53 / 70
52.納得するまでにとても時間がかかったようです
しおりを挟む
冗談はともかく、護身術を超えた動きをしているヴィクトーリア様にときめきが抑えられません。たまに庭園に足を運ばれる女官や王の側室も目を丸くして眺めていた時もあるほどです。それぐらいヴィクトーリア様とその教師の動きは美しく、マリーンに聞かれてしまったほどでした。
魔法だけじゃなくて身体能力にも優れているなんて、ヴィクトーリア様はなんてチートなんだろう。うんうん、と満足して頷いていたらちょうどそこに王太子が通りがかった。
「ローゼ……?」
つかアンタ、仕事は?
逃げるわけにもいかないので控えた状態のまま縮こまる。立ったままで縮こまるってかなり無理があるけど嫌なものは嫌なのだ。
「ああ、ヴィクトーリアが剣を習っているのか。相変わらず彼女は努力を怠らないな」
女なのに、とか言い出すかと思ったのに、王太子は眩しいものを見るような目でヴィクトーリア様を眺めた。
「……ローゼ、以前みたいに普通に話をしてくれないか?」
私は侍女だから王太子と直接言葉を交わすことは許されない。でも王太子から許可をもらえば話せるという微妙な位置だ。話す、というよりただ呟くという形にはなるけれど。
「ご命令とあれば」
「……命令ではない。できれば、学園にいた時のように話したい」
学園にいた時の私は別人と言っても過言ではありません。男爵家での生活はきつかったし、勉強は楽しかったけど時間もなくて……だからこんな美形に手を差し伸べられてコロッと参ってしまったのだろう。あの頃王太子の手を取ってしまったのは自分なのだから言い訳もなにもできないのだけど。
「……王太子様は努力をしていらっしゃらないのですか? 練兵場で身体を鍛えていると以前聞きましたが」
「努力をするのは当たり前だ。私は王太子なのだから。……だが恋する女性一人手に入れることもできなかった……」
それが私なんてうぬぼれはしないけど、こういう時どう返したらいいのか困る。
「……そうですか」
「ローゼは、たった一度の過ちで私を見限ってしまったのか?」
”たった一度の過ち”?
私は王太子を睨みつけた。
「その過ちによって、私が死ぬことになったとしてもそんなことが言えるのですか?」
まぁ言えるだろうなとは思うけど、許せなかった。
「だが、結果的には……」
「結果は結果です。王太子様が確認を怠らなければあんなことにはならなかった。ただそれだけのことです」
まさしく、あの卒業記念パーティーはターニングポイントだったのだ。
「許す許さないの話でしたら、私は一生許しません」
だからもう私にかまうにはやめてほしい。王太子にはもうマリーンという素敵な女性がいる。頼むから私の存在などキレイさっぱり忘れてほしいのだ。
「……そうか。ありがとう」
王太子はそう呟くように言うと踵を返した。これでやっと王太子様も私にちょっかいを出すのをやめるだろう。
……そう思ったのに、なんでこう私は巻き込まれ体質なんだろうか。
庭園の絶妙な配置に、マリーンの侍女と王太子の侍従の姿を見かけた。最近はマリーンのところに王太子はよく通っているからその関係なのだろうが、なんだかとても嫌な物を感じた。
マリーンの侍女はなんかいらんことをマリーンに伝えるし、王太子の侍従は卒業記念パーティーの部外者に対する扱いを王太子に話さなかった。
それに、今二人はとても嫌な顔をしている。なんだろう、と首を傾げた。その時、こちらを向いたマリーンの侍女と目が合った。
まずい、と思った。
マリーンの侍女がこちらへすごい勢いで近づいてくる。何も知らないし何も聞いてないからこっちに来るのはやめてほしい。
「ローゼ、どうした?」
「あ、ヴィクトーリア様……どうぞ」
終わったらしく近づいてきたヴィクトーリア様にタオルを渡した。そして私も拭くのを手伝っていたらいつのまにか例の侍女と例の侍従の姿はなくなっていた。
逃げたのかもしれない、と思った。
何故逃げなければいけないのかはわからなかったけど。
その日の夕食の席で、王太子が今更なことを言いだした。
「ヴィクトーリア、私と君の共同事業の話はどうなっている? 最近全く聞かないのだが……」
えええ、と思った。だってもう共同事業についてはヴィクトーリア様が全て自分の名義に変えたようなことを言っていたから。それとも他に共同事業を別に立ち上げていたのだろうか。
ヴィクトーリア様がため息をついた。
「公爵家に関わる共同事業でしたら、すでに名義はヴィクトールに変えてありますが、それに関わる書類は受け取っていないのですか?」
「なんだって!?」
王太子が驚愕の表情を浮かべた。
これはまた何か、香ばしい予感がしますよ?
