ラブラブ・コロン

れなれな

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マリー

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とある、ちゅうがっこうでの、おはなしです。
 
 マナミとカヨコは、しょうがくせいのときから、なかよしでした。
 
 ところが、マナミがびしょうじょコンテストで、グランプリをとったことから、ふたりのなかは、ぎくしゃくしはじめました。

「カヨコ、いっしょにかえろうよ」

 ほうかご、マナミがいくらさそっても、カヨコはおうじなくなりました。

『なによ、マナミがびしょうじょグランプリ? わたしのたちばは、どうなるの』

 カヨコはマナミに、しっとしていました。
 
 それになにより、マナミよりじぶんのほうがかわいく、うつくしいとおもいこんでいたのです。

 それが、マナミがグランプリにえらばれたとたん、カヨコのプライドはズタズタになりました。
 
 どこへいっても、カヨコにはマナミばかり、ちゅうもくされているように、かんじます。

 カヨコはともだちのしるしに、マナミとおくりあった、おたがいのなまえがはいったハンカチを、ひきさき、へやのすみにすててしまいました。


 それから、カヨコはマナミをしつようにいじめはじめました。

 まわりのともだちたちも、きがつよいカヨコにさからえません。

 いっしょになって、マナミをおとしいれるけいかくを、たてていました。
 
 マナミは、いつかみんながわかってくれるとしんじて、がまんしていました。
  
 ところが、カヨコのいじめはクラスぐるみで、ひろまっていきます。

「しんさいんに、とりいって……」
「イロメつかったんだよ。おとこのしんさいんに」
「それより、いろじかけでしょ」
 
 ことばのいみもわからず、みんなくちぎたなくかげぐちをたたきました。
 
 マナミはおぼえもないことと、むししていました。

 それが、ますますいけなかったのです。
 
 うわさはひとりあるきしはじめ、ついにマナミはおいつめられてしまいました。


 ゆうがた、ボロボロのいぬにのって、たびをするコロンが、ふみきりにとびこもうとするマナミを、みつけました。

『どうしたでしゅか? 愛がないてるでしゅ』

 マナミはそんなコロンに、おどろきましたが、いきとうごうすると、すっかりわけをはなしてくれました。

「ありがとう。きもちがらくになったわ」
『愛のためには、まわりみちもひつようでしゅ』
「うん……」

 しかし、ことはかいけつには、むかいませんでした。

「キタナイおんな」
「ひきょうで、ズルいおんな」
「おんなをぶきにする、しょうわるおんな」

 めのまえでうわさをするものがいれば、マナミはきっとにらみつけ、むごんでうったえかけました。

 すると、まわりはそれをますますわるくとって、かのじょを、ふりょうとよぶようになったのです。
 
 マナミのせいかくは、カヨコがいちばんよくしっています。

 すべてカヨコが、しくんだことでした。

「マナミはふりょうだ。たにんのこいびともとっちゃう、ずるいこだ」

 と、ねもはもないうわさを、ばらまいたのです。

 そんなことがつづいたひ、マナミはにかいのわたりろうかで、まっしろなこねこをみつけました。

「わあ、かわいいな。どこからきたの?」

 こねこは、マナミのあしもとで、のどをならして、くびをこすりつけました。

「もう、くすぐったい」

 マナミは、こねこをだきあげると、おひさまにむかって、おおきくたかいたかいをしました。

 そのこねこは「マリー」となまえのはいった、くびわをつけていました。

「マリー、よろしくね」
「みゃあお」

 マリーは、のどをゴロゴロさせて、めをほそめました。


 つぎのひ、がっこうのもんの、よこのかだんに、もりつちがしてあり、そこにはまっかなもじで「マリーのおはか」とかかれたいたきれが、たっていました。

 マナミがきょうしつにはいると、ふくすうのじょしが、いやなめをむけてきます。

 カヨコのたんまつきに、マナミの、わたりろうかでこねこをたかく、もちあげているがぞうがうつっており、みんなそれをかこんでいます。

 マナミがだまってつくえにむかっていると、きこえよがしなわるくちがきこえてきました。

「こんなちいさなこねこを、たかいところからおとすなんて、しんじられない」
「なにあれ、へいきなかおしてるよ。はんせいしてないんじゃない?」
「あーあー、カヨコのマリーは、マナミにころされたんだ。ざんこく」

