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異世界編 1章
第23話 加護その1
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―― 翌朝
スイは為次に抱き付きながら、気持ち良さそうに寝息を立てている。
結局、為次は一睡もできなかった。
だから窓から差し込む陽の光に照らされたスイの寝顔を間近に見ていた。
「まだ起きないのか……」
「うにゃ、うにゃ…… ご主人しゃま……」
「…………」
「にゃ? ……あ、ご主人様…… んぁ…… ぉはようございます」
ようやく起きたようだ。
だが、まだ離れたくない様子で為次を抱く腕に力を入れ何か言っている。
「んっふー、んーんー、ご主人しゃま~」
「んーんー、じゃなくて、もう朝だよ」
「んふー……」
「…………」
スイはようやく離れると言う。
「申し訳ございません、寝過ごしてしまいました」
「いや、別にいいけど」
「直ぐに朝食準備をしますね」
「いや、それも別にいいよ。顔でも洗ってくるわ」
「あ、はい。では洗顔の準備しますね」
「いや、マジで結構です」
「そうですか……」
「じゃあ、また後でね」
為次はベッドから出ると、直ぐに部屋から出て行ってしまった。
部屋から出て行く後ろ姿を、少し名残惜しそうに見送るスイであった。
※ ※ ※ ※ ※
為次は顔を適当に洗うとロビーへと行ってみる。
そこには正秀がソファーに座っている。
スイの姿はまだ見えない。
ソファーに座ると、正秀と目を合わせたくないといった感じで、わざとらしく天井を見上げるのだ。
「んあーあ……」
「今日も遅い朝だって言うのに、眠そうだな」
「寝てないから」
「寝ろよ」
「誰のせいだと……」
「お前が連れて来たんだろ」
「はぁ……」
「…………」
しばらく二人は黙っていたが、為次はようやく正秀の方を見る。
「まあ、いいや。それよりちょっと相談があるかも」
「相談? 珍しいな為次が相談とか、スイちゃんのことか?」
「スイか…… どうかなぁ? 半分そんなもんかも知れんけど」
「で、なんだ?」
「アレだわ、加護ってやつ」
「生命の加護か? あ、息吹の方か?」
正秀はニヤついた顔で訊いた。
「半分違います」
「また半分?」
「俺達も生命の加護とやらを受けれるんだってさ」
「そうなのか? 違う世界の人間でも受けれるものなのか?」
「スイが言うには、そうらしいけど……」
「お前も受けたいのか?」
「分からん……」
「そうか…… それって元にも戻れるのか?」
「分からん……」
「ん…… じゃあターナに聞いてからだな」
「マサはどうなの?」
「俺か? 俺もこの大剣使ってみたいしな……」
そんな二人の話の途中、着替えたスイがやって来た。
「おはようございます、遅くなって申し訳ありません。直ぐに朝食の準備をしますから」
「俺は要らんよ」
「え? 本当に宜しいのですか?」
為次は、しかめっ面をしながら正秀を見て言う。
「口の中が痛いんでね、誰かさんのせいで……」
「お前が悪いんだぜ。ああでもしないと動かないんだろ、こと女に関しちゃぁよ」
「……はぁ」
「どうされました? 虫歯ですか?」
「いや、違うっぽい」
「そうですか…… では、ヒールポーションを作って来ますね」
「あっ、そういやスイって魔法少女だったもんね。すっかり忘れてたよ」
「それでは、直ぐに用意いたしますので」
そう言ってスイはさっさとキッチンの方へと行ってしまった。
「よかったな為次、直ぐに治りそうで」
「まぁ」
「これで、いくら殴られても安心だな。ははっ」
「マジ勘弁してよ……」
スイは直ぐに戻って来た。
「お待たせしました。どうぞ」
為次に水の入ったグラスを渡す。
「ありがちょ」
「早いな、スイちゃん」
「グラスの水にエンチャントヒールするだけですから」
為次はグラスの水を一気に飲み干す。
ゴク ゴク ゴク
「おお! もう痛くない、すげー! 偉いぞスイ」
「えへへ」
為次に褒められてとても嬉しそうなスイ。
「これで朝食も食べられますよね」
「うん」
「では、直ぐに準備しますので」
「あ、ちょっと待ってスイちゃん」
正秀はキッチンへ向かおうとするスイを呼び止めた。
「はい、なんでしょう?」
「聞きたいんだけどさ、加護って元にも戻せるのか?」
「あ…… はい、戻せるそうですよ」
「へー、戻った人も居るのかな?」
「そうですね、そういった加護の無い人々が集まって暮らす場所もありますよ」
「そうなのか」
「この近くだと、もう無くなりましたが、ファーサ村とかですね」
為次はレッドドラゴン討伐の依頼書を思いだす。
「ファーサ村…… あのレッドドラゴンに消滅させられた……」
「ちょうど力の無い人々が暮らす村が襲われたのか、そりゃ災難だぜ」
「災難…… 災難ねぇ…… 偶然ならいいけどさ」
「ん?」
「神官達にとっては目の上のたんこぶかもね。勝手に増えて後から我に加護とか言われてもさ」
「ああ……」
「まぁ、考え過ぎかな、ターナは優しかったしなぁ」
「あ? ターナ? ターナとなんかあったのか?」
「あわわわ、いやいや、何もないよ、なーんもね」
「怪しいな……」
「ターナ様の胸は気持ち良さそうでしたものね。ご主人様」
そう言いながらスイはジト目で為次を睨むのだ。
「あわわわ、スイ! 早よ朝食作っておいで」
「へー、詳しく聞きかせてもらいたいな」
「なんでもないってば!!」
為次はスイをキッチンに追いやり、おっぱい騒動の件を必死に誤魔化すのであった。
……………
………
…
そして、朝食を食べ終わった三人はターナの所へ向かうことにした。
※ ※ ※ ※ ※
借家を出発しようとする為次とスイは、レオパルト2の前で正秀を待っていた。
「遅い…… 何やってんだろ……」
「見て来ましょうか?」
「んー」
しばらく待つと、遅れた正秀がようやく玄関から出て来た。
大剣をズルズルと引き摺りながらやって来る。
「いやぁ、悪りぃ悪りぃ、コイツが重くてな」
「それ持ってくの?」
「ああ、俺もコイツで戦おうと思ってな」
「なんと戦うのさ……」
「……あー、アレだ……」
「また、ならず者連中みたいなのが来るとマズいだろ。うんうん」
「デザートイーグルがあるよ」
「俺も戦うんだよ、お前だけに任せられないからな」
「いやいや、それ以前にその大剣持てないでしょ」
「気合でなんとかしてみせるさ」
ズル ズル ズル……
正秀は必死に大剣を持ち上げようとするが、引き摺のが精いっぱいの様子だ。
「…………」
為次は呆れて見ていると、スイが訊く。
「マサヒデ様は、その大剣を使いたいのですか?」
「その為に買ったからな、どうだカッコいいだろ」
「よろしければ、リバースグラビティを付与しますが……」
「「え?」」
正秀と為次は、そんなことができるのかと少し驚いた。
「飛んで行かない程度に調整すれば軽くなりますけど」
「ま、ま、マジかスイちゃん!」
「はい」
「直ぐにかけてくれ!」
「はい」
スイは大剣に手をかざすと、呪文を唱える。
「エンチャントリバースグラビティ……」
魔法をかけると大剣が一瞬光った。
見た感じ特に変化は無いようだ。
「できました」
「お!?」
正秀は大剣を思いっ切り持ち上げてみる。
「おお!?」
大剣は重さを感じなくなっており、軽々と宙を舞うのだ。
「おおお!?」
しかし、質量は変わっていないようで、振り上げられた大剣は正秀を引き摺りながら飛んで行く。
「うわぁぁぁぁぁ」
そして、大剣は正秀を連れて2階の窓へと突っ込んで行った……
ガシャーーーン!
