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21.冒険者ギルドに登録!

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 思った通りそこは宿屋も兼ねていた。競合しないようになのだろう、何軒か隔てて三軒の宿屋兼食事処がある。ミンメイの村には宿屋と呼べるものが一軒しかない(そうミンメイが言っていた)ことから、このチュワン村というところはやはりそれなりに規模があるのだろうと俺は思った。
 日替わり定食のようなものがあるというので頼んだら、肉とナス、じゃがいもとピーマンを炒めた皿とスープ、日本昔ばなしに出てきたようなめいっぱい盛られたごはん、そして生野菜のてんこ盛りが出てきた。この生野菜以外は中華料理のようなメニューである。やっぱりこの異世界は中華っぽい世界のようだった。
 本当は一人部屋を二つ、と思ったがミンメイにもったいないと怒られて二人部屋になった。ロリコンではないが俺は一応男である。いいのだろうか。宿屋のおかみさんに鳥を三羽とも渡したらとても喜ばれた。

「この鳥はめったにとれないんだよ!」

 ミンメイが言っていた通りなかなかとれないものらしい。石投げたら簡単に落ちてきたんだけどな。宿屋のおかみさんはよっぽどその鳥が好きだったのか、宿代はただになった。ありがたいことである。
 腹ごしらえをし、冒険者ギルドがどこかを聞いてまずはそっちに行ってみることにした。宿の部屋に入れるのはもう少し後らしい。掃除だのいろいろとやることがあるのだろう。

「タツキさんは何の用事で冒険者ゴンフイに行きたいんですか?」

 ミンメイが不思議そうな顔をして聞いてきた。冒険者ギルドといえば登録に決まっているじゃないか。ただ俺の能力は微妙すぎて何ができるとも言いがたいが。
 情けない話ではあるが現実を知るのも大事だ。

「いや、どういうところなのか興味があってさ」
「そうなのですか」

 ミンメイはやっぱりよくわからないというような顔をしていた。すみません、こういうのはもう理屈じゃないんです。
 ギルドに向かう道すがら、またあのロホロホ鳥とかいうのがけっこう高いところを飛んでいるのを見かけた。石を二つ紐で繋げたものを持っていたので、狙いをつけて投げると簡単に鳥が落ちてきた。なんでこんなに簡単にとれるのにみんなとらないんだろうな。内心首を傾げながら、俺は鳥を持ったままギルドに向かった。
 ギルドは村の真ん中らへんにあった。可もなく不可もなくという佇まいの建物である。どこもそうだが木でできていて、日本とも中国ともとれるような建築物だらけだった。ギルドの扉は観音開きで、他の建物よりは少し重厚そうに見える。少し気後れしながらもここで遠慮しては始まらないと扉を開けると、中にいた人々の視線がいっせいに向けられた。
 なんかこわい。

〈なんじゃ、怖気づいたのか〉
〈いやいやいやいや〉

 そそそんなわけない。ないったらない。
 背中の籠に乗っている猫紙が俺の肩に前足を乗せてギルドの中を見回した。するとカウンターではないところに腰掛けている者たちの目がふいとそらされた。意を決して中へ足を踏み入れる。その後をミンメイが続いた。カウンターにいる女性に声をかけられる。

「今日はどのようなご用事でしょうか」
「ええと、冒険者に登録することってできますか? あと、これ……」
「まぁ! ロホロホ鳥じゃありませんか。買い取り、ということでよろしいですか?」
「はい」

 女性の剣幕に押され、俺はミンメイを見やる。ミンメイは猫紙というより俺を見て目をきらきらさせた。なんつーかミンメイはチョロインかもしれないと少し心配になった。

「タツキさんが冒険者になられるのなら私も……」
「無理はしなくていいよ。俺は冒険者ってものになってみたいだけだし」
「登録は10歳以上ならどなたでもできますよ」

 カウンターの女性の声にミンメイは頷いた。

「私も、冒険者になってみたいです」
「承知しました」

 登録にはゴンフイカードを作り、そこに情報が書かれるらしい。もちろん登録にはお金がかかるが、宿代が一泊分チャラになったことで問題はなかった。ランクは零から六までで、六が一番下だという。ランクを上げるには一定数の依頼を受ける必要があり、登録してから一年以内に上げられるランクは四までで、それ以上に上がるには試験のようなものもあるという。
 登録自体は簡単だった。出身地と名前、年齢だけでゴンフイカードが作られた。一番上の右側にランクが刻印されている。ちなみに俺が十九歳だと知ってミンメイは目を丸くした。

「もっと年いってるかと思った?」
「あ、はい。その、ヒゲが……」

 そういえばヒゲもろくに剃っていなかったからそれなりに老けて見えたのかもしれなかった。

「カミソリとかあんのかな」

 肌を傷つけないようなカミソリはなさそうな気がする。そんなことを思いながら依頼が張ってある掲示板を見眺める。俺には読めないので猫紙に頼み、心の中で教えてもらった。さすがに俺たちが受けられそうな依頼はなかった。薬草の採取のような依頼が端っこにあるのがかろうじて受けられそうなものである。

〈薬草か。俺植物見分けるの苦手なんだよなぁ〉
〈その薬草ならこの籠の中に入っとるじゃろう〉
「あったっけ」

 俺は籠を下ろし、猫紙に下りてもらうと籠の中を漁った。それと同時にアイテムボックスの中もこっそり探す。そういえば森で面白がっていろいろな植物を採取していたのだった。

「すいません、薬草だけ渡せば依頼完了とかになります?」

 カウンターの女性に尋ねるとにっこりと微笑まれた。

「狩人の方だったのですね。ありがとうございます、助かります」

 鳥と薬草でかえって懐が潤った俺たちはそのまま村の中を歩くことにした。気分は上々である。
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