 おぼえのないマナミは、だまっていました。

 すると、ますますわるくちは、エスカレートしていきました。

「しゃかいのゴミ」
「ねえねえ、みんなしってる? しょうどうぶつをころすひとって、しょうらい、さつじんはんになるんだよ」
「きょうあくはんざいしゃだろ」
 
 マナミはじゅぎょうちゅう、ついにつくえにふしてないてしまいました。
 
 せんせいが、どうしたのかとしんぱいします。


「それは、つらかったわね」
 スクールカウンセラーがいいました。
「おやごさんにいちど、そうだんするか、クリニックをしょうかいすることも、できますからね」
 
 しょせん、たにんごと、ときこえましたが、マナミはぐっとたえしのびます。
 
 マナミはマリーがしんだのは、じぶんのせいだとおもいこんでしまいました。
 
 じぶんが、マリーにあまえてしまった。

 やすらぎがほしいと、おもってしまった。

「わたしが、かかわりあいさえしなければ……」

 そんなふうに、かんがえました。

 そんなとき、みすぼらしいいぬと、ふわふわのシッポをもった、おにんぎょうみたいにちいさな、おんなのこのすがたを、みかけました。

 おどろいたマナミは、くちもきけません。

『まだ、なのってなかったでしゅね。コロンは愛のようせいでしゅ。はくりゅうのさとからきましゅた! こっちはロンロン』
「ゆめ……?」
「おじょうさん、ゆめではないですぞ。しかしおはなしをきいていると、ちょっとようすがおかしいな。しがいのにおいなんて、しないんだが」
『いちど、おはかをたしかめてみるでしゅ』
「ええっ、でも……どうやっておはかを?」
『ロンロンのしょうげんがただしいか、ろうけんのはながにぶいだけなのか、たしかめるんでしゅ。なんにも、わるいことはありまちぇん!』

 マナミは、コロンのいうとおりにしました。

 マリーのはかをほりかえして、しがいをたしかめたのです。


「ああ! マナミがマリーのはかをあらしてる!」
「なんてことをするの。しんじられない」
 
 ですが、しんじられないのは、マナミのほうでした。

 マリーは、はかにうまっては、いませんでした。

 そのかわり、ボロボロにやぶけた、なまえいりのハンカチがありました。

 マナミ、とよめます。

「あんた、どうかしてるんじゃない? あたまがおかしいわよ」

 クラスのひとびとは、マナミをとりかこんで、せめました。
 そこへ、まっしろなこねこがわりこんでき、マナミのあしもとに、まとわりつきました。

「ま、マリー!」

 カヨコがあせって、いいました。

「ついてきちゃだめって、いったのに!」
 
 やはり、マリーはいきていたのです。

「そういえば、マナミがこねこをなげたところなんて、だれもみてないんだ」

 マナミはマリーをだきあげると、いつかのようにほおずりをして、いいました。

「しんでなんかいなかったのね。いきていてくれた……よかった」

 マナミのなみだが、みんなのいしきをかえました。

「いじめてごめんね」
「カヨコはひどいよ。どうかしている」
「いままで、ほんとうにわるかった」

 マナミはただ、マリーをだいて、なみだしていました。

『マナミの愛はうけとったでしゅ。ひとつねがいを、かなえるでしゅよ』
「また、あのやさしかったカヨコと、またなかよしになりたい」
『カヨコに、げいのうじむしょを、しょうかいすればいいでしゅ。くろうをしれば、カヨコもしょうきになるでしゅよ』


『こんかいは、にどおいしかったでしゅ』

 ロンロンのかたわらで、コロンがうれしそうにいいました。

『愛はすべてを、かえるんでしゅ』

 にしびをあびながら、ロンロンはめをまたたかせて、あくびをしました。

 きょうはどこで、みをやすめるのでしょうね。
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