年下彼氏の策略

水無瀬雨音

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小鳩さんのお引越し

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「佑せんぱぁーい」
 瀬奈がいつもの甘ったるい声で呼びかけてきた。
 最近瀬奈は佑のことを「佑先輩」と呼ぶ。
「ん?何?」
 瀬奈のほうを向いて首をかしげると、瀬奈が品定めするように佑の頭の上から足先までじろじろ眺めた。
「な、何?」
 自然と怯えた顔になってしまう。立っていれば後ずさりしただろうが、椅子に座っているので動けない。
 瀬奈は可愛らしい顔を二ヤつかせた。ニヤニヤしても可愛さは損なわないのがすごい、と感心する。
「最近ー、スーツ同じですよね?前は一日おきに換えてたのに。今日で3日連続かな?
 んでー、ネクタイもおんなじ。シャツは変わってますね。まー、コンビニで買えますもんねっ。シャツは」
「うっ……」
 観察眼が凄まじい。そして多分、その理由も気づいている。
 瀬奈が耳元にグロスを塗った唇を寄せてひそっと囁いてきた。瀬奈が近づいてくると化粧品か香水なのか分からないが、ものすごくいい匂いがして心臓に悪い。
「樹先輩に帰してもらえないんですか?仲良しですねー。
 樹先輩の家に着替えいくつか置いておいたほうがいいですよっ」
 最後ににこっと特上の笑みを残して瀬奈は仕事に戻った。
「……そうします」
 後輩に、ましてや女の子にこういうアドバイスをされるのはものすごく恥ずかしい。
 だが、佑は瀬奈のアドバイスを実行することはなかった。
 

 休日でも佑は規則正しい生活をしている。
 普段と同じ時間に起きて朝食を食べ、家事をすませて昼食をとってその他のことをすませる、というのが大抵の休日の過ごし方だった。樹と付き合ってから、一緒に過ごすことも多いが彼は多忙なので休日一緒にいられないことも多い。今日は仕事があるのか誘われなかった。

ピンポーン

「はいはい」
 インターホンに応じると、引っ越し業者だった。
「僕は頼んでないんですが。他の部屋とお間違えじゃないですか?」
 きょとんとしながらも佑は丁寧に説明する。
「小鳩佑様ですよね?」
「はい。そうですが」
「確かに小鳩佑様で承っています」
「……そんなはずは」
 同姓同名?
 それで同じアパート?
 そんな偶然ありえるはずない。
 寝ぼけて契約してしまったのだろうか。
 佑が困惑していると、
「あー、すいません。すぐ始めちゃってください」
 突然後ろからひょっこり現れた樹の声で、引っ越し業者が続々と部屋に入っていった。
「佑、貴重品だけまとめて」
「……って言われても状況がまったく呑み込めないんですが」
「簡単に言うとここのアパート売却されたんで取り壊しになった」
「え?なんで突然?
 なんでそれを僕より先に樹が知ってるの?」
「理由は後で。っつってももちろん半年猶予があるけど。
 引っ越すなら早くても遅くても同じだろ?」
「引っ越すって言ってもどこに」
 不動産屋に行って即契約したとしても、即日引っ越せる場所などあるはずがない。
「決まってんだろ。オレん家。ほらオレも手伝うから早く」
 偉そうに言い放った樹が自分の家のように堂々と入ってくる。家主である佑の方が小さくなっている始末だ。
「あ、はい……」
「これはどうしますか?」
「電子レンジ、冷蔵庫、炊飯器は廃棄で」
 佑に代わってテキパキと業者に指示を出している。
 それから佑はぼんやりととりあえず大事なものをまとめている間に、あっという間に樹の家への引っ越し作業が滞りなく終了した。
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