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シャワーを出た蒼也は、スマホにたまっているメッセージをチェックした。
――ん?
財務責任者からSNSの画面が転送されてきた。
須垣と蒼也がパーティーで話している写真が問題視されているというのだ。
あの時はただ挨拶をしただけで、業務に関する話はしていない。
今回の騒動に便乗して、あたかも情報が流出していたように見せかけるため、意図的に流されたらしい。
この画像にはすでに百を超えるコメントがついていた。
《インサイダー確定?》
《ヤバいだろ》
《これは決定的》
《通報案件》
《炎上確定》
脇が甘かったと言われればその通りだが、明らかに反社会的立場の人物でない限り名刺交換くらいはするし、写真を断ることもできない。
ただそれを悪用されたら誤解を鎮めるのは不可能に近い。
株式市場の取引開始まで三十分。
今日も波乱の一日になりそうだ。
蒼也はスーツをクリーニングサービスの袋に入れて玄関先に出し、新しいスーツに着替えるとオフィスへ向かった。
◇
幼稚園の昼休み、翠のスマホに知らない番号から着信があった。
迷惑電話だろうと、一度は無視していたら、画像が送られてきた。
――何これ?
一つの傘に収まった蒼也とレイナがタクシーに乗り込む姿を捉えた写真だ。
また同じ番号から着信がある。
翠は画面をタップした。
「写真が気になるだろ」
名乗っていないのに、直感的に相手が分かった。
「須垣さんですか?」
「勘がいいな」
「どうして私の連絡先を?」
「情報は力だろ」
答えになっていない返事に苛立つ。
「ご用件は?」と、自分でもびっくりするくらい棘のある声が出た。
「あんたの旦那が大変なことになってるのは知ってるか?」
夜遅くまで会議をしていたことは知っているが、詳細は聞かされていない。
返事を躊躇していると、見透かしたような笑い声が追い打ちをかけてくる。
「旦那の会社の株価が大暴落してる」
「そんな」
「旦那の会社を潰さないために、俺が助けてやってもいいぞ」
相手の意図がつかめず黙っていると、須垣の下卑た声が聞こえてきた。
「その代わり、もちろんあんたには俺の言うとおりにしてもらうけどな」
「何をすればいいんですか?」
「決まってんだろ。あんたの旦那への愛を試させてもらう」と、須垣は鼻で笑って続けた。「バレやしないよ。俺だってヤバイってことは分かってるんだ。わざわざ旦那に告げ口するわけないだろ。ちょっとだけ目をつむっていればいいんだ。何もなかったことにすればいい。それですべて円満解決。約束は守るよ。この世はフェアなトレードで成り立っているからな」
「話すことはありません。切ります」
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