「「…………」」
為次とスイは飛んで行った正秀を無言で見送った。
「す、少し軽くし過ぎたのでしょうか……」
「んま、ちょうどいいんかもね……」
二人はまたしても、しばらく待つと大剣をフワフワさせながら玄関から正秀が出て来た。
宙に浮いて軽いはずの大剣だが、何故か重そうに引っ張っていた。
ガラス片で切ったのであろう、そこらじゅうから血を流している。
「あ、お帰り……」
「スイちゃん! 俺にもヒールポーション!」
それを聞いた為次は、そこら辺に生えている花から葉っぱを一枚取ってきてスイに渡すのだ。
「スイ、これでいいよ」
「は、はい、コレを葉っぱポーションにするんですね…… エンチャントヒール」
為次は光った葉っぱを正秀に渡す。
「はいコレ」
「……もしゅ、もしゅ、んぐ」
正秀は受け取った葉っぱを無言で食べた……
「ところで、その付与魔法ってずっと効果があるの?」
と、為次は訊く。
「いえ、先ほど剣にかけたのは10分程度です。魔力の注入量と強さで変わってきます」
「なるほどねー。じゃあさ、レオにもかけれるの?」
「つばい様にですか? もちろんできますよ」
「60トン以上あるけど2トンくらいにしたいかも、15分くらいでお願いできる?」
「はい、分かりました、ご主人様」
スイは返事をすると、レオパルト2に触れ魔法をかける。
「エンチャントリバースグラビティなのです」
魔法をかけると、戦車全体が一瞬光った。
すると、レオパルト2のサスペンションが少し浮くのだ。
それを見た為次は大喜びである。
「うぉぉぉ、やった! これで当面の燃料問題もなんとかなりそうかも。足回りへの負担も減るし、偉いぞスイ」
「えへへへー」
為次に褒められたスイはとても嬉しそうであった。
「よし、それじゃ行くか、全員搭乗!」
正秀が号令をかけると、皆は搭乗する。
「りょかーい」
「はいっ」
大剣はひとまず砲塔の後方に載せると、三人はそれぞれの席に着いた。
為次はエンジンを始動させる。
ゆっくりとアクセルを踏み込むと、戦車は信じられないほど軽やかに快調に動き出すのだ。
「すげー、ここまでとは信じれんわ」
「そんなに違うのか?」
「うん、マサだと、また家に突っ込んで行くかも」
「そ、そうだな……」
そして、三人を乗せたレオパルト2は街へと向かって行くのであった。
※ ※ 神殿内部 ※ ※
―― その頃
ターナとスレイブは神殿に居た。
「あら、あの子達が来るようですわ」
「じゃあ、僕達もギルドに行こうか、母さん」
「そうね、ふふっ」
ターナは嬉しそうに、微笑むのであった……
スイは為次に抱き付きながら、気持ち良さそうに寝息を立てている。
結局、為次は一睡もできなかった。
だから窓から差し込む陽の光に照らされたスイの寝顔を間近に見ていた。
「まだ起きないのか……」
「うにゃ、うにゃ…… ご主人しゃま……」
「…………」
「にゃ? ……あ、ご主人様…… んぁ…… ぉはようございます」
ようやく起きたようだ。
だが、まだ離れたくない様子で為次を抱く腕に力を入れ何か言っている。
「んっふー、んーんー、ご主人しゃま~」
「んーんー、じゃなくて、もう朝だよ」
「んふー……」
「…………」
スイはようやく離れると言う。
「申し訳ございません、寝過ごしてしまいました」
「いや、別にいいけど」
「直ぐに朝食準備をしますね」
「いや、それも別にいいよ。顔でも洗ってくるわ」
「あ、はい。では洗顔の準備しますね」
「いや、マジで結構です」
「そうですか……」
「じゃあ、また後でね」
為次はベッドから出ると、直ぐに部屋から出て行ってしまった。
部屋から出て行く後ろ姿を、少し名残惜しそうに見送るスイであった。
※ ※ ※ ※ ※
為次は顔を適当に洗うとロビーへと行ってみる。
そこには正秀がソファーに座っている。
スイの姿はまだ見えない。
ソファーに座ると、正秀と目を合わせたくないといった感じで、わざとらしく天井を見上げるのだ。
「んあーあ……」
「今日も遅い朝だって言うのに、眠そうだな」
「寝てないから」
「寝ろよ」
「誰のせいだと……」
「お前が連れて来たんだろ」
「はぁ……」
「…………」
しばらく二人は黙っていたが、為次はようやく正秀の方を見る。