魔法だけじゃなくて身体能力にも優れているなんて、ヴィクトーリア様はなんてチートなんだろう。うんうん、と満足して頷いていたらちょうどそこに王太子が通りがかった。
「ローゼ……?」
つかアンタ、仕事は?
逃げるわけにもいかないので控えた状態のまま縮こまる。立ったままで縮こまるってかなり無理があるけど嫌なものは嫌なのだ。
「ああ、ヴィクトーリアが剣を習っているのか。相変わらず彼女は努力を怠らないな」
女なのに、とか言い出すかと思ったのに、王太子は眩しいものを見るような目でヴィクトーリア様を眺めた。
「……ローゼ、以前みたいに普通に話をしてくれないか?」
私は侍女だから王太子と直接言葉を交わすことは許されない。でも王太子から許可をもらえば話せるという微妙な位置だ。話す、というよりただ呟くという形にはなるけれど。
「ご命令とあれば」
「……命令ではない。できれば、学園にいた時のように話したい」
学園にいた時の私は別人と言っても過言ではありません。男爵家での生活はきつかったし、勉強は楽しかったけど時間もなくて……だからこんな美形に手を差し伸べられてコロッと参ってしまったのだろう。あの頃王太子の手を取ってしまったのは自分なのだから言い訳もなにもできないのだけど。
「……王太子様は努力をしていらっしゃらないのですか? 練兵場で身体を鍛えていると以前聞きましたが」
「努力をするのは当たり前だ。私は王太子なのだから。……だが恋する女性一人手に入れることもできなかった……」
それが私なんてうぬぼれはしないけど、こういう時どう返したらいいのか困る。
「……そうですか」
「ローゼは、たった一度の過ちで私を見限ってしまったのか?」
”たった一度の過ち”?
私は王太子を睨みつけた。
「その過ちによって、私が死ぬことになったとしてもそんなことが言えるのですか?」
まぁ言えるだろうなとは思うけど、許せなかった。
「だが、結果的には……」
「結果は結果です。王太子様が確認を怠らなければあんなことにはならなかった。ただそれだけのことです」
まさしく、あの卒業記念パーティーはターニングポイントだったのだ。
「許す許さないの話でしたら、私は一生許しません」
だからもう私にかまうにはやめてほしい。王太子にはもうマリーンという素敵な女性がいる。頼むから私の存在などキレイさっぱり忘れてほしいのだ。
「……そうか。ありがとう」
王太子はそう呟くように言うと踵を返した。これでやっと王太子様も私にちょっかいを出すのをやめるだろう。
……そう思ったのに、なんでこう私は巻き込まれ体質なんだろうか。
庭園の絶妙な配置に、マリーンの侍女と王太子の侍従の姿を見かけた。最近はマリーンのところに王太子はよく通っているからその関係なのだろうが、なんだかとても嫌な物を感じた。
マリーンの侍女はなんかいらんことをマリーンに伝えるし、王太子の侍従は卒業記念パーティーの部外者に対する扱いを王太子に話さなかった。
それに、今二人はとても嫌な顔をしている。なんだろう、と首を傾げた。その時、こちらを向いたマリーンの侍女と目が合った。
まずい、と思った。
マリーンの侍女がこちらへすごい勢いで近づいてくる。何も知らないし何も聞いてないからこっちに来るのはやめてほしい。
「ローゼ、どうした?」
「あ、ヴィクトーリア様……どうぞ」
終わったらしく近づいてきたヴィクトーリア様にタオルを渡した。そして私も拭くのを手伝っていたらいつのまにか例の侍女と例の侍従の姿はなくなっていた。
逃げたのかもしれない、と思った。
何故逃げなければいけないのかはわからなかったけど。
その日の夕食の席で、王太子が今更なことを言いだした。
「ヴィクトーリア、私と君の共同事業の話はどうなっている? 最近全く聞かないのだが……」
えええ、と思った。だってもう共同事業についてはヴィクトーリア様が全て自分の名義に変えたようなことを言っていたから。それとも他に共同事業を別に立ち上げていたのだろうか。
ヴィクトーリア様がため息をついた。
「公爵家に関わる共同事業でしたら、すでに名義はヴィクトールに変えてありますが、それに関わる書類は受け取っていないのですか?」
「なんだって!?」
王太子が驚愕の表情を浮かべた。
これはまた何か、香ばしい予感がしますよ?
12
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる