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第一話・祇園花街・化粧を落とせない舞妓(四)
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夜も更け、客はすべて帰っていった。
西木屋の灯りは、ひとつ、またひとつと落とされ、奥へ続く廊下だけが、細い光の川のように残っている。畳はきれいに掃き清められ、卓は壁際に重ねられ、床は本来の静けさを取り戻した。
化粧部屋の入口で、綾女はしばし足を止める。
すでに店用の着物は脱ぎ、簡素な部屋着に着替えていた。帯も少しゆるめに締め、さっきまで客の前でまとっていた「役柄」を、一枚だけ脱ぎ捨てた姿。
暖簾をめくって中を覗く。
「小春」
柔らかく名を呼ぶ。
「お化粧さん、先に上がらはったよ。ひとりで大丈夫か?」
「大丈夫どす、綾女さん」
中から返る声は、少し疲れが滲んでいたが、はっきりしていた。
「もうすぐ終わりますさかい」
「ほな、ほかの灯り、消してくるえ」
綾女は、言いかけて、ふと付け加える。
「……なんか変やったら、すぐ呼びや」
「はい」
暖簾が降り、化粧部屋にはひとつだけ天井灯が残った。
小春は鏡の前に座り、髪に挿した簪を一本ずつ抜いていく。簪が抜かれるたびに、きっちりと固められていた黒髪が、少しずつほどけ、最後には一気に肩へとほどけ落ちる。張り詰めていた糸が、ようやく緩んだような感覚。
タオルを取り、卸し液を染み込ませ、額から頬へ、ゆっくりと拭っていく。白粉が水盆の中に溶け出し、淡い白色の渦を描く。小春は、しばらくその渦を見つめていた。鏡を見る勇気は、まだ出ない。
そのとき、廊下から、軽い足音が近づいてきた。
板張りを踏む音は、不思議なほど一定で、きちんとしたリズムを刻んでいる。店の人間なら、もう少し音を殺す。それとも――と、小春が振り返ると、暖簾が少しだけめくられた。
「手ぇ、借りたいんやけど」
顔を出した綾女が、少し笑って言う。
「――この人の」
暖簾の影から、もうひとりの影が現れる。
「こんばんは、小春さん」
劉立澄は、さっきと同じコート姿のまま、少しだけ襟元をゆるめていた。第一ボタンを外したシャツのせいで、先ほどよりも幾分くだけて見える。
「化粧を落とすのが、難儀やと聞いた」
小春は固まった。
「お店の人に、迷惑かけてしまって……」
とっさに出たのは、やはり謝罪だった。
「迷惑かけてるんは、あんたやない」
劉立澄は、鏡のすぐ後ろに、静かに腰を下ろした。
「……この町のほうや」
そう言って、袖から小さな黄紙の束を取り出す。
細い指先が、紙の上をなぞる。薄く描かれた線が、わずかに光を帯びて浮かび上がり、すぐに沈む。
「それ、なんですか」
小春は、不安と好奇心の入り混じった目で、彼の手元を見つめる。
「照明や」
彼は簡潔に答え、紙を鏡枠の一角に貼りつけた。
「――これから、暗がりに潜んでるもんを見るからな」
小春は、意味を理解しきれないまま、喉の奥が少し冷たくなるのを感じた。
「初めて舞妓の白塗りをした日のこと、覚えてるか」
彼は、話題を変えるように、ふいに尋ねた。
「そのとき、どんな気分やった?」
「……嬉しかったに、決まってます」
条件反射で、そう答える。
「舞妓の着物着られるなんて、うちには夢みたいなことで……」
「嬉しさ、何色やった?」
「色……?」
「金やと言う奴もおる。桃色やと言う奴もおる。光そのものやと言う奴もおる」
劉立澄は、淡々と続ける。
「あんたには、何色に見えた?」
熱気と、眩しさと――恐怖。
その日、灯りは今日よりも強く、部屋はひどく暑かった。粉を叩かれるたびに、息苦しさが増した。鏡の中で、ただの少女が、「祇園の舞妓」に変わっていく。最初は目が眩んだ。でも、その眩しさの奥からすぐに浮かび上がってきたのは、「自分は、この顔にふさわしいのか」という怯えだった。
「……白、やと思います」
小春は、ゆっくりと言う。
「雪みたいな、冷たい白」
「じゃあ今は?」
彼は重ねて尋ねる。
「毎日その顔を塗るとき、心ん中で見えてる色は?」
小春は、ようやく鏡を見た。
鏡の中では、現実の自分と、化粧のままの自分が、わずかなズレをもって重なっている。現実の顔は、もうだいぶ素肌に近い。鏡の中の顔は、まだ一枚の完璧な仮面のまま。灯りを受けて光る白さが、周囲のすべてを押しのけるほど強い。
「……石畳の色、かもしれません」
喉の奥が、きゅっと締まった。
