ラブラブ・コロン

れなれな

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リュウノスケのうそ

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『ロンロン、近くに愛のはどうを、かんじるでしゅ』
 
 コロンが、いいました。

 コロンは、ちいさな愛のようせい。

 ロンロンは、コロンによって、いのちをすくわれた、ぼろぼろのいぬです。

 ふたりは、コロンのこきょうである、はくりゅうのさとへむかうとちゅう。

 みちのりは、はるかとおくまでつづいています。

 そのたびじで、コロンは愛をさがしていました。

 かのじょは、うまれるときに、たいせつな愛をあたえられなかったために、かよわくて、ちからがたりません。

 コロンが、いちにんまえの愛のようせいになるには、たくさんの愛をみつけなければならないのです。


 そのまちでは、おおきなほんやさんが、ありました。

 ロンロンがコロンのいうとおり、ちかくをさがしていると、ほんやさんのじどうドアから、しょうねんがでてきました。

 すると、うしろからエプロンをつけた、ほんやさんがでてきて、しょうねんのうでをとりました。

 しょうねんは、かみぶくろをじてんしゃのにだいにのせると、いってしまおうとします。

 が、ほんやさんは、じてんしゃのにだいをつかみ、ひきもどしました。

 しょうねんは、じてんしゃごところんで、みせのおくまで、つれていかれました。

「キミのしていることは、はんざいなんだよ」

 はいいろのつくえに、ならべられたさんこうしょ。

 しょうねんが、おかねをはらわずに、みせからもちだしたものでした。

「こんどが、はじめてなの? おやにれんらくするよ」

 すると、しょうねんはわっとないて、

「おやは……いません」
「じゃあ、がっこうはどこ? せんせいにきてもらいます」

 しょうねんは、だまりこんで、こたえません。

「どうなの? へんじしだいで、けいさつよぶよ」
「……がっこうは、いってません」

 ほんやさんは、ぬすまれたほんたちをみて、いいました。

「けどこれ、ぜんぶこうこうのものでしょ?」
「おかねならはらいますから、みのがしてください! にどと、しません」

 しょうねんは、ぼろぼろとなきました。


 みせのうらぐちからでてきたしょうねんは、とぼとぼとじてんしゃをおして、どこへともなくさっていきます。

 ロンロンがいいました。

「いぬにルールがあるように、にんげんたちにもルールがあるようだなぁ」

 コロンは、ロンロンにしがみついて、しょうねんのあとをおいました。

『愛のかけらが、きらきらしてるでしゅ』
「へえ」

 ロンロンにはわかりませんでしたが、ほかならぬコロンのいうことですから、だまってついてゆきました。

 ついたのはボロボロのやねと、かべにひびがはいった、ふるいおうちでした。

「えんがわが、ある」

 ロンロンは、かきねからのぞきこみました。

 そのとき、コロンが、せのひくいきのかきねの、すきまをぬって、なかへはいっていってしまいました。

「もう、しかたがないな。コロンのすることだ」

 しかしロンロンにはすこしせまく、とおれませんでした。

 そこで、なかをのぞいていると……。


「おばあちゃん、きょうはがっこうで、すうがくのテストがあったんだ。らくしょうだったよ」

 よくみれば、えんがわにこしかけた、あのしょうねんが、なかへむかって、はなしかけています。

「そうかい」

 おばあさんがでてきて、ゆげのたつゆのみと、おかしをさしだしました。

「あれ? おやつなんてどうしたの?」
「すこし、ひるまにでかけてきたんだよ。きょうはあたたかいから、きんじょのスーパーまでいってね」

 おばあさんはピンクいろのほほをして、ほっこりわらいました。

 すると、しょうねんはにこにこして、おやつをたべおわると、せけんばなしをはじめました。

「きょうは、とうこうちゅうにじょしにあって、こくはくされそうになった。はしってにげたけど、あせったなあ」
「あれまあ。モテモテなんだねえ」
「そんなことないよ。それよりも、このあいだのたいりょくそくていで、きろくがのびちゃって、サッカーぶややきゅうぶ、そのほかにもたくさんのうんどうぶに、さそわれちゃってさ」
「リュウノスケちゃんは、ほんとうにすごいねえ。わたしのむすこはどこでどうしているのかねえ」

