【本編完結】ざまあはされたくありません!

浅葱

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52.納得するまでにとても時間がかかったようです

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 冗談はともかく、護身術を超えた動きをしているヴィクトーリア様にときめきが抑えられません。たまに庭園に足を運ばれる女官や王の側室も目を丸くして眺めていた時もあるほどです。それぐらいヴィクトーリア様とその教師の動きは美しく、マリーンに聞かれてしまったほどでした。
 魔法だけじゃなくて身体能力にも優れているなんて、ヴィクトーリア様はなんてチートなんだろう。うんうん、と満足して頷いていたらちょうどそこに王太子が通りがかった。

「ローゼ……?」

 つかアンタ、仕事は?
 逃げるわけにもいかないので控えた状態のまま縮こまる。立ったままで縮こまるってかなり無理があるけど嫌なものは嫌なのだ。

「ああ、ヴィクトーリアが剣を習っているのか。相変わらず彼女は努力を怠らないな」

 女なのに、とか言い出すかと思ったのに、王太子は眩しいものを見るような目でヴィクトーリア様を眺めた。

「……ローゼ、以前みたいに普通に話をしてくれないか?」

 私は侍女だから王太子と直接言葉を交わすことは許されない。でも王太子から許可をもらえば話せるという微妙な位置だ。話す、というよりただ呟くという形にはなるけれど。

「ご命令とあれば」
「……命令ではない。できれば、学園にいた時のように話したい」

 学園にいた時の私は別人と言っても過言ではありません。男爵家での生活はきつかったし、勉強は楽しかったけど時間もなくて……だからこんな美形に手を差し伸べられてコロッと参ってしまったのだろう。あの頃王太子の手を取ってしまったのは自分なのだから言い訳もなにもできないのだけど。

「……王太子様は努力をしていらっしゃらないのですか? 練兵場で身体を鍛えていると以前聞きましたが」
「努力をするのは当たり前だ。私は王太子なのだから。……だが恋する女性一人手に入れることもできなかった……」

 それが私なんてうぬぼれはしないけど、こういう時どう返したらいいのか困る。

「……そうですか」
「ローゼは、たった一度の過ちで私を見限ってしまったのか?」

”たった一度の過ち”?
 私は王太子を睨みつけた。

「その過ちによって、私が死ぬことになったとしてもそんなことが言えるのですか?」

 まぁ言えるだろうなとは思うけど、許せなかった。

「だが、結果的には……」
「結果は結果です。王太子様が確認を怠らなければあんなことにはならなかった。ただそれだけのことです」

 まさしく、あの卒業記念パーティーはターニングポイントだったのだ。

「許す許さないの話でしたら、私は一生許しません」

 だからもう私にかまうにはやめてほしい。王太子にはもうマリーンという素敵な女性がいる。頼むから私の存在などキレイさっぱり忘れてほしいのだ。

「……そうか。ありがとう」

 王太子はそう呟くように言うと踵を返した。これでやっと王太子様も私にちょっかいを出すのをやめるだろう。
 ……そう思ったのに、なんでこう私は巻き込まれ体質なんだろうか。
 庭園の絶妙な配置に、マリーンの侍女と王太子の侍従の姿を見かけた。最近はマリーンのところに王太子はよく通っているからその関係なのだろうが、なんだかとても嫌な物を感じた。
 マリーンの侍女はなんかいらんことをマリーンに伝えるし、王太子の侍従は卒業記念パーティーの部外者に対する扱いを王太子に話さなかった。
 それに、今二人はとても嫌な顔をしている。なんだろう、と首を傾げた。その時、こちらを向いたマリーンの侍女と目が合った。
 まずい、と思った。
 マリーンの侍女がこちらへすごい勢いで近づいてくる。何も知らないし何も聞いてないからこっちに来るのはやめてほしい。

「ローゼ、どうした?」
「あ、ヴィクトーリア様……どうぞ」

 終わったらしく近づいてきたヴィクトーリア様にタオルを渡した。そして私も拭くのを手伝っていたらいつのまにか例の侍女と例の侍従の姿はなくなっていた。
 逃げたのかもしれない、と思った。
 何故逃げなければいけないのかはわからなかったけど。
 その日の夕食の席で、王太子が今更なことを言いだした。

「ヴィクトーリア、私と君の共同事業の話はどうなっている? 最近全く聞かないのだが……」

 えええ、と思った。だってもう共同事業についてはヴィクトーリア様が全て自分の名義に変えたようなことを言っていたから。それとも他に共同事業を別に立ち上げていたのだろうか。
 ヴィクトーリア様がため息をついた。

「公爵家に関わる共同事業でしたら、すでに名義はヴィクトールに変えてありますが、それに関わる書類は受け取っていないのですか?」
「なんだって!?」

 王太子が驚愕の表情を浮かべた。
 これはまた何か、香ばしい予感がしますよ?
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