「何度も踏まれた石。雨が降ったら、少しだけ光るけど、冷たくて、硬くて。みんな、自分が滑らへんことだけ考えてて、石のことなんか誰も気にしてへん、あの感じ」
そう言って、自分で苦笑する。
「色としては、あんまり綺麗やないですけど」
「十分や」
劉立澄はうなずく。
「まだ、自分がどこを歩いてるか、見えてる証拠や」
彼は立ち上がり,鏡の正面に回り込んだ。
「……見えるか」
貼り付けた符から、淡い金色の光がじわりと広がり、鏡全体を、うっすら照らし出した。
その光の中で、鏡の中の「舞妓小春」が、よりはっきりと姿を現す。
そして、その「彼女」が――先に動いた。
小春が笑おうとするより、ほんのわずか早く。
首が傾き、唇が綺麗な弧を描く。
自分より先に、「理想の自分」が笑っている。
「化粧が落ちへんのと違う」
劉立澄の声が、静かに落ちる。
「そこに居座りたい顔がおるだけや」
鏡の中の「舞妓」は、ゆっくりと視線を彼に向けた。
笑みは、型通りでありながら、どこか挑むようでもある。
「お客様」
その声は、小春の声と寸分違わぬはずなのに、どこか落ち着きすぎている。
「女の子が化粧落としてるところへ、そんなふうに踏み込むのは、あまりお行儀ようおまへんよ」
小春は、心臓をぎゅっとつかまれたような感覚に襲われた。
――自分は、今、喋っていない。
「……お前が、その顔か」
劉立澄は、鏡の中の「彼女」を見据える。
「小春はよう演じてる。けど、お前のほうが、もっと手慣れてるな」
鏡の中の舞妓は、ふわりと笑った。
「わたしは、ただ『すべきこと』をしているだけどす」
その声音は、ひどく穏やかだった。
「祇園では、お座敷で見せる笑い方、声の高さ、言葉の選び方――ぜんぶ決まってます。お客さんが求めてはるのは、こういう顔、こういう姿勢、こういう甘え方、こういう物分かりのよさ。……それは、彼女自身が望んだことでしょう?」
「違う……」
小春は、かすれた声で否定しようとした。
だが、その声は、鏡の中の「彼女」の言葉に、簡単にかき消された。
「彼女は、ここに残りたいんです」
残形の舞妓は、静かに続ける。
「『将来の花や』『期待してるで』って言ってもらえる立場を、手放したくない。忘れられるのも、見捨てられるのも怖い。……だから、わたしが代わりに引き受けたんですよ」
笑みが、すこし深くなる。
「お客さんの好みを全部覚えて、笑顔を一つも外さないようにして、この子の体を、みんなの理想の形に馴染ませてあげた。彼女は、ただ、わたしに任せておけばいい。何も感じず、失敗もせず、嫌われもしない」
西木屋の灯りは、ひとつ、またひとつと落とされ、奥へ続く廊下だけが、細い光の川のように残っている。畳はきれいに掃き清められ、卓は壁際に重ねられ、床は本来の静けさを取り戻した。
化粧部屋の入口で、綾女はしばし足を止める。
すでに店用の着物は脱ぎ、簡素な部屋着に着替えていた。帯も少しゆるめに締め、さっきまで客の前でまとっていた「役柄」を、一枚だけ脱ぎ捨てた姿。
暖簾をめくって中を覗く。
「小春」
柔らかく名を呼ぶ。
「お化粧さん、先に上がらはったよ。ひとりで大丈夫か?」
「大丈夫どす、綾女さん」
中から返る声は、少し疲れが滲んでいたが、はっきりしていた。
「もうすぐ終わりますさかい」
「ほな、ほかの灯り、消してくるえ」
綾女は、言いかけて、ふと付け加える。
「……なんか変やったら、すぐ呼びや」
「はい」
暖簾が降り、化粧部屋にはひとつだけ天井灯が残った。
小春は鏡の前に座り、髪に挿した簪を一本ずつ抜いていく。簪が抜かれるたびに、きっちりと固められていた黒髪が、少しずつほどけ、最後には一気に肩へとほどけ落ちる。張り詰めていた糸が、ようやく緩んだような感覚。
タオルを取り、卸し液を染み込ませ、額から頬へ、ゆっくりと拭っていく。白粉が水盆の中に溶け出し、淡い白色の渦を描く。小春は、しばらくその渦を見つめていた。鏡を見る勇気は、まだ出ない。
そのとき、廊下から、軽い足音が近づいてきた。
板張りを踏む音は、不思議なほど一定で、きちんとしたリズムを刻んでいる。店の人間なら、もう少し音を殺す。それとも――と、小春が振り返ると、暖簾が少しだけめくられた。
「手ぇ、借りたいんやけど」
顔を出した綾女が、少し笑って言う。
「――この人の」
暖簾の影から、もうひとりの影が現れる。
「こんばんは、小春さん」
劉立澄は、さっきと同じコート姿のまま、少しだけ襟元をゆるめていた。第一ボタンを外したシャツのせいで、先ほどよりも幾分くだけて見える。
「化粧を落とすのが、難儀やと聞いた」
小春は固まった。
「お店の人に、迷惑かけてしまって……」
