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第7章 湖畔の野営(7-1)
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夕暮れ時にちょうど湖にさしかかった。
沈みかけた夕日が水面に揺れ、静かな湖畔はまるで時間が止まったような穏やかさに満ちている。
「ちょうどいいな。今夜はここで休むか」
「うん、それがいいね」
クローレは早速フレイムクロウを手に、慣れた手つきで木を伐採し始めた。
汗をきらめかせながら剣を振るい、あっという間に十数本の木材ができあがる。
それを組み合わせて、野営用の寝台が完成した。
「ほう、うまいもんだな」
「ま、こういうところはSランクっぽいでしょ」と、クローレは得意げに胸を張る。「ダンジョンだと、太い木の根っこなんかが伸びてるから、それでよくこういうのを作ってたのよ。地面に直に眠るのとはやっぱり違うからね」
昼間、戦闘も経験し、かなり歩いたというのに、それでもまだ瞳には輝きが残り、唇には自信たっぷりの笑みまで浮かべている。
――こっちはそんな余裕ねえよ。
キージェは薪になりそうな軽い枝を拾い集めるのが精一杯だった。
その間、ミュリアは湖の水面をじっと見つめ、まるで何かを待つように静かにたたずんでいた。
純白の毛並みが夕陽に染まり、まるで燃え上がる炎のような神々しい美しさが漂う。
集めた枝を置いたキージェが近づいた瞬間、ミュリアが一直線に水に飛び込んだかと思うと、大きな魚を口にくわえて悠々と戻ってきた。
駆け寄ってきたクローレが目を丸くし、弾んだ声で手をたたく。
「わあ、すごいね! この魚、けっこう太ってるよ!」
ミュリアは得意げに鼻先を上げクローレに魚を渡すと、くるりと身を翻し、またじっと水面を見つめ始めた。
「食べ応えがありそうだな」
キージェが魚のうろこを取って木の枝に刺し、市場で買ってきた岩塩を振る。
その間にクローレが薪に火をつけ、そばに魚の串を立てる。
パチパチと木がはじける音と、魚の脂が焼ける香りが心に安らぎを与えてくれる。
二人が並んでたき火を見つめていると、ミュリアがさらにもう二匹魚をつかまえてきた。
「みんなの分がそろったね。ミュリアは優秀だね」と、クローレが笑いながら頭を撫でてやると、雪狼は愛玩犬のようにくぅんと小さく鳴き、純白の毛をクローレにすり寄せてご機嫌そうに尻尾を振った。
最初の魚が焼き上がると、キージェは串を外してミュリアに食べさせた。
「まずは、取ってきたやつからどうぞ」
「おいしそうだね。私たちのはまだ?」
「大きいから、ちゃんと中まで火を通すのに時間がかかるぞ。生焼けは危ないからな」
「はーい、いい子にして待ってまーす」
クローレは体を揺すりながら鼻歌を歌ってにこやかに魚を見つめている。
――ま、あれだけ歩けば腹も減るよな。
俺も若い頃は、食っても食っても腹が減ったし、太らなかった。
今じゃあ、そんなに食えないし、食ってもいないのに腹に肉がつく。
つい、遠い目で湖を眺めてしまう自分に苦笑しながら、キージェは火に枝をくべた。
沈みかけた夕日が水面に揺れ、静かな湖畔はまるで時間が止まったような穏やかさに満ちている。
「ちょうどいいな。今夜はここで休むか」
「うん、それがいいね」
クローレは早速フレイムクロウを手に、慣れた手つきで木を伐採し始めた。
汗をきらめかせながら剣を振るい、あっという間に十数本の木材ができあがる。
それを組み合わせて、野営用の寝台が完成した。
「ほう、うまいもんだな」
「ま、こういうところはSランクっぽいでしょ」と、クローレは得意げに胸を張る。「ダンジョンだと、太い木の根っこなんかが伸びてるから、それでよくこういうのを作ってたのよ。地面に直に眠るのとはやっぱり違うからね」
昼間、戦闘も経験し、かなり歩いたというのに、それでもまだ瞳には輝きが残り、唇には自信たっぷりの笑みまで浮かべている。
――こっちはそんな余裕ねえよ。
キージェは薪になりそうな軽い枝を拾い集めるのが精一杯だった。
その間、ミュリアは湖の水面をじっと見つめ、まるで何かを待つように静かにたたずんでいた。
純白の毛並みが夕陽に染まり、まるで燃え上がる炎のような神々しい美しさが漂う。
集めた枝を置いたキージェが近づいた瞬間、ミュリアが一直線に水に飛び込んだかと思うと、大きな魚を口にくわえて悠々と戻ってきた。
駆け寄ってきたクローレが目を丸くし、弾んだ声で手をたたく。
「わあ、すごいね! この魚、けっこう太ってるよ!」
ミュリアは得意げに鼻先を上げクローレに魚を渡すと、くるりと身を翻し、またじっと水面を見つめ始めた。
「食べ応えがありそうだな」
キージェが魚のうろこを取って木の枝に刺し、市場で買ってきた岩塩を振る。
その間にクローレが薪に火をつけ、そばに魚の串を立てる。
パチパチと木がはじける音と、魚の脂が焼ける香りが心に安らぎを与えてくれる。
二人が並んでたき火を見つめていると、ミュリアがさらにもう二匹魚をつかまえてきた。
「みんなの分がそろったね。ミュリアは優秀だね」と、クローレが笑いながら頭を撫でてやると、雪狼は愛玩犬のようにくぅんと小さく鳴き、純白の毛をクローレにすり寄せてご機嫌そうに尻尾を振った。
最初の魚が焼き上がると、キージェは串を外してミュリアに食べさせた。
「まずは、取ってきたやつからどうぞ」
「おいしそうだね。私たちのはまだ?」
「大きいから、ちゃんと中まで火を通すのに時間がかかるぞ。生焼けは危ないからな」
「はーい、いい子にして待ってまーす」
クローレは体を揺すりながら鼻歌を歌ってにこやかに魚を見つめている。
――ま、あれだけ歩けば腹も減るよな。
俺も若い頃は、食っても食っても腹が減ったし、太らなかった。
今じゃあ、そんなに食えないし、食ってもいないのに腹に肉がつく。
つい、遠い目で湖を眺めてしまう自分に苦笑しながら、キージェは火に枝をくべた。
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