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二七、新来的侍女(新しい侍女)
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帰りの馬車の中で明玲はそっと息を吐いた。やっとこれで蘇王領へ帰れるとほっとしたのだ。
生まれてから一番長く暮らしていた後宮よりも、偉仁の館で暮らす日々がもう一番になっていた。
そうして偉仁に嫁ぐまで、変わらぬ日々が続くものと思っていたある日、曹家から侍女がやってきた。
そういえばそんな話をしていたかもしれない。紹介をされてやっと明玲は思い出した。
「曹梅花と申します。どうぞよろしくお願いします」
「確か成人していると伺ったけど、何か理由でもあるのかしら?」
「……はい。二年程前に母を亡くしまして、喪に服しておりました」
「そういうこと。じゃあ早ければ来年にはどこかへ嫁ぐかもしれないのね」
「はい。そう聞いております」
曹梅花と名乗った少女は明玲よりも年上らしい。趙山琴の質問にはきはきと答える声は、まるで鈴を転がすように心地いい響きを持っていた。梅花は明玲の従姉に当たるという。
「そうね……だったら明玲に仕えさせましょう。花嫁修業も兼ねて、一緒に授業を受けるといいわ。午後も一緒に私の部屋へいらっしゃい。どこへ出しても恥ずかしくないぐらい教育してあげるから」
「お心遣い本当にありがとうございます」
礼をするなどの所作もキレイで洗練されているように見えた。体格も似ていることから、いいお手本になりそうだと明玲は思う。ただ、ところどころほころびが見えるので、つい最近改めて身に着けたのかもしれない。一緒に学んでいければいいと、友達のようなものができたように明玲は思ったが、ことはそう簡単にはいかなかった。
一旦梅花を下げさせると、山琴は人の悪そうな笑みを浮かべた。
「曹梅花はなんとなく明玲に似ているわね。血は争えないというやつかしら」
「従姉、だからではないでしょうか」
「そうね。厄介ごとの匂いがぷんぷんするわ。いくら従姉とはいえ侍女なのだから、必要以上に仲良くならないようになさい」
「? はい、わかりました」
「偉仁のことだから、万が一ってことはないと思うけど……周梨」
山琴は明玲の侍女の周梨に声をかけた。
「はい」
「何かあればすぐに言いなさい」
「かしこまりました」
おそらく自分に関係することなのだろうが、明玲は自分が蚊帳の外に置かれているような気がした。
「今日は私の侍女たちと過ごさせるわ。明日からは周梨が教えるように」
「はい、承知しました」
明玲には特に言うこともないらしい。確かにあまり仲良くなるなと言われているのだからそれ以上言うこともないだろう。
でも、と明玲は思う。
少しぐらいなら、どのような暮らしをしていたのかなど尋ねてもいいのではないかと思う。
(そういうのもまずいかしら?)
さすがに判断ができないことは周梨に聞くつもりではいる。来年には偉仁に嫁ぐのだ。迷惑をかけるようなことをするわけにはいかない。
そして次の日の朝から、梅花が明玲に仕えることとなった。
食事は一緒にしないらしい。そこは周梨と同じで従業員の食堂に行って食べるようだ。いつも通り山琴や妾妃たちと朝食を取り部屋に戻ると、梅花がすでに控えていた。彼女は基本部屋付の侍女となるらしい。今まで一人だった侍女が二人に増えたことでなんとなく落ち着かない。けれど身分の高い女性というのは基本的に何人も側仕えを使っているらしいので、来年を見越してのことなのかもしれないと、明玲は好意的に考えることにした。
今日は四書のうちの論語の授業である。難しい話もあるし、とても納得のいかない文言もあるのだが生きていく上でのお手本のようなことが書いてあるので明玲は嫌いではなかった。
老師がまもなくおいでになると聞き、明玲は梅花も伴って立ち上がった。
生まれてから一番長く暮らしていた後宮よりも、偉仁の館で暮らす日々がもう一番になっていた。
そうして偉仁に嫁ぐまで、変わらぬ日々が続くものと思っていたある日、曹家から侍女がやってきた。
そういえばそんな話をしていたかもしれない。紹介をされてやっと明玲は思い出した。
「曹梅花と申します。どうぞよろしくお願いします」
「確か成人していると伺ったけど、何か理由でもあるのかしら?」
「……はい。二年程前に母を亡くしまして、喪に服しておりました」
「そういうこと。じゃあ早ければ来年にはどこかへ嫁ぐかもしれないのね」
「はい。そう聞いております」
曹梅花と名乗った少女は明玲よりも年上らしい。趙山琴の質問にはきはきと答える声は、まるで鈴を転がすように心地いい響きを持っていた。梅花は明玲の従姉に当たるという。
「そうね……だったら明玲に仕えさせましょう。花嫁修業も兼ねて、一緒に授業を受けるといいわ。午後も一緒に私の部屋へいらっしゃい。どこへ出しても恥ずかしくないぐらい教育してあげるから」
「お心遣い本当にありがとうございます」
礼をするなどの所作もキレイで洗練されているように見えた。体格も似ていることから、いいお手本になりそうだと明玲は思う。ただ、ところどころほころびが見えるので、つい最近改めて身に着けたのかもしれない。一緒に学んでいければいいと、友達のようなものができたように明玲は思ったが、ことはそう簡単にはいかなかった。
一旦梅花を下げさせると、山琴は人の悪そうな笑みを浮かべた。
「曹梅花はなんとなく明玲に似ているわね。血は争えないというやつかしら」
「従姉、だからではないでしょうか」
「そうね。厄介ごとの匂いがぷんぷんするわ。いくら従姉とはいえ侍女なのだから、必要以上に仲良くならないようになさい」
「? はい、わかりました」
「偉仁のことだから、万が一ってことはないと思うけど……周梨」
山琴は明玲の侍女の周梨に声をかけた。
「はい」
「何かあればすぐに言いなさい」
「かしこまりました」
おそらく自分に関係することなのだろうが、明玲は自分が蚊帳の外に置かれているような気がした。
「今日は私の侍女たちと過ごさせるわ。明日からは周梨が教えるように」
「はい、承知しました」
明玲には特に言うこともないらしい。確かにあまり仲良くなるなと言われているのだからそれ以上言うこともないだろう。
でも、と明玲は思う。
少しぐらいなら、どのような暮らしをしていたのかなど尋ねてもいいのではないかと思う。
(そういうのもまずいかしら?)
さすがに判断ができないことは周梨に聞くつもりではいる。来年には偉仁に嫁ぐのだ。迷惑をかけるようなことをするわけにはいかない。
そして次の日の朝から、梅花が明玲に仕えることとなった。
食事は一緒にしないらしい。そこは周梨と同じで従業員の食堂に行って食べるようだ。いつも通り山琴や妾妃たちと朝食を取り部屋に戻ると、梅花がすでに控えていた。彼女は基本部屋付の侍女となるらしい。今まで一人だった侍女が二人に増えたことでなんとなく落ち着かない。けれど身分の高い女性というのは基本的に何人も側仕えを使っているらしいので、来年を見越してのことなのかもしれないと、明玲は好意的に考えることにした。
今日は四書のうちの論語の授業である。難しい話もあるし、とても納得のいかない文言もあるのだが生きていく上でのお手本のようなことが書いてあるので明玲は嫌いではなかった。
老師がまもなくおいでになると聞き、明玲は梅花も伴って立ち上がった。
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