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4.テンプレ展開キター!
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あーあ、王太子様、婚約破棄とか言っちゃったよ。
いったいどうするつもりなんだろう?
「……アルノルト様? それは本気ですの?」
私は逃げることもできないまま、そのやりとりを泣きそうな顔で見守ることしかできなかった。
「ああ、本気だ!」
「では……」
ヴィクトーリア様は扇子をばっと広げ、優雅に口元を隠された。
「王太子様はプランタ公爵家との縁を切って、どの家と縁(えにし)を結ばれるおつもり?」
「え、縁を切るとは……」
王太子、たじたじである。いくらなんでも政略結婚の意味を教わってないなんてそんなことはないはず……本人の頭がお花畑で聞いていなかったなら別だけど。
「あら? 王太子様は私との結婚をどうお考えになられていたのかしら? 政略結婚、という言葉の意味を知らないわけはございませんよね?」
「あ、ああ……わかっている……だが……」
「なんでしょう?」
なんか、上の階からの視線が痛い。王様とか、公爵様とか、男爵以上の卒業記念パーティー出席者の父兄がギャラリーから見守っているのは知っていた。私もそれを知っているはずなのによくここにこようと思ったな。やっぱり私も頭がお花畑だったのか。
「私は、真実の愛を知ったのだ……」
なんかどっかで聞いた科白デスネー。お願いだから私を見ないでいただけますかー?
王太子の視線から逃れるようにヴィクトーリア様にしがみついた。
「それで?」
「し、失礼ではないかヴィクトーリア! 私はこちらの、ローゼリンデと結婚する!」
いやああああああああ!! 勘弁してえええええ!
私は全力で首を振った。そして不敬とか何も考えず、
「しませんしません! 絶対にしません! なんて恐れおおい!」
と全力で否定してしまった。
ああ、これはこれでどうなんだろう。
王太子が固まった。
ヴィクトーリア様が高らかに笑う。
「ふ、ふふふ……ほーほっほっほっ! なんて楽しいお芝居なのかしら? アルノルト様、貴方にこんな才能があるなんて私思ってもみませんでしたわ? さ、冗談もほどほどにしてパーティーを始めませんこと? 今日は私たちの大事な卒業記念パーティーなのですから!」
「あ、ああ……」
ヴィクトーリア様の機転で、この場はそれでどうにか収まったらしい。でもヴィクトーリア様は決して私の腕を放してはくれなかった。
彼女は毒気を抜かれた王太子にダンスに誘われた時も、ローゼが心配だから他の方と踊ってくださいましと言って王太子を追い返した。
それにしてもこの女性にしては太い腕、絶対男性だと思うんだけどなんでみんな気づかないんだろう?
幻術をかける魔法があったような気がする。確かすごく難しかったはずだけど、もしやヴィクトーリア様はその魔法を使っているのだろうか。あまりにも難しすぎて知名度もそんなにないんだよね。王立学園の魔法科の、それこそ卒業後の研究生にでもならないと魔法書に触れることもできないはずだから。
でも、ヴィクトーリア様ってすごく優秀だったよね。もしかしてそれらの魔法書ももう触れさせてもらっているのかしら?
そんなことを現実逃避して考えていたら ヴィクトーリア様に声をかけられた。
「ローゼ、おなかがすきませんこと?」
「あ、はい……」
言われてみれば少しおなかがすいているような気がする。
「すいている……と思います」
「では何かいただきましょうか?」
「……はい」
みんな遠巻きにヴィクトーリア様と私を見ている。私がいなければみな先ほどのことが聞きたくて集まってくるのだろうが、彼女が私の腕を放してくれないので見られているだけである。いいかげん視線で穴が空きそうだと思った。
用意したお皿の上に食べたいものをよそったはいいが、立食形式なので片腕が塞がっている状態では何も食べられない。
「まぁ困ったわ。手が塞がっているから料理がいただけないわね」
「そうですね……」
いいかげん腕放せゴルァと思ったが、ヴィクトーリア様はにっこりと笑んでとんでもないことを言いだした。
「ローゼ、私に食べさせてくださらない?」
「へ?」
「そのフォークで刺したものを私の口に入れてくれればいいのよ」
えええええ。
「あ、あの……腕を……」
「ローゼ?」
「……はい」
その笑みに逆らえるはずもなく、私は引きつった笑顔でヴィクトーリア様とあーんをし合ったのだった。うん、私もヴィクトーリア様に食べさせていただきました。とてもおいしかったはずなんですけど、全然味はわかりませんでした!
それから、どうやって男爵家の館に帰ってきたのかわかりません。
ヴィクトーリア様は私の手を見て何やら男爵夫人に言いつけていた。
男爵夫人は彼女が帰った後上機嫌でこう言った。
「お前が未来の王妃様の侍女だなんて、それなりに出世したものだね。明後日にはお迎えがくるから、お前のこれからの仕事は自分の身体をよーく磨くことだよ。わかったわね?」
「……はい?」
なんだか、私の想定とは全然違う未来が待っているようです。
もう本当にどうなってしまうのか。
わけがわかりません。
いったいどうするつもりなんだろう?
