後継社長奮闘す

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第四章 勝てる戦いを実行する

建設営業コト始め

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受注型建設営業のツボ。

それは
見込み顧客訪問だけでなく
情報発生源を押さえること。

第二回営業会議の成果目標は
この発生源の精査と優先順位付け
そして、高い優先順位先への
アクションプランの具体化である。

幹部の皆さんに無理を言い
土曜日に集まって頂いた。

1日かかると考えたからだ。

会議は午前、午前
二部構成で進めることにした。

第一部は、人脈リストの精査である。

多大なお世話になってきた◯◯薬品の
常務さんを筆頭に、
これまで複数紹介頂いた老舗社長や
地域会合のトップの要職にある地元の名士。

有力な設計事務所の先生や
メガバンクや地域金融機関の
役員、支店長。

重要と思われる人脈だけでも
優に40は越えた。

「意外に知らない人もいる」

達社長にとっては
非常に意味のある時間だった。

昼食を30分足らずでとり
昼からの第二部は
アクションプランの検討。

まず会える人には、担当を明示し、
どういう頻度で接点を持つのか
その方針を具体化した。

続いて、
会うには一工夫いる「人」と
いかに会うかについて検討した。

ここは、やはり達社長の出番である。

前社長である父の力も借りて、
紹介やつてを頼りに、会いに行く。

そうした可能性を明らかにし、
アプローチ方法を整理して行った。

「政治家の票集めのようだ」
達社長、少し違和感を覚えながらも
会議は粛々と進んで行った。

最後に、これらの人達と会える
会合などを見える化し、
その為に必要な経費も予算化、
積極的に出席することにした。

会議の予定時間は
二時間以上オーバーしていたが、
それでも、ここまでは思いの外、
スムーズに進行
したように感じていた。

危機感があることもあるが、
正直、アイディアが
余りないというのが実態なような
気はする。

その意味でやや物足りなさはあるが、
走りながら考えよう。

会議の議長でもあった達社長。

陽も沈み、灯りを灯した会議室で
最後に決定事項を確認し、
終了しようと考えていた矢先、
 
「会うのは良いが、何をPRするのか」

1日ほとんど発言をしなかった
ベテラン専務から質問が飛んできた。

みな、一瞬静まりかえった。

そうなのだ。
会社案内やホームページ、
あるいは施工履歴等会社を紹介する
資料は、一通り揃えてはいる。
しかし、他社と比較して大差はない。

そう、営業の基本である
「売り」が足りないのだ。

沈黙が続いた。

やがて建築部長が
自信無さげにこう切り出した。

「70年の実績と◯◯薬品さんで培った
品質をアピールすれば良いのでは?」

皆小さく頷いた。

「現場力」
今はそれしかない。
まずはこの形でスタートしよう。

達社長が引き取り、
やや重苦しい空気で会議は終了した。


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