「まあ、いいや。それよりちょっと相談があるかも」
「相談? 珍しいな為次が相談とか、スイちゃんのことか?」
「スイか…… どうかなぁ? 半分そんなもんかも知れんけど」
「で、なんだ?」
「アレだわ、加護ってやつ」
「生命の加護か? あ、息吹の方か?」
正秀はニヤついた顔で訊いた。
「半分違います」
「また半分?」
「俺達も生命の加護とやらを受けれるんだってさ」
「そうなのか? 違う世界の人間でも受けれるものなのか?」
「スイが言うには、そうらしいけど……」
「お前も受けたいのか?」
「分からん……」
「そうか…… それって元にも戻れるのか?」
「分からん……」
「ん…… じゃあターナに聞いてからだな」
「マサはどうなの?」
「俺か? 俺もこの大剣使ってみたいしな……」
そんな二人の話の途中、着替えたスイがやって来た。
「おはようございます、遅くなって申し訳ありません。直ぐに朝食の準備をしますから」
「俺は要らんよ」
「え? 本当に宜しいのですか?」
為次は、しかめっ面をしながら正秀を見て言う。
「口の中が痛いんでね、誰かさんのせいで……」
「お前が悪いんだぜ。ああでもしないと動かないんだろ、こと女に関しちゃぁよ」
「……はぁ」
「どうされました? 虫歯ですか?」
「いや、違うっぽい」
「そうですか…… では、ヒールポーションを作って来ますね」
「あっ、そういやスイって魔法少女だったもんね。すっかり忘れてたよ」
「それでは、直ぐに用意いたしますので」
そう言ってスイはさっさとキッチンの方へと行ってしまった。
「よかったな為次、直ぐに治りそうで」
「まぁ」
「これで、いくら殴られても安心だな。ははっ」
「マジ勘弁してよ……」
スイは直ぐに戻って来た。
「お待たせしました。どうぞ」
為次に水の入ったグラスを渡す。
「ありがちょ」
「早いな、スイちゃん」
「グラスの水にエンチャントヒールするだけですから」
為次はグラスの水を一気に飲み干す。
ゴク ゴク ゴク
「おお! もう痛くない、すげー! 偉いぞスイ」
「えへへ」
為次に褒められてとても嬉しそうなスイ。
「これで朝食も食べられますよね」
「うん」
「では、直ぐに準備しますので」
「あ、ちょっと待ってスイちゃん」
正秀はキッチンへ向かおうとするスイを呼び止めた。
「はい、なんでしょう?」
「聞きたいんだけどさ、加護って元にも戻せるのか?」
「あ…… はい、戻せるそうですよ」
「へー、戻った人も居るのかな?」
「そうですね、そういった加護の無い人々が集まって暮らす場所もありますよ」
「そうなのか」
「この近くだと、もう無くなりましたが、ファーサ村とかですね」
為次はレッドドラゴン討伐の依頼書を思いだす。
「ファーサ村…… あのレッドドラゴンに消滅させられた……」
「ちょうど力の無い人々が暮らす村が襲われたのか、そりゃ災難だぜ」
「災難…… 災難ねぇ…… 偶然ならいいけどさ」
「ん?」
「神官達にとっては目の上のたんこぶかもね。勝手に増えて後から我に加護とか言われてもさ」
「ああ……」
「まぁ、考え過ぎかな、ターナは優しかったしなぁ」
「あ? ターナ? ターナとなんかあったのか?」
「あわわわ、いやいや、何もないよ、なーんもね」
「怪しいな……」
「ターナ様の胸は気持ち良さそうでしたものね。ご主人様」
そう言いながらスイはジト目で為次を睨むのだ。
「あわわわ、スイ! 早よ朝食作っておいで」
「へー、詳しく聞きかせてもらいたいな」
「なんでもないってば!!」
為次はスイをキッチンに追いやり、おっぱい騒動の件を必死に誤魔化すのであった。
……………
………
…
そして、朝食を食べ終わった三人はターナの所へ向かうことにした。
※ ※ ※ ※ ※
借家を出発しようとする為次とスイは、レオパルト2の前で正秀を待っていた。
「遅い…… 何やってんだろ……」
「見て来ましょうか?」
「んー」
しばらく待つと、遅れた正秀がようやく玄関から出て来た。
大剣をズルズルと引き摺りながらやって来る。
「いやぁ、悪りぃ悪りぃ、コイツが重くてな」
「それ持ってくの?」
「ああ、俺もコイツで戦おうと思ってな」
