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55.智紀、ピー太の写真を撮ってみる
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厳密に言うと、文化祭というものはないらしい。
しかし部活の発表会的な物はあるのだそうだ。
「うええ?」
なんだそれ? と年間予定表を確認しながらつい声が出た。つーか、確認するのが遅すぎである。
「これ、うちの部もやらなきゃいけないってことか?」
「そうなんじゃない?」
稲村が首を傾げた。なんだそのあざとい仕草は。稲村が部屋に来てしばらくもしないうちにピー太、ピーコ、ピコーが部屋まで飛んできた。その三羽も稲村と同じように机の上で首をコキャッと傾げているのだからかわいくてしょうがない。
「かわいいー!」
稲村がスマホをかまえたら三羽ともそっぽを向いたのが面白かった。
「こーゆーのってうまく撮れないものだよねー。いーや、適当に撮っちゃえー」
稲村が嬉しそうにピー太たちをパシャパシャ撮っていた。フラッシュはたかないで。そういうのが大事なんだと思う。
最初ピー太たちは何の音? みたいな顔をしていたが、そのうち稲村のスマホに近づいたりして興味を示した。俺も負けじとスマホをかまえ、撮影会になったりした。
村西はって? 村西もこっそりピコーを撮っているのは確認した。かわいいもんなー。
三羽が出て行ってから写真を確認した。
「写真だとうまくいかないねー。こんなにかわいいのに!」
「だなー。けっこうブレる……」
5,6枚に一枚の割合でよさげな写真が撮れる程度だ。でもこれではピー太の魅力は伝えきれない。
そういえば写真部ってあったなと思い出した。
「写真部に入ってる奴っていたっけ?」
「あ、教えてもらうー?」
部員名簿みたいなのはないが、もしかしたら教えてもらえるかもしれないと思い、嵐山さんのところへ向かった。
「写真部? 今年の一年で入ってる子いたかなー?」
そう言いながら嵐山さんは調べてくれた。
「君たちのクラスに一人いるね」
「え? 誰ですかー?」
「宮田君て知ってる?」
「宮田……」
とっさに顔が出てこない。二学期だっていうのに俺は人の顔と名前を一致させるのが苦手だった。
「宮田君て、背が高かったかもー」
また背の高い奴か!
「明日声かけてみよっか」
「ああ……」
気は進まなかったが、稲村が気にしないみたいなので声だけかけてみよう。
「嵐山さん、ありがとうございましたー」
「でもなんで写真部?」
「ピーコの写真がうまく撮れないので」
「ああ、それなら確かに写真部の子に聞くのが一番だね」
嵐山さんはそう言ってにっこり笑った。
で、翌日である。
「インコの写真をうまく撮りたい?」
「うん、宮田君て写真部なんだよね? キレイに撮る方法とか知らないかなーって思って」
稲村が人懐っこく聞いた。
宮田は確かに背が高かった。うちの先輩たちと被るぐらいひょろ長い印象だが、うちの先輩たちよりは身体もしっかりしているように見えた。
くそう、何を食ったらこんなにでかくなるんだよー。
「うーん、動く被写体は難しいから俺はあんまり撮らないんだけど……それってさ」
「うん?」
「ちょっと先輩たちと相談してきていいか?」
「うん、いいよー」
なんか大事になってしまったかもしれない?
俺たちとしてはよりピー太たちを魅力的に撮りたかっただけなんだがなぁ。
ちょっとびくついていたら、どうやらそれは部活発表会の関係のことらしかった。ピー太たちを被写体にしてうまく撮れた物を展示したいという話だ。ユーリもできたら撮りたいというので、それは鷹匠の飛山さんに聞いてみるということになった。
生物管理部と写真部のコラボも楽しそうである。小屋とかも撮ってもらえると、こっちの活動も見えていいかもしれない。
いろいろ話をまとめ、数日後部活活動時にそのことについて先輩方も含めて相談した。
すでに生徒会役員を辞した藤沢先輩、河野先輩も一緒である。(引継ぎはするから生徒会室に顔を出すことはあるらしい。すでに投票は終わり、新しい生徒会は発足している)
「……それは」
「うん……」
「……いいんじゃないかな……」
ひょろ長先輩たち(金子、小原、益子)は頷いた。
「確かに写真を展示するというのはいい方法だ。作った物や活動内容などの展示もした方がいいだろう」
そう言ってメガネの真ん中をクイッと上げた藤沢先輩の方には、ピースケが留まっている。本当に仲良くなったんだなとほっこりした。
「活動内容の展示ですか……」
確かにあった方がいいけど、目を引くような物って用意できるだろうか。
「前に作った小屋ってもうバラして再利用しちゃったし……」
「そういうのも写真に撮っておくべきだったな」
「そうですね」
なんかもう夢中になってやってたから写真を撮るなんて頭もなかった。でも来年のアピールの為にも必要だよな。
嵐山さんは部屋の隅でにこにこしている。
そろそろ寒くなってきているし、電池式のインコ用の暖房みたいなものも用意した方がいいだろう。やることはいっぱいある。冬の間のエサの購入なんかもそうだし、雪が降ったらとか今から考えなければいけない。
そこらへんも含めてみなで話し合いを続けたのだった。
ーーーーーー
ライト文芸大賞応援ありがとうございました!
