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第5章 ギルドにて(5-1)
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草原を歩き続けて昼前に二人はベルガメントに着いた。
隠居生活と違って旅にはまとまった金がいる。
キージェは冒険者ギルドで路銀を稼げる手頃な仕事を探そうと考えていた。
いちおうキージェも冒険者としての登録はしてあって、いつも小銭稼ぎの簡単な仕事をもらって暮らしてきたのだ。
登録するときに適当に考えたのがキージェという偽名だった。
ギルドのある広場は買い物をする町の人々や行き交う旅人で昨日同様賑わい、荷車で野菜を運ぶ農民や異国からの隊商も来ていた。
広場に面した一番目立つ場所に石と木を組み合わせた大きな建物があって、入り口にギルドの看板が掛かっている。
中に入ってすぐは木造の広いホールで、腕自慢の冒険者たちでごった返し、掲示板を囲んで情報交換に花が咲いている。
奥のカウンターでは、受付嬢たちが冒険者たちの質問に答えたり、獣の爪や薬品の原料となる胆嚢などいった収穫物の査定をおこなっている。
汗とほこりと血の臭いにまみれたホールを抜け、二人はまっすぐカウンターに向かった。
胸を張って歩くクローレの銀髪や露出の多い軽装鎧が周囲の荒くれどもの視線を一手に引き寄せ、ひとりでに道が開く。
無意識に腰を振って歩くクローレの後ろ姿を、キージェは半歩下がって野郎どもの視線から隠しながらため息をついた。
――ったく、目立つお嬢ちゃんだな。
「ん? 何か言った?」
クローレが振り向き、屈託のない笑顔で首をかしげる。
そんな動きに合わせて胸が揺れ、キージェは慌てて迫る谷間から視線をそらした。
「なんでもねえよ。いい依頼があるといいな」
「そうだよね。私もほら、獲物を横取りされちゃったでしょ。働き損だったからさ。稼がないとね」
昨日の屈辱を自分から話せるほどには立ち直ってるらしい。
俺なら半年は悔しくて眠れなくなるんだけどな。
切り替えの早い若さがうらやましい。
――とは言っても、こいつは村を焼かれた恨みを抱えてるんだよな。
人それぞれ、そう簡単には忘れられない記憶があるってことだな。
クローレと二人でカウンターに近づくと、赤毛をポニーテールにまとめた受付嬢が、意味深な笑みを浮かべて迎えてくれた。
いつも担当してくれるなじみのライラだ。
「あら、キージェさん。めずらしく素敵な恋人さんとご一緒なんですね」
「いや、ちげえから。あのな、こんだけ歳が離れてるんだから、ふつうだったら、娘さんですかとか聞くだろうが」
「結婚してましたっけ?」
「んなわけあるかよ」
「だったら、べつに間違ってないじゃないですか」
「だから勘違いだって言ってんだよ。ただの弟子だよ」
「ねえ、師匠」と、クローレが口を挟む。「早く仕事もらおうよ」
「お、おう、そうだな」
せっかく話が進みそうだったのに、ライラがクローレをじろじろと見る。
「もしかして、きのう、広場でもめてた冒険者さん?」
「うん、そう」と、気まずそうにクローレがキージェの後ろに隠れる。
「ということは」と、ライラが不思議そうにキージェを見る。「ヴェルザードたちを一撃でたたきのめした剣聖ってキージェさんだったんですか?」
「俺は剣聖じゃ……」
「そうなのよ」と、食い気味に割って入ったクローレが前のめりにカウンターに手をつく。「うちの師匠、野獣みたいにすごいんだから。私なんか、あっという間にやられちゃって、人は見かけによらないって思い知らされちゃった」
隠居生活と違って旅にはまとまった金がいる。
キージェは冒険者ギルドで路銀を稼げる手頃な仕事を探そうと考えていた。
いちおうキージェも冒険者としての登録はしてあって、いつも小銭稼ぎの簡単な仕事をもらって暮らしてきたのだ。
登録するときに適当に考えたのがキージェという偽名だった。
ギルドのある広場は買い物をする町の人々や行き交う旅人で昨日同様賑わい、荷車で野菜を運ぶ農民や異国からの隊商も来ていた。
広場に面した一番目立つ場所に石と木を組み合わせた大きな建物があって、入り口にギルドの看板が掛かっている。
中に入ってすぐは木造の広いホールで、腕自慢の冒険者たちでごった返し、掲示板を囲んで情報交換に花が咲いている。
奥のカウンターでは、受付嬢たちが冒険者たちの質問に答えたり、獣の爪や薬品の原料となる胆嚢などいった収穫物の査定をおこなっている。
汗とほこりと血の臭いにまみれたホールを抜け、二人はまっすぐカウンターに向かった。
胸を張って歩くクローレの銀髪や露出の多い軽装鎧が周囲の荒くれどもの視線を一手に引き寄せ、ひとりでに道が開く。
無意識に腰を振って歩くクローレの後ろ姿を、キージェは半歩下がって野郎どもの視線から隠しながらため息をついた。
――ったく、目立つお嬢ちゃんだな。
「ん? 何か言った?」
クローレが振り向き、屈託のない笑顔で首をかしげる。
そんな動きに合わせて胸が揺れ、キージェは慌てて迫る谷間から視線をそらした。
「なんでもねえよ。いい依頼があるといいな」
「そうだよね。私もほら、獲物を横取りされちゃったでしょ。働き損だったからさ。稼がないとね」
昨日の屈辱を自分から話せるほどには立ち直ってるらしい。
俺なら半年は悔しくて眠れなくなるんだけどな。
切り替えの早い若さがうらやましい。
――とは言っても、こいつは村を焼かれた恨みを抱えてるんだよな。
人それぞれ、そう簡単には忘れられない記憶があるってことだな。
クローレと二人でカウンターに近づくと、赤毛をポニーテールにまとめた受付嬢が、意味深な笑みを浮かべて迎えてくれた。
いつも担当してくれるなじみのライラだ。
「あら、キージェさん。めずらしく素敵な恋人さんとご一緒なんですね」
「いや、ちげえから。あのな、こんだけ歳が離れてるんだから、ふつうだったら、娘さんですかとか聞くだろうが」
「結婚してましたっけ?」
「んなわけあるかよ」
「だったら、べつに間違ってないじゃないですか」
「だから勘違いだって言ってんだよ。ただの弟子だよ」
「ねえ、師匠」と、クローレが口を挟む。「早く仕事もらおうよ」
「お、おう、そうだな」
せっかく話が進みそうだったのに、ライラがクローレをじろじろと見る。
「もしかして、きのう、広場でもめてた冒険者さん?」
「うん、そう」と、気まずそうにクローレがキージェの後ろに隠れる。
「ということは」と、ライラが不思議そうにキージェを見る。「ヴェルザードたちを一撃でたたきのめした剣聖ってキージェさんだったんですか?」
「俺は剣聖じゃ……」
「そうなのよ」と、食い気味に割って入ったクローレが前のめりにカウンターに手をつく。「うちの師匠、野獣みたいにすごいんだから。私なんか、あっという間にやられちゃって、人は見かけによらないって思い知らされちゃった」
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