「……アルノルト様? それは本気ですの?」
私は逃げることもできないまま、そのやりとりを泣きそうな顔で見守ることしかできなかった。
「ああ、本気だ!」
「では……」
ヴィクトーリア様は扇子をばっと広げ、優雅に口元を隠された。
「王太子様はプランタ公爵家との縁を切って、どの家と縁(えにし)を結ばれるおつもり?」
「え、縁を切るとは……」
王太子、たじたじである。いくらなんでも政略結婚の意味を教わってないなんてそんなことはないはず……本人の頭がお花畑で聞いていなかったなら別だけど。
「あら? 王太子様は私との結婚をどうお考えになられていたのかしら? 政略結婚、という言葉の意味を知らないわけはございませんよね?」
「あ、ああ……わかっている……だが……」
「なんでしょう?」
なんか、上の階からの視線が痛い。王様とか、公爵様とか、男爵以上の卒業記念パーティー出席者の父兄がギャラリーから見守っているのは知っていた。私もそれを知っているはずなのによくここにこようと思ったな。やっぱり私も頭がお花畑だったのか。
「私は、真実の愛を知ったのだ……」
なんかどっかで聞いた科白デスネー。お願いだから私を見ないでいただけますかー?
王太子の視線から逃れるようにヴィクトーリア様にしがみついた。
「それで?」
「し、失礼ではないかヴィクトーリア! 私はこちらの、ローゼリンデと結婚する!」
いやああああああああ!! 勘弁してえええええ!
私は全力で首を振った。そして不敬とか何も考えず、
「しませんしません! 絶対にしません! なんて恐れおおい!」
と全力で否定してしまった。
ああ、これはこれでどうなんだろう。
王太子が固まった。
ヴィクトーリア様が高らかに笑う。
「ふ、ふふふ……ほーほっほっほっ! なんて楽しいお芝居なのかしら? アルノルト様、貴方にこんな才能があるなんて私思ってもみませんでしたわ? さ、冗談もほどほどにしてパーティーを始めませんこと? 今日は私たちの大事な卒業記念パーティーなのですから!」
「あ、ああ……」
ヴィクトーリア様の機転で、この場はそれでどうにか収まったらしい。でもヴィクトーリア様は決して私の腕を放してはくれなかった。
彼女は毒気を抜かれた王太子にダンスに誘われた時も、ローゼが心配だから他の方と踊ってくださいましと言って王太子を追い返した。
それにしてもこの女性にしては太い腕、絶対男性だと思うんだけどなんでみんな気づかないんだろう?
幻術をかける魔法があったような気がする。確かすごく難しかったはずだけど、もしやヴィクトーリア様はその魔法を使っているのだろうか。あまりにも難しすぎて知名度もそんなにないんだよね。王立学園の魔法科の、それこそ卒業後の研究生にでもならないと魔法書に触れることもできないはずだから。
でも、ヴィクトーリア様ってすごく優秀だったよね。もしかしてそれらの魔法書ももう触れさせてもらっているのかしら?
そんなことを現実逃避して考えていたら ヴィクトーリア様に声をかけられた。
「ローゼ、おなかがすきませんこと?」
「あ、はい……」
言われてみれば少しおなかがすいているような気がする。
「すいている……と思います」
「では何かいただきましょうか?」
「……はい」
みんな遠巻きにヴィクトーリア様と私を見ている。私がいなければみな先ほどのことが聞きたくて集まってくるのだろうが、彼女が私の腕を放してくれないので見られているだけである。いいかげん視線で穴が空きそうだと思った。
用意したお皿の上に食べたいものをよそったはいいが、立食形式なので片腕が塞がっている状態では何も食べられない。
「まぁ困ったわ。手が塞がっているから料理がいただけないわね」
「そうですね……」
いいかげん腕放せゴルァと思ったが、ヴィクトーリア様はにっこりと笑んでとんでもないことを言いだした。
「ローゼ、私に食べさせてくださらない?」
「へ?」
「そのフォークで刺したものを私の口に入れてくれればいいのよ」
えええええ。
「あ、あの……腕を……」
「ローゼ?」
「……はい」
その笑みに逆らえるはずもなく、私は引きつった笑顔でヴィクトーリア様とあーんをし合ったのだった。うん、私もヴィクトーリア様に食べさせていただきました。とてもおいしかったはずなんですけど、全然味はわかりませんでした!
それから、どうやって男爵家の館に帰ってきたのかわかりません。
ヴィクトーリア様は私の手を見て何やら男爵夫人に言いつけていた。
男爵夫人は彼女が帰った後上機嫌でこう言った。
「お前が未来の王妃様の侍女だなんて、それなりに出世したものだね。明後日にはお迎えがくるから、お前のこれからの仕事は自分の身体をよーく磨くことだよ。わかったわね?」
「……はい?」
なんだか、私の想定とは全然違う未来が待っているようです。
もう本当にどうなってしまうのか。
わけがわかりません。
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