか。』】
【『ええ、管理局の人間が承諾するはずもありません。この案を真に受けたevilも管理局に対する反発を大きくするでしょう。』】
【『管理局が万が一承諾したならば、それはそれで結構ですよ。ゴミが一か所に集まるのですから。』】
【あ、…わ、…わた】
【まだこれでも白を切るつもりか?】
【あ、あ、明空!許してくれ!わ、あしが…悪かった!だ、だから】
【許しを請う相手は俺じゃない。お前が裏切ったすべてのevilだ。】
【…ご、ご、ごごごめんなs】
丹波の言葉を遮るように、突然、鋭利な黒によって彼の首が飛ぶ。
司令部から、蔵馬へ通信が入る。
「蔵馬少尉。聞いてくれ。」
【古く腐りきった君主は、今ここに死んだ。
私が掲げるのは、力だ。
何も知らずに腕を振りかざし、無秩序に何もかも奪い去ってゆく人類に鉄槌を下す。
自らが上だと胡坐をかいた連中に、裁きを下す。
孤独なる同胞たちよ、私の元へ集え!
悲しみに暮れる日はもう来ない。
すべてに怯える日はもう来ない。
私達の手で、私達だけの未来を作る。
だから、告げる。】
「第四ゲートが、落ちた。」
「…!」
【世界を、壊せ。】
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