義兄皇子に囚われて溺愛されてます

浅葱

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五九、新年

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 明けて新年。明玲は偉仁たちと共に皇城を訪れていた。
 新しく立った皇帝に挨拶をする為である。本来ならば明玲は皇帝に会える立場ではない。それでも招かれてしまえば行かないわけにはいかなった。さすがに公の場に出るわけにはいかず、祝賀行事の後の私的な集まりに明玲は連れて行かれた。

皇上ホワンシャン(皇帝陛下)、この度は……」
「ああ、いい、いい。挨拶は特にいらぬ。それよりも改めて娶る娘を見せるがいい」

 偉仁に促されて、明玲は緊張した面持ちで新しい皇帝の前に傅いた。先帝と違い、相変わらず瀟洒な出で立ちである。

曹明玲ツァオミンリンです、皇上……」
「堅苦しい挨拶は不要だ。ああやはり明妃によく似ている」

 母を引き合いに出されて、明玲は内心眉を寄せた。

「のう、明玲。もしジェンが明妃を望んだら如何する?」
「……そんな……」

 試すように、皇帝が言う。明玲は一気に蒼褪めた。そんなことはさせられない。縋るように哥を見た。哥は苦笑した。

「皇上、明玲をからかうのはおやめ下さい」
「からかってなどおらぬ。明妃は素敵な女性だ。できることなら妾妃として迎えたい。……が」

 そこで皇帝は言葉を切った。明玲はもう立っているのがやっとだった。

「さすがにそれは許されぬ」

 皇帝が笑う。偉仁が窘めた。

「皇上」
「娘とはいえ先帝との間に子を成したのだ。朕がどれほど想っても明妃を迎えることはかなわぬ。下らぬことを申した、許せ」

 立場というのだろうか。笑ってはいたが、もしかしたら皇帝はどこかで母を見初めたのかもしれないと明玲は思った。でも、それもせいぜい妾妃の一人としてではあろうが。

「皇上、あまり義妹を困らせないでやってください」

 そう声をかけてきたのは皇太子だった。先帝の息子である。皇位継承権は据え置きだと聞いた。皇太子は柔和な笑みを浮かべているのに目が笑っていない。なんだか怖いと明玲は後ずさった。

「太子、義妹ではないでしょう」

 偉仁が一歩前に出た。

「もうまもなく蘇王に嫁ぐのだろう。ならば義妹ではないか」
「……母たちを無事引き取りましたら、王領の発展にこの身を捧げる所存です」
「そうか。今のところ兆しはないと聞いている。あと三か月か……待ち遠しいな」
「皇太后娘娘は如何お過ごしですか」
「母后は元気だ。むしろ元気すぎるほどだな」
「それはよろしゅうございました」

 偉仁と皇太子の話はよくわからなかった。三か月というのは母たちが子を宿していなかった場合、自由になれるまでの期間だろう。そういえば皇太子は皇太后(先帝の皇后)の子であったと今頃思い出した。そもそも年が違いすぎるし、皇太子が後宮にやってくるなんてことはないので接点は全くなかった。だから明玲が皇太子のことを知らなくても無理はない。ただ、これから偉仁に嫁ぐにあたって知っていなければいけないことではある。明玲は心に留めておくことにした。
 明玲を伴っているということもあり、偉仁は早々にその場を辞した。

「明日には出立せねばな。民を労わなければならぬ」
「はい」
「……後宮は閉まっていたそうだな」
「はい、お会いすることはかないませんでした」

 後宮にいるであろう芳妃や母に会いたいと明玲は思っていたが、後宮へ続く扉は堅く閉ざされていた。現在は皇帝でさえも入ることはできないらしい。皇后は現在皇城内の宮に住まわれていると聞く。妾妃を皇城に迎えるのは先帝の妃たちを離宮に移してからのようだった。

「あと三か月の辛抱だ」
「はい、ありがとうございます……」

 芳妃や母、そして妹はどうしているだろうか。何事もありませんようにと明玲は後宮に向かって手を合わせた。
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