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と、そこへ細身の男が近づいてきた。
スーツ姿だがネクタイはしていない。
「失礼ですが、ミサラギメディカルの方ですか」
「はい、御更木蒼也です」
「ああ、やっぱり」と、手を差し出す。「初めまして。株式投資を配信している須垣陸と申します。ビジネス雑誌の配信記事を拝見していたもので」
「それはどうも」
握手を交わして二人が話を始めると、配信仲間らしい人たちが集まってきて翠はいつのまにか一人だけ弾き出されていた。
――やっぱり、私の居場所なんてないじゃない。
しかたなくビュッフェコーナーに行ってみたものの、豪華な料理を前にしても食欲がわかない。
「はあい、翠ちゃん」と、背後から悠輝が首を突き出してきた。「何か食べてる?」
「いえ、まだ」
「どうしたの。元気ないね」
敏感に人の感情を読み取る悠輝と比べてしまうと、よけいに蒼也の態度が素っ気なく思えてしまう。
不満をこらえきれず正直に話すと、悠輝が口を押さえて笑い出す。
「悠輝さんまで、何がおかしいんですか」
「ごめんごめん。でもさ、それって……」と、悠輝が手で口を隠しながら耳打ちする。「翠ちゃんに他の男が話しかけないか警戒しているんだよ」
「はあ?」
「翠ちゃんがかわいいからさ、独り占めしておきたいのさ」
「だったら、こんなパーティーに連れて来なければいいじゃないですか」
「いやまあ、今日は僕が誘ったわけだからさ」
それにしたって……。
通訳が必要な夫婦なんておかしいよね。
夫婦になってからの方が、かえってぎこちなくなっちゃった気がする。
出会ったときのあの優しい蒼也はどこへ行ってしまったのだろうか。
と、ため息をついた時だった。
カツカツと靴音を鳴らしながら大柄な女性が近づいてきた。
「ハーイ、悠輝よね」
「あっ」と、声をかけられた悠輝が絶句している。
「なによ、グリズリーに出くわしたみたいな顔して」
両手をあげて襲いかかるような仕草でおどける女性の顔は日本人だが、どうもアクセントが英語っぽい。
「だって、まさか、こんなところで会うとは思わなかったからさ」
「おととい日本に来たばかりなのよ。ボスのアテンドでね」
二人のやりとりを眺めていた翠に悠輝が紹介してくれる。
「こちらはね、落窪レイナさん。蒼也がアメリカに留学してたときの同期なんだ。僕もあの時短期留学してただろ。それで世話になってね」
「ハァイ、レイナです」と、いきなり翠の手をつかむ。「で、あなたが蒼也のワイフ?」
――え?
「あ、はい、ご存じでしたか?」
「うん、だって、しょっちゅうメールのやりとりしてるから」
「そうだったんですか」
そんな話は聞いたことがなかった翠は戸惑いを隠せなかった。
スーツ姿だがネクタイはしていない。
「失礼ですが、ミサラギメディカルの方ですか」
「はい、御更木蒼也です」
「ああ、やっぱり」と、手を差し出す。「初めまして。株式投資を配信している須垣陸と申します。ビジネス雑誌の配信記事を拝見していたもので」
「それはどうも」
握手を交わして二人が話を始めると、配信仲間らしい人たちが集まってきて翠はいつのまにか一人だけ弾き出されていた。
――やっぱり、私の居場所なんてないじゃない。
しかたなくビュッフェコーナーに行ってみたものの、豪華な料理を前にしても食欲がわかない。
「はあい、翠ちゃん」と、背後から悠輝が首を突き出してきた。「何か食べてる?」
「いえ、まだ」
「どうしたの。元気ないね」
敏感に人の感情を読み取る悠輝と比べてしまうと、よけいに蒼也の態度が素っ気なく思えてしまう。
不満をこらえきれず正直に話すと、悠輝が口を押さえて笑い出す。
「悠輝さんまで、何がおかしいんですか」
「ごめんごめん。でもさ、それって……」と、悠輝が手で口を隠しながら耳打ちする。「翠ちゃんに他の男が話しかけないか警戒しているんだよ」
「はあ?」
「翠ちゃんがかわいいからさ、独り占めしておきたいのさ」
「だったら、こんなパーティーに連れて来なければいいじゃないですか」
「いやまあ、今日は僕が誘ったわけだからさ」
それにしたって……。
通訳が必要な夫婦なんておかしいよね。
夫婦になってからの方が、かえってぎこちなくなっちゃった気がする。
出会ったときのあの優しい蒼也はどこへ行ってしまったのだろうか。
と、ため息をついた時だった。
カツカツと靴音を鳴らしながら大柄な女性が近づいてきた。
「ハーイ、悠輝よね」
「あっ」と、声をかけられた悠輝が絶句している。
「なによ、グリズリーに出くわしたみたいな顔して」
両手をあげて襲いかかるような仕草でおどける女性の顔は日本人だが、どうもアクセントが英語っぽい。
「だって、まさか、こんなところで会うとは思わなかったからさ」
「おととい日本に来たばかりなのよ。ボスのアテンドでね」
二人のやりとりを眺めていた翠に悠輝が紹介してくれる。
「こちらはね、落窪レイナさん。蒼也がアメリカに留学してたときの同期なんだ。僕もあの時短期留学してただろ。それで世話になってね」
「ハァイ、レイナです」と、いきなり翠の手をつかむ。「で、あなたが蒼也のワイフ?」
――え?
「あ、はい、ご存じでしたか?」
「うん、だって、しょっちゅうメールのやりとりしてるから」
「そうだったんですか」
そんな話は聞いたことがなかった翠は戸惑いを隠せなかった。
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