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53.ピー太、いろいろと暗躍す
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「でっかい生き物の姿ってあるかな?」
鷹匠のトビー、ユーリ、そしてオレサマが共にいた時、リョウカンから声をかけられた。
「もしかして……イノシシとか、クマですか?」
トビーがおそるおそる聞き返した。
「うん、畑に出たみたいなんだよねー。明日からサバイバル大会だから、最中に出てこられても困るなーって」
「そうですね。見かけたら誘導してみましょうか。向こうの方にでも」
「頼むよ」
ユーリはトビーの合図を聞き、イノシシやクマなどが出るようなら遠くへ誘導することになったらしい。しかしクマはともかくイノシシは意外と厄介だということをオレサマは知っている。
あれは誘導したところでそちらへ向かうというものでもない。エサが多い方へ向かうのだ。逆にでっかくて黒いクマの方が慎重であったりする。木登りができるのはかなり厄介ではあるのだが。
そんなわけでサバイバル大会当日、トモノリたちが見回りに来た後で山全体を見回ることにしたのだった。それにはユーリが付いてきて、一緒に風にうまく乗ったりした。これはなかなか気持ちがいい。いきなり強い風が吹いたりしなければ最高である。
そうして飛んでいるうちに、茶色い影を見かけた。
ユーリに合図をして近づく。それがいけなかったのかもしれない。
イノシシはユーリの姿を見て興奮したようだった。しきりに土を掻くような仕草をし、これはまずいと思った途端ユーリに向かって突進した。
驚いたのはユーリである。
ユーリはタカである。
自分から追い回すというようなことはあっても追い回されるという経験はなかったらしい。見事にパニックを起こした。
キーヤァーッ、キーヤァーッ! という高い声を上げながらユーリは何故か低空を飛んだ。そのせいかイノシシがいつまでも追いかけるのを止めない。これはまずいと追いかけたが、ユーリはパニックのあまり若い人間たちがいる方向にイノシシを誘導してしまった。
失敗である。
幸い若い人間たちはすぐに逃げ出したのでイノシシにぶつかるようなことはなかった。
オレサマはどうにかスピードを上げ、ユーリに木にぶつかる直前までスピードを上げるよう伝えた。しっかり伝えられたかどうかは定かではなかったが、ユーリはそのまま低空で飛び続け、太い木に向かって飛び、その直前で方向を変えた。
ゴーンッ! という派手な音と共に、どうにかイノシシの足を止めることに成功した。
どうにかなってよかったが、途中でトモノリを見かけたような気がしたな。
あれは気のせいだろうか。
ユーリとイノシシの頭上の木に留まり、よくやったとねぎらった。
ユーリはパニックを起こしたことを悔いているようだった。
慣れてないのだからしかたないだろう。まずイノシシに追い回されるなんて経験はしないものだ。
しばらくして、リョウカンと人間たちがやってきた。彼らは若くはない。
「やあ、ピー太君、ユーリ君。これは君たちがやったのかな?」
やったと言われればそうかもしれないがイノシシは勝手にぶつかっただけである。オレサマとユーリはツーンとそっぽを向いた。
「……偶然かな? それならいいけど、今度は間違っても誘導してこないでね~」
しっかりバレている。リョウカンはいったい何者なのであろうか。
「理事長、いいんですか?」
「鳥に説教したってしょうがないでしょ。実害があったら困るけど、なかったんだし」
「ですがまた保護者から苦情があるのでは?」
「それで学校を辞めるならかまわないよ~。残念だけどね」
リョウカンはにこにこしながら言う。
「さーて、せっかくだから解体作業しよっか」
周りの人間が嫌そうな顔をした。
オレサマはトモノリを迎える為、校舎の側の木へと移動する。ユーリは人が住んでいる建物の方へ飛んでいった。
トモノリが出てくるまで、適当に草などをつついたりしていた。山の中は食べ物が豊富だからいい。
そういえばピーコ、ピコー、ピースケはどこかの家から出てしまったらしく、帰り道がわからずにこの山へ辿り着いた。おそらく彼らは下の町に住んでいたのだろう。
今は自力でエサも取れる。ピコーなどはあれもこれもと食べすぎて丸くなっている始末だ。飛べなくなるほど食べるのはいただけない。
そんなことを考えていると、校舎の出入り口からざわざわと若い人間たちが出てきた。
ある程度経ってからトモノリが出てきたので、喜んでその頭に留まった。
「ピータッ! トモーノリー!」
オレサマの大事なトモノリは無事であった。
内心ほっとした。
トモノリはオレサマがイノシシを追っていたのを気づいていたらしい。正直に答えるわけにもいかないのでごまかした。
トモノリは苦笑していた。
そうしてまたテスト期間とかいうのがあり、トモノリがあまりかまってくれなくなった。
しかしテストというものをどうにか倒さないとオレサマと一緒にいられないという。人間というのは難しいものである。
カケスたちがドングリを沢山拾って小屋にこれでもかと詰め込んでいた。
もうすぐ寒い季節がやってくるのだということを、木々の葉が色を変えることで気づく。
今年の寒い季節も白いものが降るのだろうか。
あれはとても冷たいからあまり降らないでほしい。
だが、トモノリたちがいればもう少し楽しく過ごせるだろうと思ったのだった。