引き続き完結まで毎日更新の予定です。
これからもどうぞよろしくお願いします!
しかし部活の発表会的な物はあるのだそうだ。
「うええ?」
なんだそれ? と年間予定表を確認しながらつい声が出た。つーか、確認するのが遅すぎである。
「これ、うちの部もやらなきゃいけないってことか?」
「そうなんじゃない?」
稲村が首を傾げた。なんだそのあざとい仕草は。稲村が部屋に来てしばらくもしないうちにピー太、ピーコ、ピコーが部屋まで飛んできた。その三羽も稲村と同じように机の上で首をコキャッと傾げているのだからかわいくてしょうがない。
「かわいいー!」
稲村がスマホをかまえたら三羽ともそっぽを向いたのが面白かった。
「こーゆーのってうまく撮れないものだよねー。いーや、適当に撮っちゃえー」
稲村が嬉しそうにピー太たちをパシャパシャ撮っていた。フラッシュはたかないで。そういうのが大事なんだと思う。
最初ピー太たちは何の音? みたいな顔をしていたが、そのうち稲村のスマホに近づいたりして興味を示した。俺も負けじとスマホをかまえ、撮影会になったりした。
村西はって? 村西もこっそりピコーを撮っているのは確認した。かわいいもんなー。
三羽が出て行ってから写真を確認した。
「写真だとうまくいかないねー。こんなにかわいいのに!」
「だなー。けっこうブレる……」
5,6枚に一枚の割合でよさげな写真が撮れる程度だ。でもこれではピー太の魅力は伝えきれない。
そういえば写真部ってあったなと思い出した。
「写真部に入ってる奴っていたっけ?」
「あ、教えてもらうー?」
部員名簿みたいなのはないが、もしかしたら教えてもらえるかもしれないと思い、嵐山さんのところへ向かった。
「写真部? 今年の一年で入ってる子いたかなー?」
そう言いながら嵐山さんは調べてくれた。
「君たちのクラスに一人いるね」
「え? 誰ですかー?」
「宮田君て知ってる?」
「宮田……」
とっさに顔が出てこない。二学期だっていうのに俺は人の顔と名前を一致させるのが苦手だった。
「宮田君て、背が高かったかもー」
また背の高い奴か!
「明日声かけてみよっか」
「ああ……」
気は進まなかったが、稲村が気にしないみたいなので声だけかけてみよう。
「嵐山さん、ありがとうございましたー」
「でもなんで写真部?」
「ピーコの写真がうまく撮れないので」
「ああ、それなら確かに写真部の子に聞くのが一番だね」
嵐山さんはそう言ってにっこり笑った。
で、翌日である。
「インコの写真をうまく撮りたい?」
「うん、宮田君て写真部なんだよね? キレイに撮る方法とか知らないかなーって思って」
稲村が人懐っこく聞いた。
宮田は確かに背が高かった。うちの先輩たちと被るぐらいひょろ長い印象だが、うちの先輩たちよりは身体もしっかりしているように見えた。
くそう、何を食ったらこんなにでかくなるんだよー。
「うーん、動く被写体は難しいから俺はあんまり撮らないんだけど……それってさ」
「うん?」
「ちょっと先輩たちと相談してきていいか?」
「うん、いいよー」
なんか大事になってしまったかもしれない?
俺たちとしてはよりピー太たちを魅力的に撮りたかっただけなんだがなぁ。
ちょっとびくついていたら、どうやらそれは部活発表会の関係のことらしかった。ピー太たちを被写体にしてうまく撮れた物を展示したいという話だ。ユーリもできたら撮りたいというので、それは鷹匠の飛山さんに聞いてみるということになった。
生物管理部と写真部のコラボも楽しそうである。小屋とかも撮ってもらえると、こっちの活動も見えていいかもしれない。
いろいろ話をまとめ、数日後部活活動時にそのことについて先輩方も含めて相談した。
すでに生徒会役員を辞した藤沢先輩、河野先輩も一緒である。(引継ぎはするから生徒会室に顔を出すことはあるらしい。すでに投票は終わり、新しい生徒会は発足している)
「……それは」
「うん……」
「……いいんじゃないかな……」
ひょろ長先輩たち(金子、小原、益子)は頷いた。
「確かに写真を展示するというのはいい方法だ。作った物や活動内容などの展示もした方がいいだろう」
そう言ってメガネの真ん中をクイッと上げた藤沢先輩の方には、ピースケが留まっている。本当に仲良くなったんだなとほっこりした。
「活動内容の展示ですか……」
確かにあった方がいいけど、目を引くような物って用意できるだろうか。
「前に作った小屋ってもうバラして再利用しちゃったし……」
「そういうのも写真に撮っておくべきだったな」
「そうですね」
なんかもう夢中になってやってたから写真を撮るなんて頭もなかった。でも来年のアピールの為にも必要だよな。
嵐山さんは部屋の隅でにこにこしている。
そろそろ寒くなってきているし、電池式のインコ用の暖房みたいなものも用意した方がいいだろう。やることはいっぱいある。冬の間のエサの購入なんかもそうだし、雪が降ったらとか今から考えなければいけない。
そこらへんも含めてみなで話し合いを続けたのだった。
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