ほんのり駄勇者とラスボス執事

れなれな

文字の大きさ
18 / 19

元気でね

しおりを挟む
「いつから、イヴァンをだましてたの? 魔王だって、隠してたの?」

「そりゃあ、出会ってからだよね。まさかあんな小粒が勇者だなんて思わないじゃない」

 ユーリが口をはさむが、どこからもとがめだてる者は出てこなかった。

「イヴァンは小粒じゃないよ。私にも、わからなかった」

「あ? キミもこんなボクが魔王だと思わなかったって? ボクだって見たことも聞いたこともない奴が勇者だって思ってた。まさかキミが――そうだったなんてこと、考えなかったし、考えたくもなかった」

「おともだちだと、おもっていたのに」

 玉座の後ろから聞こえてくる。

「ボクもだよ、勇者」

 硬質な声で魔王は言い放つ。と、同時に波動砲で背後を撃った。

 がらがらと壁の崩れる音。

「坊ちゃま、危ない!」

 マオが、白い姿態のプッシーとイヴァンを抱えながら、穴の底から這い上ってきた。

「ふん、腐っても魔王なんだね」

「それはおまえもだろう」

 二人の勇者は伸びていた。ふう、とマオは息をついて、

「いいかっこうはさせませんよ。一人だけなんて、ね」

 リリスは震えた。今まさに自分の行動と無謀さを反省する。

「そう、ね。私らしくなかった」

「それだけではないでしょう。ヒロイズムに酔うのは、命が助かってからにしてください」

「そうするわ! イヴァン、L数列の火炎魔法で援護して。プッシーはとどめを刺すの」

「オーライ!」

 巻き上がる炎は、いつかリリスが間違った数式の真の姿。

「どうして……? なぜ自分の管轄ではない魔王を攻撃する!?」

「あなたは自分の管轄でない人々を殺した。もう、見過ごせない」

 イヴァンは爆裂系の呪文を唱え、リリスは電撃系の技を放った。

 いつか、リリスの言っていたように、電撃系の技に爆裂が加わると最強だった。

 マオが目覚めたプッシーの手に、短剣を握らせる。

 魔王が膝をがくがくいわせている、このチャンス。逃すわけにいかない!

「プッシー殿、しっかり構えるのです」

「あ、ああ!」

「心臓を突くのですよ。手加減は無用!」

「わかった」

 二人は共に魔王に体当たりをした。

 ユーリの命は花と散った。

「あなたの言う通り、私は好きに生きる。おかあさんの仇をとって、勇者として生きる!」

 プッシーが決然と言った。

「ボクは……魔王なんだよね? 魔王の心臓は、命はひとつじゃない。ああ、勇者ってのは、そんな目をしたやつのことだよね。ボクの心臓を潰した罪は重いよ……? また逢おう。そのときはキミなんかにやられやしない……必ず」

 ユーリは風をまとい、姿を消した。

「や、やった……の?」

「プッシー殿、自信をお持ちなさい。それでいい。それでいいのです!」

「魔王を、やっつけた……?」

 マオは違うとは言わなかった。

「おかあさんの、仇を討った……この私が! っ……私が!!!」

 プッシーは激しく泣きじゃくった。これまでの反動のように、溢れて止まらなかった。

 リリスとイヴァンがそばに倒れている。

 マオが穴の向こうを見ていた。味方に回復呪文をかけねばならないのを、忘れていた。

 やがて、勝手に回復したイヴァンが言った。

「マオ、お茶が飲みたい」

「承知いたしました。坊ちゃま」

 真っ赤な雲が流れていた。

 その後のことなど、知らぬげに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

もしもゲーム通りになってたら?

クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら? 全てがゲーム通りに進んだとしたら? 果たしてヒロインは幸せになれるのか ※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。 ※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。 ※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。 ※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。

処理中です...