義兄皇子に囚われて溺愛されてます

浅葱

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五四、没有辦法(どうしようもない)

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 もろもろのことは済み、後は偉仁に嫁ぐ日を指折り数えていればいいだけだと思っていた。
 そんなある日、明玲は曹梅花の顔色がなんだかとても悪いことに気づいた。

梅花メイファ、どうしたの? まるで紙のように真っ白よ……」
「……え……?」

 梅花は呆けたような声を出した。周梨が梅花の顔をまじまじと見る。梅花はぼうっとしているように見えた。

「梅花、体調が優れないのでしたら休みなさい。貴女は曹家からの預かりもの、無理をすることはありません」

 周梨が厳しい言い方をしたが、彼女もまたとても心配しているのは確かだった。

「い、いえ……ああ、ええと……」

 言いたいことがあるのにうまく言えないような、そんなもどかしさで狼狽えている梅花に明玲は首を傾げた。

「なあに? 言いたいことがあるなら言ってちょうだい。文句でもなんでも聞くから」
「そうではなく……その……」

 梅花はとても言いにくそうだった。

「……どなたに、話したらいいのかわからなくて……でも、どうしたらいいのかもわからなくて……」

 こんな頼りない梅花を見るのは、明玲は初めてだった。曹家の分家の娘ではあるが、それほど肩入れしないようには言われている。それでも日中は一緒にいるのだ。同じ老師から四書五経を習い、午後は趙山琴から礼儀作法を教わる。立場としては主人と侍女ではあったが二人の仲は決して悪くはなかった。

「梅花、何があったの?」
「……実家から、手紙が来たんです……」

 そう言って、震える手で懐から出した手紙を明玲に渡そうとする。

「私が見ても、いいの?」
「はい。もうどうしたらいいのかわからなくて……私、そんなつもりでここに来たわけじゃないのに……」

 梅花の心は千々に乱れているようだった。

「拝見するわね」

 断って手紙を開く。そこには驚くべきことが書かれていた。
 梅花の父親は梅花にとても期待をしていた。曰く、蘇王の妾妃とする為に送り込んだのに篭絡できないとは役立たずの親不孝者である。年明けに帰されるなどとんでもない。蘇王が無理だというのならば、新しい皇帝の後宮に入れてもらうよう働きかけをする。それまではなんとしてでも蘇王の元にいさせてもらい、隙があれば蘇王の妾妃におさまるようにと書かれていた。
 開いた口が塞がらないとはこのことである。

「……えーと……なんだかどうしようもないことが書かれているように思えるのだけど……」
「どうしようもないです。帰ってくるなと言われても働く為と花嫁修業の為にここに来たわけですし、私ではどうにもしようがないですよね。バカだバカだとは思っていましたが自分の父がここまで愚かだったとは思ってもみませんでした……」

 梅花は今までの不満を吐き出すようにそう言った。

「……改めて聞くけど……蘇王の妾妃になるつもりは……」
「できればお断りしたいです。こんな勉強をずっとさせられるなんてごめんです」

 勉強嫌いはそう簡単に直るものではないらしい。

「じゃあ……皇上の妾妃になるつもりは……」
「とんでもない! 皇上の妾妃って後宮に入るってことでしょう? 愛憎渦巻く後宮にこんなろくに後ろ盾もない女が入ったら三日で怪死ですよ、怪死! 恐ろしい!!」

 自分自分を両手でぎゅうっと抱きしめて、梅花はぶるりと震えた。そういえば梅花は最近明玲に付き合っていろいろな娯楽小説を読んでいる。後宮に入ったとしてさすがに三日で殺されることはないだろうが、後宮内のいじめは実際それはそれは壮絶だと聞く。明妃は後宮に入った時すぐに芳妃に気に入られることができたからいいが、そうでなかったら心を病んでいたかもしれない。それぐらい誇張ではなく、後宮という場所は恐ろしいところだった。

「じゃあ……梅花はどうしたいの?」
「……そうですね……理想を語らせていただければ、ここで働いている間に分相応な縁談がきてどなたかに嫁げればいいのではないかと。できれば官吏などを出している家が望ましいですが、そうでなければどこかの豪族にでも嫁入りできるといいですね……」

 梅花は遠い目をした。親がこのようなことを言っているということは普通に縁談は望めないだろう。そういえば梅花の口調もだいぶ丁寧になったと明玲は思う。地方豪族に嫁ぐぐらいならば及第点だと山琴が言っていたことを思い出した。

「ねえ、周梨ジョウリー。どうしたらいいと思う?」

 とはいえこのような話は明玲の手に余る。それまで黙って二人を見守っていた周梨に明玲は声をかけた。

「……そうですね。一度奥様に相談した方がよろしいかと」
「……え」
「そうね、そうしましょう」

 山琴に苦手意識のある梅花を促して、明玲たちはさっそく山琴の部屋を訪ねたのだった。
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