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リディアちゃんは気づいていない 2

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 冷たくしすぎたな、アーテルが可哀想だなーなんて思っちゃいないけど、まあ帰ったら構ってやらないとな。
 約束したし。
 なんて思いながらシーズベルト様の屋敷に戻ると、そこにアーテルはいなかった。
 出迎えてくれたのはなんとシーズベルト様だった。

「リディア」

 大人な落ち着きのあるクールな笑顔。

「あ、シーズベルト様!」

 オレはぴょんっとシーズベルト様に飛びついた。
 自分でもぶんぶんぶんまわされているしっぽが見えるかのようだ。
 だってなんだかシーズベルト様に会うの久しぶりな気がする!

「今日は女子会に行ってたんですけど、セシルがシーズベルト様にお会いしたいと言ってましたよ。今度ご一緒にお茶会しましょうね!」

 誘うとシーズベルト様は怪訝な顔をした。

「……オレも参加していいのか?」
「はい。もちろん」

 てかこっちから誘ってるんだし。

「休暇を調整する。うちの料理人に何か作らせて持っていこう。街の菓子店で買った方が喜ぶだろうか?」

 実は行きたくないのかなと思ったけど、そうでもなさそう。

「どちらでも喜ぶと思いますよ。あ、買いに行ったら、それを口実にデートできますね! えへへ」
「デ……! ああ。そうだな」

 一瞬頬を赤らめて、シーズベルト様がうなづく。
 シーズベルト様可愛いぃー!
 それはいいんだが、なんか今日のシーズベルト様たびたび複雑そうな顔をしていて、非常に違和感がある。

「シーズベルト様、どうかなさいました?」
「いや……」

 はーっとシーズベルト様は軽くため息をついた。
 こめかみに拳をあてる。

「どちらもオレなのに不条理だな……と思ってな」
「? どういうことですか?」
「いや、分からないならいい」
「そうですか」

 仕事が忙しいからおつかれなのかな。
 期待が大きいから重大なこと任されてるからな。シーズベルト様お可哀想……。
 オレはシーズベルト様の腕にまとわりついて、その顔を見上げる。

「ゆっくりお風呂入って、ご飯食べて休んでくださいね! あ、せっかくだしたまには一緒にお風呂入りますか?」
「い、一緒に!?」

 かなり動揺するシーズベルト様。かなりレア。

「冗談ですよ?」
「じょ、冗談……。ああ、そうだな……」

 シーズベルト様は何度も平静を装うように咳払いをした。

「シーズベルト様なら一緒に入っても私はいいですけど?」
「おい、もう、どっちなんだ!?」

 一緒に入ってもいいってのは本当。
 だけど、今日のシーズベルト様純情ピュアすぎて一緒に風呂なんか入ったら倒れそうなので、やめとこう。話題をそらすことにする。

「今日は何をされていたんですか?」
「特に何も。読書や書庫の整理だな」
「普段お忙しくてなかなかできませんもんね!」
「ああ。暇を持て余すよりはいいが」
「シーズベルト様働き盛りですものね! それで今日食べたケーキがものすごく美味しくて、セシルがー」
「う、うん。そうか」

 オレの話に相づちをうちながら、

「まったく、アーテルだったらデートになんか誘ってくれないし、実家にも連れて行ってくれないというのにこの温度差……。ましてや一緒にお風呂なんて絶対誘ってくれないじゃないか!」

 なんてシーズベルト様がぶつぶつつぶやいていたけれど、オレの耳には届かなかった。
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