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始まりの日

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高校に入学してからもう二回目の春、始業式もクラス分けもホームルームも何事も無く誰とも話す事もなく終わった。

 僕、鷹宮たかみや 辰巳たつみには友達がいない、いた事がない。

 僕は孤児院育ちだ。と言っても今はもう誰も居ない、孤児院は昔この地域ではかなりの富豪で有名な爺さんが運営しているものだった。僕は赤子の時に引き取られ物心ついた時には皆巣立った後で僕は自然と最年長になった。それから何年か経ち子供達が増えた、といっても5人ほどだ。

 そして僕が、中学に入る頃爺さんが亡くなった。

 爺さんは莫大な遺産や屋敷、孤児院などの土地を僕に相続していた。そのおかげで孤児院は存続できていたが爺さんの親族の人達には疎まれ嫌がらせで今までいたお手伝いさん達は皆いなくなった。

 それから大変な日々が始まった。

 幸い僕は幼稚園、小学校の頃から終わったら直ぐに帰り子供達の相手をしていた事もありお手伝いさん達よりも大変慕われていた。この子たちにはもう僕しかいない、僕がやるしかない。

 莫大な遺産があったから維持費などもろもろは問題無かったが今まではお手伝いさんがやっていた炊事や洗濯などが一気に増えた、正直高校に進学するつもりは無かったが流石に高校は出とくべきかと思い進学を決めた。中学を卒業する頃には皆里親にでたり負担を気にして奨学金で全寮制に進学したりで後は3歳の子1人になった。
 そしてその子も僕が高校1年生の夏居なくなり孤児院は閉園した。

 そんな紆余曲折あり僕には友達を作る暇が無かった、恋人を作る暇なんてもっと無かった。

 2年生2日目、僕は現在前髪は目が隠れるくらいで後ろは結んで襟首にしまって隠しているが伸ばせば腰に届くぐらい長く
 孤児院をしていた時からの髪を伸ばす癖があり見た目は根暗そのものだ。

 このクラスにはかなりの人気を誇る生徒がいる、ちょうど僕の席(窓際)から横3列後ろ2列の席で友達と談笑している子だ、鈴宮すずみや  玲香れいか髪は長く腰ほどで明るい色にウェーブがかかっていて今時のオシャレな女子高生といった感じで目もパッチリで容姿も整っていてちょっと派手っぽい外見の美人、成績優秀で帰宅部だが運動も抜群らしい。喋った事無いので性格まではわからないが。

 そんな中物理の教師が来た。

「日直の人ー!集められたノートは放課後物理室の机に提出しておいてくれ。今日の日直は…玲香か、女子1人じゃ大変だろうし、そうだなぁ…そこで暇そうにしてる鷹宮手伝ってあげてくれ」

 何もせずボーっとしていたら目を付けられてしまったらしい。

「わかりました。」
「は~い」

 こんな些細な繋がりから彼女と過ごし僕の日常が大きく変わるなど思いもしなかった。
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