ーーーーー
真相はこんなんだった。
鷹匠のトビー、ユーリ、そしてオレサマが共にいた時、リョウカンから声をかけられた。
「もしかして……イノシシとか、クマですか?」
トビーがおそるおそる聞き返した。
「うん、畑に出たみたいなんだよねー。明日からサバイバル大会だから、最中に出てこられても困るなーって」
「そうですね。見かけたら誘導してみましょうか。向こうの方にでも」
「頼むよ」
ユーリはトビーの合図を聞き、イノシシやクマなどが出るようなら遠くへ誘導することになったらしい。しかしクマはともかくイノシシは意外と厄介だということをオレサマは知っている。
あれは誘導したところでそちらへ向かうというものでもない。エサが多い方へ向かうのだ。逆にでっかくて黒いクマの方が慎重であったりする。木登りができるのはかなり厄介ではあるのだが。
そんなわけでサバイバル大会当日、トモノリたちが見回りに来た後で山全体を見回ることにしたのだった。それにはユーリが付いてきて、一緒に風にうまく乗ったりした。これはなかなか気持ちがいい。いきなり強い風が吹いたりしなければ最高である。
そうして飛んでいるうちに、茶色い影を見かけた。
ユーリに合図をして近づく。それがいけなかったのかもしれない。
イノシシはユーリの姿を見て興奮したようだった。しきりに土を掻くような仕草をし、これはまずいと思った途端ユーリに向かって突進した。
驚いたのはユーリである。
ユーリはタカである。
自分から追い回すというようなことはあっても追い回されるという経験はなかったらしい。見事にパニックを起こした。
キーヤァーッ、キーヤァーッ! という高い声を上げながらユーリは何故か低空を飛んだ。そのせいかイノシシがいつまでも追いかけるのを止めない。これはまずいと追いかけたが、ユーリはパニックのあまり若い人間たちがいる方向にイノシシを誘導してしまった。
失敗である。
幸い若い人間たちはすぐに逃げ出したのでイノシシにぶつかるようなことはなかった。
オレサマはどうにかスピードを上げ、ユーリに木にぶつかる直前までスピードを上げるよう伝えた。しっかり伝えられたかどうかは定かではなかったが、ユーリはそのまま低空で飛び続け、太い木に向かって飛び、その直前で方向を変えた。
ゴーンッ! という派手な音と共に、どうにかイノシシの足を止めることに成功した。
どうにかなってよかったが、途中でトモノリを見かけたような気がしたな。
あれは気のせいだろうか。
ユーリとイノシシの頭上の木に留まり、よくやったとねぎらった。
ユーリはパニックを起こしたことを悔いているようだった。
慣れてないのだからしかたないだろう。まずイノシシに追い回されるなんて経験はしないものだ。
しばらくして、リョウカンと人間たちがやってきた。彼らは若くはない。
「やあ、ピー太君、ユーリ君。これは君たちがやったのかな?」
やったと言われればそうかもしれないがイノシシは勝手にぶつかっただけである。オレサマとユーリはツーンとそっぽを向いた。
「……偶然かな? それならいいけど、今度は間違っても誘導してこないでね~」
しっかりバレている。リョウカンはいったい何者なのであろうか。
「理事長、いいんですか?」
「鳥に説教したってしょうがないでしょ。実害があったら困るけど、なかったんだし」
「ですがまた保護者から苦情があるのでは?」
「それで学校を辞めるならかまわないよ~。残念だけどね」
リョウカンはにこにこしながら言う。
「さーて、せっかくだから解体作業しよっか」
周りの人間が嫌そうな顔をした。
オレサマはトモノリを迎える為、校舎の側の木へと移動する。ユーリは人が住んでいる建物の方へ飛んでいった。
トモノリが出てくるまで、適当に草などをつついたりしていた。山の中は食べ物が豊富だからいい。
そういえばピーコ、ピコー、ピースケはどこかの家から出てしまったらしく、帰り道がわからずにこの山へ辿り着いた。おそらく彼らは下の町に住んでいたのだろう。
今は自力でエサも取れる。ピコーなどはあれもこれもと食べすぎて丸くなっている始末だ。飛べなくなるほど食べるのはいただけない。
そんなことを考えていると、校舎の出入り口からざわざわと若い人間たちが出てきた。
ある程度経ってからトモノリが出てきたので、喜んでその頭に留まった。
「ピータッ! トモーノリー!」
オレサマの大事なトモノリは無事であった。
内心ほっとした。
トモノリはオレサマがイノシシを追っていたのを気づいていたらしい。正直に答えるわけにもいかないのでごまかした。
トモノリは苦笑していた。
そうしてまたテスト期間とかいうのがあり、トモノリがあまりかまってくれなくなった。
しかしテストというものをどうにか倒さないとオレサマと一緒にいられないという。人間というのは難しいものである。
カケスたちがドングリを沢山拾って小屋にこれでもかと詰め込んでいた。
もうすぐ寒い季節がやってくるのだということを、木々の葉が色を変えることで気づく。
今年の寒い季節も白いものが降るのだろうか。
あれはとても冷たいからあまり降らないでほしい。
だが、トモノリたちがいればもう少し楽しく過ごせるだろうと思ったのだった。
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真相はこんなんだった。
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