「なんと戦うのさ……」
「……あー、アレだ……」
「また、ならず者連中みたいなのが来るとマズいだろ。うんうん」
「デザートイーグルがあるよ」
「俺も戦うんだよ、お前だけに任せられないからな」
「いやいや、それ以前にその大剣持てないでしょ」
「気合でなんとかしてみせるさ」
ズル ズル ズル……
正秀は必死に大剣を持ち上げようとするが、引き摺のが精いっぱいの様子だ。
「…………」
為次は呆れて見ていると、スイが訊く。
「マサヒデ様は、その大剣を使いたいのですか?」
「その為に買ったからな、どうだカッコいいだろ」
「よろしければ、リバースグラビティを付与しますが……」
「「え?」」
正秀と為次は、そんなことができるのかと少し驚いた。
「飛んで行かない程度に調整すれば軽くなりますけど」
「ま、ま、マジかスイちゃん!」
「はい」
「直ぐにかけてくれ!」
「はい」
スイは大剣に手をかざすと、呪文を唱える。
「エンチャントリバースグラビティ……」
魔法をかけると大剣が一瞬光った。
見た感じ特に変化は無いようだ。
「できました」
「お!?」
正秀は大剣を思いっ切り持ち上げてみる。
「おお!?」
大剣は重さを感じなくなっており、軽々と宙を舞うのだ。
「おおお!?」
しかし、質量は変わっていないようで、振り上げられた大剣は正秀を引き摺りながら飛んで行く。
「うわぁぁぁぁぁ」
そして、大剣は正秀を連れて2階の窓へと突っ込んで行った……
ガシャーーーン!
「「…………」」
為次とスイは飛んで行った正秀を無言で見送った。
「す、少し軽くし過ぎたのでしょうか……」
「んま、ちょうどいいんかもね……」
二人はまたしても、しばらく待つと大剣をフワフワさせながら玄関から正秀が出て来た。
宙に浮いて軽いはずの大剣だが、何故か重そうに引っ張っていた。
ガラス片で切ったのであろう、そこらじゅうから血を流している。
「あ、お帰り……」
「スイちゃん! 俺にもヒールポーション!」
それを聞いた為次は、そこら辺に生えている花から葉っぱを一枚取ってきてスイに渡すのだ。
「スイ、これでいいよ」
「は、はい、コレを葉っぱポーションにするんですね…… エンチャントヒール」
為次は光った葉っぱを正秀に渡す。
「はいコレ」
「……もしゅ、もしゅ、んぐ」
正秀は受け取った葉っぱを無言で食べた……
「ところで、その付与魔法ってずっと効果があるの?」
と、為次は訊く。
「いえ、先ほど剣にかけたのは10分程度です。魔力の注入量と強さで変わってきます」
「なるほどねー。じゃあさ、レオにもかけれるの?」
「つばい様にですか? もちろんできますよ」
「60トン以上あるけど2トンくらいにしたいかも、15分くらいでお願いできる?」
「はい、分かりました、ご主人様」
スイは返事をすると、レオパルト2に触れ魔法をかける。
「エンチャントリバースグラビティなのです」
魔法をかけると、戦車全体が一瞬光った。
すると、レオパルト2のサスペンションが少し浮くのだ。
それを見た為次は大喜びである。
「うぉぉぉ、やった! これで当面の燃料問題もなんとかなりそうかも。足回りへの負担も減るし、偉いぞスイ」
「えへへへー」
為次に褒められたスイはとても嬉しそうであった。
「よし、それじゃ行くか、全員搭乗!」
正秀が号令をかけると、皆は搭乗する。
「りょかーい」
「はいっ」
大剣はひとまず砲塔の後方に載せると、三人はそれぞれの席に着いた。
為次はエンジンを始動させる。
ゆっくりとアクセルを踏み込むと、戦車は信じられないほど軽やかに快調に動き出すのだ。
「すげー、ここまでとは信じれんわ」
「そんなに違うのか?」
「うん、マサだと、また家に突っ込んで行くかも」
「そ、そうだな……」
そして、三人を乗せたレオパルト2は街へと向かって行くのであった。
※ ※ 神殿内部 ※ ※
―― その頃
ターナとスレイブは神殿に居た。
「あら、あの子達が来るようですわ」
「じゃあ、僕達もギルドに行こうか、母さん」
「そうね、ふふっ」
ターナは嬉しそうに、微笑むのであった……
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