異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

文字の大きさ
30 / 183
異世界編 1章

第23話 加護その1

しおりを挟む
 ―― 翌朝
 
 スイは為次に抱き付きながら、気持ち良さそうに寝息を立てている。
 結局、為次は一睡もできなかった。
 だから窓から差し込む陽の光に照らされたスイの寝顔を間近に見ていた。

 「まだ起きないのか……」

 「うにゃ、うにゃ…… ご主人しゃま……」

 「…………」

 「にゃ? ……あ、ご主人様…… んぁ…… ぉはようございます」

 ようやく起きたようだ。
 だが、まだ離れたくない様子で為次を抱く腕に力を入れ何か言っている。

 「んっふー、んーんー、ご主人しゃま~」

 「んーんー、じゃなくて、もう朝だよ」

 「んふー……」 

 「…………」

 スイはようやく離れると言う。

 「申し訳ございません、寝過ごしてしまいました」

 「いや、別にいいけど」

 「直ぐに朝食準備をしますね」

 「いや、それも別にいいよ。顔でも洗ってくるわ」

 「あ、はい。では洗顔の準備しますね」

 「いや、マジで結構です」

 「そうですか……」

 「じゃあ、また後でね」

 為次はベッドから出ると、直ぐに部屋から出て行ってしまった。
 部屋から出て行く後ろ姿を、少し名残惜しそうに見送るスイであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 為次は顔を適当に洗うとロビーへと行ってみる。
 そこには正秀がソファーに座っている。
 スイの姿はまだ見えない。

