ベンチャーCEOの想い溢れる初恋婚 溺れるほどの一途なキスを君に

犬上義彦

文字の大きさ
73 / 88

(6-6)

しおりを挟む
 通話を切った途端、別の画像が送られてくる。

 ミサラギホテルのカードに蒼也あてのメッセージが書かれた写真。

《蒼也へ 久し振りに愛し合わない? 部屋で待ってる》

 流麗な筆記体で《Reina》のサインも記されている。

 これは……。

 心臓がざわつき、思わず胸を押さえる。

 須垣からまた電話がかかってくる。

 出ざるを得ないように仕向けて、こちらの反応を楽しんでいるのだ。

 翠は動揺を悟られないように努めて冷静に電話に出た。

「無理に落ち着いたふりなんかしなくていいぞ」

「イラつかせて駆け引きを楽しんでいるんでしょうけど、そうはいきませんよ」

 取り繕ってみたところでお見通しなのは、こちらも承知の上だが、どちらにしろ向こうのペースにはめられてしまうのが悔しい。

「写真を見ただろ。旦那だって楽しんでるんだ。あんたも一人の男だけじゃつまらないだろ」

「どうしてこんな写真をあなたが持っているんですか?」

「言っただろ、情報は力だって」

 黙っていると、須垣が声を抑え気味に語りかけてきた。

「どう受け止めるかは、あんた次第だな」

 蒼也の会社がトラブルに巻き込まれているとしても、部外者の翠にできることなど何もないはずだ。

 ただ、それが須垣の仕掛けたことだとしたら、ここで断ればまずいことになるのだろうか。

 判断できずに無言の時間が過ぎていく。

「迷ってる暇はないぞ。今この瞬間も下落している。いつでも連絡を待ってるよ」

 高慢な笑い声とともに電話が切られた。

 スマホでミサラギメディカルを検索すると、真っ赤な株価が表示された。

 関連表示で荒れたSNSも流れてくる。

 ――どうしたらいいの?

 蒼也に連絡を取ってみようとしたが、そもそも、須垣の言っていることが本当なのかも分からない。

 助けてやるというのは、株を買い支えるということなのか、それに、個人でそんなことができるのか、翠にはまったく見当もつかなかった。

「センセー、どうしたの?」と、ヒロキくんとルナちゃんが脚に飛びついてくる。

「あ、ううん、なんでもないよ」

 慌ててスマホを片づけると、ヒロキくんが首をかしげる。

「トム・ソーヤとはなしてたの?」

「ち、違うよ」

「トム・ソーヤってなあに?」と、今度はルナちゃんが首をかしげる。

「こうえんのおじさん!」

 あらら、やっぱりおじさんかぁ。

 蒼也さん、あの時、本気で不機嫌だったな。

「センセー、おうたのじかんでしょ」

 子どもはすぐに興味が移る。

 今は、そういう切り替えがありがたい。

「そうだね、お教室に行こうか」

「オレね、こえでっかい!」

「元気いっぱい歌ってね」

 子どもたちに手を引っ張られているうちに、翠は先生の顔に戻っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

愛してやまないこの想いを

さとう涼
恋愛
ある日、恋人でない男性から結婚を申し込まれてしまった。 「覚悟して。断られても何度でもプロポーズするよ」 その日から、わたしの毎日は甘くとろけていく。 ライティングデザイン会社勤務の平凡なOLと建設会社勤務のやり手の設計課長のあまあまなストーリーです。

再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです

星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。 2024年4月21日 公開 2024年4月21日 完結 ☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。

フローライト

藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。 ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。 結婚するのか、それとも独身で過ごすのか? 「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」 そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。 写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。 「趣味はこうぶつ?」 釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった… ※他サイトにも掲載

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

先輩、お久しぶりです

吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社 秘書課 × 藤井昂良 大手不動産会社 経営企画本部 『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。 もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』 大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。 誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。 もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。 ――それも同じ会社で働いていた!? 音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。 打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する 早瀬佳奈26才。 友達に頼み込まれて行った飲み会で 腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。 あまりの不愉快さに 二度と会いたくないと思っていたにも関わらず 再び仕事で顔を合わせることになる。 上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中 ふと見せる彼の優しい一面に触れて 佳奈は次第に高原に心を傾け出す。

処理中です...