とっさに出たのは、やはり謝罪だった。
「迷惑かけてるんは、あんたやない」
劉立澄は、鏡のすぐ後ろに、静かに腰を下ろした。
「……この町のほうや」
そう言って、袖から小さな黄紙の束を取り出す。
細い指先が、紙の上をなぞる。薄く描かれた線が、わずかに光を帯びて浮かび上がり、すぐに沈む。
「それ、なんですか」
小春は、不安と好奇心の入り混じった目で、彼の手元を見つめる。
「照明や」
彼は簡潔に答え、紙を鏡枠の一角に貼りつけた。
「――これから、暗がりに潜んでるもんを見るからな」
小春は、意味を理解しきれないまま、喉の奥が少し冷たくなるのを感じた。
「初めて舞妓の白塗りをした日のこと、覚えてるか」
彼は、話題を変えるように、ふいに尋ねた。
「そのとき、どんな気分やった?」
「……嬉しかったに、決まってます」
条件反射で、そう答える。
「舞妓の着物着られるなんて、うちには夢みたいなことで……」
「嬉しさ、何色やった?」
「色……?」
「金やと言う奴もおる。桃色やと言う奴もおる。光そのものやと言う奴もおる」
劉立澄は、淡々と続ける。
「あんたには、何色に見えた?」
熱気と、眩しさと――恐怖。
その日、灯りは今日よりも強く、部屋はひどく暑かった。粉を叩かれるたびに、息苦しさが増した。鏡の中で、ただの少女が、「祇園の舞妓」に変わっていく。最初は目が眩んだ。でも、その眩しさの奥からすぐに浮かび上がってきたのは、「自分は、この顔にふさわしいのか」という怯えだった。
「……白、やと思います」
小春は、ゆっくりと言う。
「雪みたいな、冷たい白」
「じゃあ今は?」
彼は重ねて尋ねる。
「毎日その顔を塗るとき、心ん中で見えてる色は?」
小春は、ようやく鏡を見た。
鏡の中では、現実の自分と、化粧のままの自分が、わずかなズレをもって重なっている。現実の顔は、もうだいぶ素肌に近い。鏡の中の顔は、まだ一枚の完璧な仮面のまま。灯りを受けて光る白さが、周囲のすべてを押しのけるほど強い。
「……石畳の色、かもしれません」
喉の奥が、きゅっと締まった。
「何度も踏まれた石。雨が降ったら、少しだけ光るけど、冷たくて、硬くて。みんな、自分が滑らへんことだけ考えてて、石のことなんか誰も気にしてへん、あの感じ」
そう言って、自分で苦笑する。
「色としては、あんまり綺麗やないですけど」
「十分や」
劉立澄はうなずく。
「まだ、自分がどこを歩いてるか、見えてる証拠や」
彼は立ち上がり,鏡の正面に回り込んだ。
「……見えるか」
貼り付けた符から、淡い金色の光がじわりと広がり、鏡全体を、うっすら照らし出した。
その光の中で、鏡の中の「舞妓小春」が、よりはっきりと姿を現す。
そして、その「彼女」が――先に動いた。
小春が笑おうとするより、ほんのわずか早く。
首が傾き、唇が綺麗な弧を描く。
自分より先に、「理想の自分」が笑っている。
「化粧が落ちへんのと違う」
劉立澄の声が、静かに落ちる。
「そこに居座りたい顔がおるだけや」
鏡の中の「舞妓」は、ゆっくりと視線を彼に向けた。
笑みは、型通りでありながら、どこか挑むようでもある。
「お客様」
その声は、小春の声と寸分違わぬはずなのに、どこか落ち着きすぎている。
「女の子が化粧落としてるところへ、そんなふうに踏み込むのは、あまりお行儀ようおまへんよ」
小春は、心臓をぎゅっとつかまれたような感覚に襲われた。
――自分は、今、喋っていない。
「……お前が、その顔か」
劉立澄は、鏡の中の「彼女」を見据える。
「小春はよう演じてる。けど、お前のほうが、もっと手慣れてるな」
鏡の中の舞妓は、ふわりと笑った。
「わたしは、ただ『すべきこと』をしているだけどす」
その声音は、ひどく穏やかだった。
「祇園では、お座敷で見せる笑い方、声の高さ、言葉の選び方――ぜんぶ決まってます。お客さんが求めてはるのは、こういう顔、こういう姿勢、こういう甘え方、こういう物分かりのよさ。……それは、彼女自身が望んだことでしょう?」
「違う……」
小春は、かすれた声で否定しようとした。
だが、その声は、鏡の中の「彼女」の言葉に、簡単にかき消された。
「彼女は、ここに残りたいんです」
残形の舞妓は、静かに続ける。
「『将来の花や』『期待してるで』って言ってもらえる立場を、手放したくない。忘れられるのも、見捨てられるのも怖い。……だから、わたしが代わりに引き受けたんですよ」
笑みが、すこし深くなる。
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