ベンチャーCEOの想い溢れる初恋婚 溺れるほどの一途なキスを君に

犬上義彦

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 汗が噴き出す翠をのぞき込みながらレイナが目を細める。

「もしかして、あなたたち、まだなの?」

「えっと、それがその……いろいろありまして」

「嘘でしょ。あいつ修道院にでも入ってたの?」と、レイナが笑いをこらえながらシャンパングラスを傾ける。「そういうプレイをしてるとか?」

「え、プレイ?」

「ああ、ごめんなさい。ジョークの加減が難しいわね。私は楽しいけど」

 ウィンクをしながら顔を突き出してくるレイナの視線から逃れるように翠はシャンパンを一息に飲み干した。

 そんな様子を笑みを浮かべながら眺めると、レイナは容赦なく核心を突いてきた。

「あなたバージン?」

 うなずく前に耳が熱くなる。

「正直ねぇ」と、レイナが優しく肩をたたく。「ええと、日本語でなんて言うんだっけ……『こじらせ』?」

「あ、あの……」と、ためらいながらも翠は思いきってたずねた。「する時って、男の人の……ああいうのが、入ってくるんですよね」

 子どもにスクールバスの乗り方をレクチャーしているみたいに、なんてことないという表情でレイナが肩をすくめる。

「そうね。だから、相性って大事なのよ。快感の場合はハッピーだけど、ただの苦痛って時もあるでしょ。そんなときは感じてる演技して、一回だけでサヨナラね。クズだけど体の相性だけは合う男とか、最悪なんだけど別れられなくなっちゃうのも困るけど」

「はあ……」

「そういう質問するってことは、蒼也のを見せられたってこと?」

「見てはいないですけど、一緒に眠っているときに……」

「触っちゃったわけね」と、食い気味に相槌を打つ。「それでびっくりしたと。かわいらしい子どものとは全然違うから」

 なんでもお見通しらしい。

「でも、それって、蒼也が無意識にあなたのことを求めてるってことでしょ」

 ――あ……。

「男が本能で女を求める。愛の形としては一番プリミティブだけど、一番大事なんじゃないの。愛されてる証拠ね」

 そうだ。

 だけど、私はそれに応えられていないんだ。

 なんでだろう。

 体が拒んでいると思っていたけど、さっきのすれ違いを思えば心の隙間のせいなのかとも思う。

「それにしてもよくあの蒼也が耐えてるわね。あなたドS?」

「違いますよ」

「意味は分かるのね。ウブなくせに」

 すみませんと、思わず翠は頭を下げた。

「そういえば、こういうの、『おあずけ』って言うのよね。日本語ってぴったりのいいワードを作り出すのがうまいのよね」

 いったん言葉を区切ったレイナが耳打ちする。

「カタブツをとろけさせるのって、想像するだけでわくわくしない?」

 ――はあ。

「あなたの魅力であいつを虜にしちゃえばいいのよ」

 と、簡易ステージにスポットライトが当たり、女性歌手が映像を駆使した演奏を始めて会場が一気に湧き上がる。

 配信ナンバーワン歌手のマキミヤだ。

「じゃあね、グッドラック」

 なんか疲れちゃったな。

 リズムに乗って腰を揺すりながらステージに向かうレイナの後ろ姿を見送ると、翠はすぼめた口にブドウの粒を放り込んだ。

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