 リュウノスケちゃんとよばれたしょうねんは、いっしゅんだけくちをつぐむと、げんきにいいました。

「きっと、いまごろけっこんもして、こどももいて、いつかおばあちゃんをむかえにくるよ。そのためのじゅんびちゅうなんだよ」
「そうかねえ。このごろでは、もうかえってはこないきも、しているんだがねえ」
「そんなことないよ! きっと、しゃかいでバリバリはたらいて、いそがしいんで、おそくなってるだけさ。たよりのないのは、いいたより!」
「そうかねえ。でも、むすこがしあわせにいきていてくれれば、それだけでわたしはいいんだよ」
 
 しょうねんは、おちゃをのみほすと、あかるくほほえんでいいました。

「じゃあ、おばあちゃんまたくるね。おやつとおちゃを、ごちそうさまでした!」
「はい。いつも、にわしごとをてつだってくれて、ありがとうね。リュウノスケちゃん」


 がさがさっと、おとをたてて、コロンがでてきました。

 しょうねんは、おてらにはいっていきます。

「リュウノスケくん、きょうもおまいりかい」

 おてらのひとが、いいました。

 リュウノスケはだまってれいをして、とおりすぎると、おおきなきのねもとにひざをつきました。

 あたりは、きれいにととのえられています。

 リュウノスケがざっそうをとって、ちいさなはなのたねをうえたところに、しかくいプレートがみえました。

『さわづ じゅんいちろうのはか』

 ロンロンが、すぐさましょうねんのところへかけつけると、コロンがさきにしょうねんに、はなしかけていました。

 しょうねんは、おどろいたかおで、コロンをうえからしたまで、じっくりみました。

「かいきげんしょう……」
『コロンは愛のようせいでしゅ。愛をさがしに、はくりゅうのさとから、やってきたでしゅ』
「愛のようせい……? 愛なんて、いきるのにやくにたたないじゃないか」
『そんなことはないでしゅ。リュウノスケのいきるきぼうに、なっているにちがいないでしゅ』
「なんだか、ずっと、みられていたみたいだな」
 
 リュウノスケは、はずかしそうに、うつむきました。

『あい! みてましゅた!』

 コロンはにこにこして、はなしをうながしました。

「しまづのおばあちゃんのむすこさんは、がくせいのころ、じこでなくなっているんだ」

 ロンロンは、きょとんとしてしまいます。

「だけど、おばあちゃんはむすこさんのしを、うけいれられなかったみたいで……」
『だから、しらないふりをして、おはなしをあわせてるんでしゅね』
「ひとりぼっちで、おちこぼれのボクが、こうこうへいきたいといったとき、おばあちゃんがいちばんにおうえんしてくれて、うれしかった。だから、こうこうへいっているふりを、したんだ」
『そうだったでしゅか』

 コロンは、しんみょうにうなづきました。

「ボクはおやもいない。もう、こころのよりどころは、おばあちゃんだけなんだよ」
『リュウノスケの愛をうけとったでしゅ。だからねがいをひとつかなえてあげるでしゅ』

 リュウノスケは、きょとんとしています。

『リュウノスケの、ねがいはなんでしゅか?』
「だいがくへいくことかなあ。あとおばあちゃんと、いつまでもいっしょにいたい」
『それなら、やかんがっこうや、つうしんきょういくかていがあるでしゅよ。がくひローンも、じゅうじつしてるでしゅ』

 リュノスケは、くびをひねっていましたが、やがてあかるいえがおをみせました。

「やってみるか!」
『リュウノスケが、ねがいをかなえれば、おばあさんもまえへすすめるでしゅ! きっと……だから、愛のしゅくふくをあげるでしゅ』
「……うん。まずはせいかつひをかせがなきゃ! でもやとってくれるところなんて、あるかなあ」
『リュウノスケしだいで、みらいはいくらでもかわるでしゅ。コロンの、しゅくふくつきでしゅよ』
「ありがとうコロン。ボク、がんばってみる……」


 きれいなほしぞらのもと、ロンロンのせなかで、コロンはうとうとしながら、いいました。

『ロンロン、うそはいけないとおもいましゅか?』
「さあね。はんざいはいけないけれどね。それにうそは、いつかわかってしまうものだし」
『それでも……リュウノスケがおばあちゃんのためについたうそは、きっとふかいふかい、おもいやりだったでしゅよ』
「コロンがそういうなら……そうだな……」

 コロンはむねがいっぱいになって、おおきくいきをつきました。

『やさしい愛を、みつけたでしゅ』

 ふたりはかわいいシッポをふりふり、なかよくたびを、さいかいしたのでした……。
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