異世界転生したオレは女体化しました

水無瀬雨音

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あなたは誰なんですか

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 控えめなノックとともに、
「お食事のご用意ができました」
 というメイドの声がした。
「すぐ行く」
 シーズベルト様が答える。
「行くか」
「はい」
 正直助かった。
 オレは一応納得したものの、明らかに不服そうで、シーズベルト様が困ってたから。

 食事をすませたあと、順番に湯あみをすませた。
 シーズベルト様に
「洗ってやろうか?」
 と申し出を受けたけれど、もちろん丁重にお断りした。
 オレが湯あみをすませて出ると、先にすませたシーズベルト様がソファーに座っていた。その隣にオレも座る。
「で、あなたの秘密を教えてください」
 オレは前置きなしに切り出す。
「ああ。君とオレは同じなんだ」
「あんた本当は女の子だったんですか?」
 内心ワクワクしながら聞くと、
「君は何を言っている?」
 シーズベルト様は怪訝な顔をした。
 違うのか。
 心の中で舌打ちする。
 男体化じゃないんだったら、何が同じだって言うんだよ。
 イラッとしたのを隠しつつ、もう一度聞く。
「だから同じってどういうことですか」
 シーズベルト様は淡々とした口調のまま、落ち着いた表情で言った。

「オレは転生者なんだ」

「あーそうなんですか。は、え!?」
「前世の記憶がある。前世のオレは『にほん』という国に住んでいた」
「にほん!?まじで!?オレもオレも!」
 シーズベルト様のカミングアウトに、オレは突如仲間意識が芽生えた。
 まさか転生者、ましてや同じ日本に住んでいた人間と会えると思えなかった。
「て、なんでシーズベルト様、オレが転生者だってご存じなんですか?」
「初めて一緒に寝た時に君が言ってきた。朝起きた時に忘れたみたいだったがな」
(そうだっけ?)
 そういや、変な夢見た覚えはあったんだよな。
 確かに朝起きたら全く覚えてなかったけれど。
 時々「ん?」っていう言い回しするのは、前世の言葉がぽろっと出たからだろう。おっかしいと思ったんだよな。世界が広いとはいえ、『日本』と同じ言い回しが現世にも存在しえると思えないし。
 あーすっげー嬉しい……。気を緩んでしまったら、思わず泣いてしまいそうだ。
 言葉も出ないほど、表現できないくらいに嬉しいことは、当事者であるオレたち以外には誰にも理解できないだろう。
 外国で同じ日本人に会ったとか、その比じゃない。
 言葉も違う、姿かたちも違う生き物しかいない宇宙の片隅の星に一人放り出されて、誰とも話せない孤独、今まで慣れ親しんできたものすべてから謝絶された言い知れない恐怖。そんな中で、やっと話が通じる人間に出会った、言い過ぎかもしれないけど、そんな感じ。
「前世で好きだったもので、食べたいものはなんですか?オレはそうだなー。米が食いたいです。東の国に行けば似たようなもの手に入るのかなー。パンとかパスタとか上手いんだけど腹にたまんないんですよねー」
「オレは……そうだな。納豆かな。それと同時にやはり米。まとまった休みがとれたら東の国に行ってみるか。全く同じというわけにはいかないだろうが、似たような食べ物がいくつかあるかもしれない」
「はい!」
「あなたがいたのは西暦でいうと何年ですか?どこ住み?」
 食いつき気味のオレの質問にシーズベルト様は苦笑いしながらも答えた。 
「生まれたのは19××年。死んだときははっきり覚えていないんだが……20代前半くらいだろうな。最後の記憶がそれくらいだ。出生は××県。その後父の転勤で○○県に移住した」
 え?マジで?オレと被ってる気がするぞ。
「もしかしてオレたち会ったことあるならすげーウケるんですが。
 オレ▽▽高校だったんです。オレは多分在学中に死にました」
「▽▽高校……?在学中に死んだ?
 お前、もしかしてだが」
 少し考え込むように遠い目をしたシーズベルト様が、信じられない言葉を発した。

「      か?」

「……なぜ、あんたが知ってるんですか?その名前を」
 オレは耳を疑った。シーズベルト様が発したその名前は、オレ以外この世界で知る人間はいないと思っていたからだ。
 シーズベルト様が発した名前。
 それは、オレの前世の名前だった。
「……本当に?」
 自分で言ったくせに、シーズベルト様も半信半疑だったらしい。
「オレの名前を知っている、あんたは誰なんですか」
 それを知っているなんて、かなり限られた人間だ。オレもシーズベルト様のことを知っているはず。
 シーズベルト様は落ち着いた声音で名乗った。

「オレは、      だ」

 シーズベルト様の名乗りに、オレは目を見開いた。
「本、当に……?」
「嘘を言ってどうするんだ。大体この名前を知っているのが、何よりの証拠だろう?」
 その名前を、オレは知っていた。
 陰キャのオレにやたら絡んできたリア充。
 それがそいつだった。
 初めてシーズベルト様と体を重ねた夜。
 確かにオレはそいつとのことを夢に見た。
 思えば、シーズベルト様と初めて一緒に寝た夜に夢を見たのも。
 同じ転生者であるシーズベルト様と一緒にいたから、なのかもしれない。
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