 ソファーに座ると、正秀と目を合わせたくないといった感じで、わざとらしく天井を見上げるのだ。

 「んあーあ……」

 「今日も遅い朝だって言うのに、眠そうだな」

 「寝てないから」

 「寝ろよ」

 「誰のせいだと……」

 「お前が連れて来たんだろ」

 「はぁ……」

 「…………」

 しばらく二人は黙っていたが、為次はようやく正秀の方を見る。

 「まあ、いいや。それよりちょっと相談があるかも」

 「相談? 珍しいな為次が相談とか、スイちゃんのことか?」

 「スイか…… どうかなぁ? 半分そんなもんかも知れんけど」

 「で、なんだ?」

 「アレだわ、加護ってやつ」

 「生命の加護か? あ、息吹の方か?」

 正秀はニヤついた顔で訊いた。

 「半分違います」

 「また半分?」

 「俺達も生命の加護とやらを受けれるんだってさ」

 「そうなのか? 違う世界の人間でも受けれるものなのか?」

 「スイが言うには、そうらしいけど……」

 「お前も受けたいのか?」

 「分からん……」

 「そうか…… それって元にも戻れるのか?」

 「分からん……」

 「ん…… じゃあターナに聞いてからだな」

 「マサはどうなの?」

 「俺か? 俺もこの大剣使ってみたいしな……」

 そんな二人の話の途中、着替えたスイがやって来た。

 「おはようございます、遅くなって申し訳ありません。直ぐに朝食の準備をしますから」

 「俺は要らんよ」

 「え? 本当に宜しいのですか?」

 為次は、しかめっ面をしながら正秀を見て言う。

 「口の中が痛いんでね、誰かさんのせいで……」
 
 「お前が悪いんだぜ。ああでもしないと動かないんだろ、こと女に関しちゃぁよ」

 「……はぁ」

 「どうされました? 虫歯ですか?」

 「いや、違うっぽい」

 「そうですか…… では、ヒールポーションを作って来ますね」

 「あっ、そういやスイって魔法少女だったもんね。すっかり忘れてたよ」

 「それでは、直ぐに用意いたしますので」
 
 そう言ってスイはさっさとキッチンの方へと行ってしまった。

 「よかったな為次、直ぐに治りそうで」

 「まぁ」

 「これで、いくら殴られても安心だな。ははっ」

 「マジ勘弁してよ……」

 スイは直ぐに戻って来た。

 「お待たせしました。どうぞ」

 為次に水の入ったグラスを渡す。

 「ありがちょ」

 「早いな、スイちゃん」

 「グラスの水にエンチャントヒールするだけですから」

 為次はグラスの水を一気に飲み干す。

 ゴク ゴク ゴク

 「おお! もう痛くない、すげー! 偉いぞスイ」

 「えへへ」
 
 為次に褒められてとても嬉しそうなスイ。

 「これで朝食も食べられますよね」

 「うん」

 「では、直ぐに準備しますので」

 「あ、ちょっと待ってスイちゃん」

 正秀はキッチンへ向かおうとするスイを呼び止めた。

 「はい、なんでしょう?」

 「聞きたいんだけどさ、加護って元にも戻せるのか?」

 「あ…… はい、戻せるそうですよ」

 「へー、戻った人も居るのかな?」

 「そうですね、そういった加護の無い人々が集まって暮らす場所もありますよ」

 「そうなのか」
 
 「この近くだと、もう無くなりましたが、ファーサ村とかですね」

 為次はレッドドラゴン討伐の依頼書を思いだす。

 「ファーサ村…… あのレッドドラゴンに消滅させられた……」

 「ちょうど力の無い人々が暮らす村が襲われたのか、そりゃ災難だぜ」

 「災難…… 災難ねぇ…… 偶然ならいいけどさ」

 「ん?」

 「神官達にとっては目の上のたんこぶかもね。勝手に増えて後から我に加護とか言われてもさ」

 「ああ……」

 「まぁ、考え過ぎかな、ターナは優しかったしなぁ」

 「あ? ターナ? ターナとなんかあったのか?」

 「あわわわ、いやいや、何もないよ、なーんもね」

 「怪しいな……」

 「ターナ様の胸は気持ち良さそうでしたものね。ご主人様」

 そう言いながらスイはジト目で為次を睨むのだ。

 「あわわわ、スイ! 早よ朝食作っておいで」

 「へー、詳しく聞きかせてもらいたいな」

 「なんでもないってば!!」
 
 為次はスイをキッチンに追いやり、おっぱい騒動の件を必死に誤魔化すのであった。

 ……………
 ………
 …

 そして、朝食を食べ終わった三人はターナの所へ向かうことにした。
 
 ※  ※  ※  ※  ※

 借家を出発しようとする為次とスイは、レオパルト2の前で正秀を待っていた。

 「遅い…… 何やってんだろ……」

 「見て来ましょうか?」

 「んー」

 しばらく待つと、遅れた正秀がようやく玄関から出て来た。
 大剣をズルズルと引きりながらやって来る。

 「いやぁ、悪りぃ悪りぃ、コイツが重くてな」

 「それ持ってくの?」

 「ああ、俺もコイツで戦おうと思ってな」

 「なんと戦うのさ……」

 「……あー、アレだ……」

 「また、ならず者連中みたいなのが来るとマズいだろ。うんうん」

 「デザートイーグルがあるよ」

 「俺も戦うんだよ、お前だけに任せられないからな」

 「いやいや、それ以前にその大剣持てないでしょ」

 「気合でなんとかしてみせるさ」

 ズル ズル ズル……

 正秀は必死に大剣を持ち上げようとするが、引き摺のが精いっぱいの様子だ。

 「…………」

 為次は呆れて見ていると、スイが訊く。

 「マサヒデ様は、その大剣を使いたいのですか?」

 「その為に買ったからな、どうだカッコいいだろ」

 「よろしければ、リバースグラビティを付与しますが……」

 「「え?」」

 正秀と為次は、そんなことができるのかと少し驚いた。

 「飛んで行かない程度に調整すれば軽くなりますけど」

 「ま、ま、マジかスイちゃん!」

 「はい」

 「直ぐにかけてくれ!」

 「はい」

 スイは大剣に手をかざすと、呪文を唱える。

 「エンチャントリバースグラビティ……」

 魔法をかけると大剣が一瞬光った。
 見た感じ特に変化は無いようだ。 
 
 「できました」

 「お!?」
 
 正秀は大剣を思いっ切り持ち上げてみる。

 「おお!?」

 大剣は重さを感じなくなっており、軽々と宙を舞うのだ。

 「おおお!?」

 しかし、質量は変わっていないようで、振り上げられた大剣は正秀を引き摺りながら飛んで行く。

 「うわぁぁぁぁぁ」

 そして、大剣は正秀を連れて2階の窓へと突っ込んで行った……

 ガシャーーーン!

 「「…………」」

 為次とスイは飛んで行った正秀を無言で見送った。

 「す、少し軽くし過ぎたのでしょうか……」

 「んま、ちょうどいいんかもね……」

 二人はまたしても、しばらく待つと大剣をフワフワさせながら玄関から正秀が出て来た。
 宙に浮いて軽いはずの大剣だが、何故か重そうに引っ張っていた。
 ガラス片で切ったのであろう、そこらじゅうから血を流している。

 「あ、お帰り……」

 「スイちゃん! 俺にもヒールポーション!」

 それを聞いた為次は、そこら辺に生えている花から葉っぱを一枚取ってきてスイに渡すのだ。

 「スイ、これでいいよ」

 「は、はい、コレを葉っぱポーションにするんですね…… エンチャントヒール」

 為次は光った葉っぱを正秀に渡す。

 「はいコレ」
 
 「……もしゅ、もしゅ、んぐ」

 正秀は受け取った葉っぱを無言で食べた……

 「ところで、その付与魔法ってずっと効果があるの?」

 と、為次は訊く。

 「いえ、先ほど剣にかけたのは10分程度です。魔力の注入量と強さで変わってきます」

 「なるほどねー。じゃあさ、レオにもかけれるの?」

 「つばい様にですか? もちろんできますよ」

 「60トン以上あるけど2トンくらいにしたいかも、15分くらいでお願いできる?」

 「はい、分かりました、ご主人様」

 スイは返事をすると、レオパルト2に触れ魔法をかける。

 「エンチャントリバースグラビティなのです」

 魔法をかけると、戦車全体が一瞬光った。
 すると、レオパルト2のサスペンションが少し浮くのだ。
 それを見た為次は大喜びである。

 「うぉぉぉ、やった! これで当面の燃料問題もなんとかなりそうかも。足回りへの負担も減るし、偉いぞスイ」

 「えへへへー」

 為次に褒められたスイはとても嬉しそうであった。

 「よし、それじゃ行くか、全員搭乗!」

 正秀が号令をかけると、皆は搭乗する。

 「りょかーい」

 「はいっ」

 大剣はひとまず砲塔の後方に載せると、三人はそれぞれの席に着いた。
 為次はエンジンを始動させる。
 ゆっくりとアクセルを踏み込むと、戦車は信じられないほど軽やかに快調に動き出すのだ。

 「すげー、ここまでとは信じれんわ」

 「そんなに違うのか?」

 「うん、マサだと、また家に突っ込んで行くかも」

 「そ、そうだな……」

 そして、三人を乗せたレオパルト2は街へと向かって行くのであった。

 ※  ※ 神殿内部 ※  ※

 ―― その頃

 ターナとスレイブは神殿に居た。

 「あら、あの子達が来るようですわ」

 「じゃあ、僕達もギルドに行こうか、母さん」

 「そうね、ふふっ」

 ターナは嬉しそうに、微笑むのであった……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

処理中です...