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偽物じゃなくて本当に好きなんです
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ケーキをセシルに渡すと、オレは自室に向かった。
ベッドに横になると、クッションを手あたり次第つかんで、壁に投げつける。
「大体!シーズベルト様はいつも強引すぎる!オレがいつも言うこと聞くと思って!」
「あらあら。荒れてるわねー」
くすくす笑いでいつものように魔女が現れる。オレにプライバシーなんてものは皆無だ。
「だってシーズベルト様が悪い。オレが目の届くとこにおかないと浮気するみたいな」
てか浮気するとなると相手が必要となるわけで、今まで恋人のいたためしがなかったオレにはいらぬ心配だと思うんだがな?
でも「浮気するだろ」って体でいられるといくら温厚なオレでも腹が立つ。
「んーでも今日は仕方がないかなーと思うわよ?」
シーズベルト様の肩を持ちやがってー。
どうせイケメンだからだろ。
むっとしたオレに、笑顔のままで魔女が言い募った。
「シーズベルトが結婚してもいいの?ほかの人と」
「はぁ?」
話飛びすぎだろ。
何でそうなる。
そりゃ嫌だけどさ。
「今日シーズベルトがあなたを連れて行こうと思ったのはね。お城の夜会に連れて行きたかったからみたいよ。なんかー。今日の夜会でめんどくさい相手との縁談が進められそうで、あなたを紹介することで逃れようとしたみたい」
「はぁ?」
オレは驚きすぎて、さっきと同じ言葉しか出てこなかった。
突然すぎて整理できない。
縁談?
オレを紹介?
リディアの時ならともかく、男のオレを?
正気の沙汰じゃないだろ。
「いやなんだったら力づくで止めてきなさいよ。
じゃないと本当に進んじゃうわよ?」
「で、でも」
男の姿で行くわけにいかない。
オレはともかく、シーズベルトが「頭おかしいんじゃないか」って言われてしまう。縁談から逃れるために適当な相手をでっち上げたと思う人もいるだろう。
それにそんな大々的なところで発表してしまったら、もう後に引くことは出来ない。
オレとシーズベルト様の気持ちが、本物なのかどうか、分からないのに。
「あ、のさ。オレとシーズベルト様は本当はお互い好きでもなんでもなくて、前世からの付き合いがあるから惹かれてたってことあるか?だから解呪が上手くいかなかったとか」
「ばかねぇ」
思い切って尋ねると、魔女はきょとんと眼を丸くして、笑った。慈愛に満ちた、優しい笑みだった。
「いくら不完全にしか解けなかったからって、私がかけた呪いよ?本当に好きじゃなかったら解呪できないわよ」
「そう、そう、なんだ……。オレも、シーズベルト様も本当に好きなんだ……」
魔女の言葉に、のどに引っかかった魚の骨のような、ずっと抱えていた懸念が解消された。
とはいえ、じゃあ男の姿で行けるかというと別なわけで。だけど、シーズベルト様の縁談はぶち壊したくて……。
「……もう」
悶々としているオレに軽くため息をつくと、魔女はあきれ顔で指を鳴らした。
そのとたん、オレの姿はリディアになった。
ついでに髪も結い上げられ、ドレスアップされている。
「は?え?」
また呪いをかけられたのだろうか?
姿見の前に行って、全身眺めまわしているオレを魔女がどやしつける。
「もうすぐ夜会が始まるわよ!御者走らせて、急いで行きなさい!」
「は、はいー!」
オレは慌てて部屋を出て行った。
そんなオレの背中を見て、
「まったくもう。世話が焼けるわねぇ」
と魔女が笑っていたことは知らない。
ベッドに横になると、クッションを手あたり次第つかんで、壁に投げつける。
「大体!シーズベルト様はいつも強引すぎる!オレがいつも言うこと聞くと思って!」
「あらあら。荒れてるわねー」
くすくす笑いでいつものように魔女が現れる。オレにプライバシーなんてものは皆無だ。
「だってシーズベルト様が悪い。オレが目の届くとこにおかないと浮気するみたいな」
てか浮気するとなると相手が必要となるわけで、今まで恋人のいたためしがなかったオレにはいらぬ心配だと思うんだがな?
でも「浮気するだろ」って体でいられるといくら温厚なオレでも腹が立つ。
「んーでも今日は仕方がないかなーと思うわよ?」
シーズベルト様の肩を持ちやがってー。
どうせイケメンだからだろ。
むっとしたオレに、笑顔のままで魔女が言い募った。
「シーズベルトが結婚してもいいの?ほかの人と」
「はぁ?」
話飛びすぎだろ。
何でそうなる。
そりゃ嫌だけどさ。
「今日シーズベルトがあなたを連れて行こうと思ったのはね。お城の夜会に連れて行きたかったからみたいよ。なんかー。今日の夜会でめんどくさい相手との縁談が進められそうで、あなたを紹介することで逃れようとしたみたい」
「はぁ?」
オレは驚きすぎて、さっきと同じ言葉しか出てこなかった。
突然すぎて整理できない。
縁談?
オレを紹介?
リディアの時ならともかく、男のオレを?
正気の沙汰じゃないだろ。
「いやなんだったら力づくで止めてきなさいよ。
じゃないと本当に進んじゃうわよ?」
「で、でも」
男の姿で行くわけにいかない。
オレはともかく、シーズベルトが「頭おかしいんじゃないか」って言われてしまう。縁談から逃れるために適当な相手をでっち上げたと思う人もいるだろう。
それにそんな大々的なところで発表してしまったら、もう後に引くことは出来ない。
オレとシーズベルト様の気持ちが、本物なのかどうか、分からないのに。
「あ、のさ。オレとシーズベルト様は本当はお互い好きでもなんでもなくて、前世からの付き合いがあるから惹かれてたってことあるか?だから解呪が上手くいかなかったとか」
「ばかねぇ」
思い切って尋ねると、魔女はきょとんと眼を丸くして、笑った。慈愛に満ちた、優しい笑みだった。
「いくら不完全にしか解けなかったからって、私がかけた呪いよ?本当に好きじゃなかったら解呪できないわよ」
「そう、そう、なんだ……。オレも、シーズベルト様も本当に好きなんだ……」
魔女の言葉に、のどに引っかかった魚の骨のような、ずっと抱えていた懸念が解消された。
とはいえ、じゃあ男の姿で行けるかというと別なわけで。だけど、シーズベルト様の縁談はぶち壊したくて……。
「……もう」
悶々としているオレに軽くため息をつくと、魔女はあきれ顔で指を鳴らした。
そのとたん、オレの姿はリディアになった。
ついでに髪も結い上げられ、ドレスアップされている。
「は?え?」
また呪いをかけられたのだろうか?
姿見の前に行って、全身眺めまわしているオレを魔女がどやしつける。
「もうすぐ夜会が始まるわよ!御者走らせて、急いで行きなさい!」
「は、はいー!」
オレは慌てて部屋を出て行った。
そんなオレの背中を見て、
「まったくもう。世話が焼けるわねぇ」
と魔女が笑っていたことは知らない。
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