義兄皇子に囚われて溺愛されてます

浅葱

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六九、元宵節

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 昼はいつも通りに食堂で食べた。偉仁も一緒だったので趙山琴や妾妃たちも暴走することなく比較的穏やかだった。ただ、明日からは偉仁も出仕するので山琴たちに根掘り葉掘りいろいろ聞きだされてしまうのだろう。そう思うと明玲はなんだかとても怖いように思うのだった。
 待ちに待った夕方、明玲は温かい衣裳に身を包み、山琴に手を引かれて偉仁の前に立った。

「今宵は元宵ユエンシャオ。みなには存分に楽しんでほしい。だが決してはぐれないように。あってはならぬことだがよからぬことを考える輩もいないとは限らぬ。羽目を外しすぎないよう各自気をつけてくれ」
「はい!」

 偉仁の注意にみな返事をし用意されていた馬車に乗る。街の入口辺りまでは馬車で移動するらしい。偉仁は当たり前のように明玲を抱き上げ、馬車に運んだ。

グァ……!?」
「行くぞ」

 山琴も妾妃たちもにこにこしている。微笑ましいものを見るように細められた目は、本当に二人を祝福しているようであった。
 恥ずかしくて明玲はいたたまれない。でもそれが当たり前のように応対されてしまうと、恥ずかしがっている己がおかしいようにも思えてくるから不思議だった。
 馬車は街の入口辺りで偉仁たちを下ろし、戻っていった。帰りは帰りで護衛たちが手配するようである。
 明玲ははーっと息を吐く。真っ白だった。冬のとても寒い時期である。日が沈み、辺りはもう暗くなってきている。もうまもなく日の光も消えてしまうだろう。

「明玲、寒くないか」
「大丈夫です」

 寒いは寒いが、こうして偉仁やみんなと表を歩けることが明玲は嬉しかった。
 この元宵の期間は館で働く者たちも交替で休みを取り、夜を楽しんでいる。周梨と曹梅花は明日の夜に休むそうで、快く送り出してくれた。一緒に行くのではないかと思っていただけに拍子抜けしたが、よく考えたら今夜は偉仁と一緒である。さすがに蘇王と共に歩くのでは楽しめないだろう。
 灯籠が至るところにかけられ、幻想的に灯っている。暖かい色の光を見ると、それだけで暖かく感じられるから不思議だと明玲は思った。
 明玲は偉仁と山琴に挟まれる形で屋台を覗いたり、見世物小屋を横目で見たり、街の大通りをのんびり歩いた。元宵の期間は日が落ちると大通りには馬車が入れなくなる。みながみな楽しそうに練り歩く様子を眺めながら、明玲はこの平和がいつまでも続くようにと願った。

「どれ、買ってやろう」

 偉仁が屋台の飴売りから糖葫芦タンフールー(山査子飴)を買ってみなに振舞った。

「わぁ、蘇王ありがとうございます!」

 妾妃たちがわっと喜ぶ。明玲と山琴も受け取った。

「哥、ありがとう……」
「礼はいらぬ」

 いつも上品な山琴や妾妃たちが糖葫芦を持って食べている姿は、明玲にとってなんだかおもしろく見えた。いろいろな形の灯籠があって、それらを眺めているだけでも楽しい。

「じゃあ、私たちは行くわね。楽しんでいらっしゃい」

 山琴が明玲の腕から手を離し、妾妃たちと飯館レストランに入っていった。あ、と思う間に明玲は偉仁と二人きりにされて、なんともいえない表情をした。

「参るぞ」
「……はい」

 偉仁の腕に捕まるような形でもう少し先まで歩いた。偉仁は危なげない足取りで角を曲がり、路地に入った。途端に人通りが少なくなる。

「哥……?」
「すぐだ」

 更に奥に進むと、また明るい通りに出た。いろいろな建物が並ぶこの通りを、明玲は訪れたことがなかった。男性が多く歩いていて、その中にポツリポツリと色っぽい女性がいるように見えた。
 ピンとくる。
 ここは花街柳巷(花街)のようだった。

「哥……」
「こっちだ」

 一番大きな建物に連れて行かれる。

「蘇王、お待ちしておりました」

 店主と思われる、威厳があって少し年かさの女性が挨拶をした。

「妻の明玲ミンリンだ」
「奥様もご一緒でございますね。こちらへどうぞ」

 不安に思って偉仁の袖を引くも、彼は大丈夫だというように微笑んでいるだけだ。通されたのは一番上の階の部屋だった。すぐにお茶が出され、飲んでいる間に豪華な料理が並べられる。

「哥、ここは……」
「花街の中心だ。そなたは王の妻になった。この意味はわかるな?」
「……はい」

 政治に関わることは決してないが、王の妻になるということは様々なことを知っている必要があると偉仁は考えたのだろう。後から入ってきた女性たちの舞を見ながら、明玲は偉仁の腕の中でその幸せを噛みしめた。
 その夜、二人は戻らなかった。
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