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第43話 最強! 宇宙戦車現る
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「誰だね君は? 勝手に入って来ては失礼ではないかね?」
と、大統領は表情も変えずに為次に向かって言った。
目の前で少女が凌辱をされていても微動だにしなかった大統領であるが為次には関心を持ったらしい。
「一応ノックはしたんだけどぉ」
律儀に答える為次ではあるが……
「…………」
特に何も返答は無い。
そこへ謎の男の喚き声が聞こえてくる。
「おいこらテメェ! 勝手に大統領に近寄るんじゃねぇよ! 何しに来やがった? ああん?」
「あー…… あんたには用は無いからピーチと遊んでていいよ。しっしっ」
為次は中途半端に振り向き、左手で追い払う仕草をしながら言った。
「なんだと! 俺様を舐めるったぁ、いい度胸じゃねーか! すぐにぶっ殺してやるぜ!!」
気が短いのであろう、掴んでいたピーチエールを壁に向かって投げ飛ばす。
「こんな奴はもう要らねぇ! 死んどけ!」
「きゃぁぁぁ!」
ドカッ ガラガラ……
壁に打ち付けられ床に倒れたピーチエールの上に崩れた瓦礫が覆い被さった。
男はそんなことは気にもせず再び赤鬼へと乗り込んだ。
裂けていた赤鬼の体が閉じ動き出す。
「うぉぉぉぉぉっ! 一瞬であの世に送ってやるっ!!」
だが為次は慌てた様子もない。
「はいはい、ちょっと待ってね」
「ああ?」
「さっきの質問に答えてあげよう。俺が来た理由はピーチの回収と大統領の目的を聞くこと。んで、最初の目的はあんたが手を離した時点で完了。頭の悪い敵は好きだよ」
「はぁァァァぁッ!? ん、だとぉっ!!」
為次は崩れた壁に埋もれているピーチエールの傍まで行くと、見えていた足を掴んで引っ張り出した。
「あ…… うう…… 触手の人……」
「為次だけどね。まあいいや合ってるし、はいこれ」
と、ポケットから小瓶を取り出し頭を起こしてやると口元にあてがった。
「あ…… ありがとうございます……」
大人しくヒールポーションを飲むピーチエールは嬉しかった。
このまま死ぬのではないかと思っていた所へ、期待の薄かった怪人軍団の一人がやって来たから。
どうやったのか知らないが国家警備隊によるアジトの制圧を振り切ったようだ。
その上で大統領官邸に一人で入って来ている。
宿敵であった筈の触手怪人が今は頼もしく見えた。
「勝手なことしてんじゃねーぞぉ!」
もっとも赤鬼はかなりご立腹だ。
2人のやり取りを見てイライラしている。
思い通りに行かないことに対しては力で捻じ伏せるという単細胞的思考。
巨大な拳を振り上げながら襲って来る!
「触手の人! 危ないっ!」
為次の背後から襲い掛かる赤鬼にピーチエールは注意喚起をしたが……
ゴスッ!
「んなっ!?」
「え……?」
赤鬼とピーチエールは驚いた。
なんと! 巨大で強烈なパンチは為次に当たったまま止まってしまったのだ。
平然とする為次は何も気にした様子はなく立ち上がると赤鬼を無視して大統領の方へと歩いて行く。
「お、おい…… 待てゴルァァァ!! ふぜけてじゃねーぞぉぉぉぉぉっ!!」
「もぉ、うるさい人だなぁ……」
「なんだと! だったらコイツがどうなってもいいのかっ?」
赤鬼はピーチエールを指しながら叫んだ。
「どうにもならんってば」
「あ? ああ?」
為次の言っている意味が分からない赤鬼は床で倒れているピーチエールを大きな手で掴み上げる。
「きゃぁ。は、離しなさい」
「うるせぇ、ジタバタするんじねぇ」
「くっ…… この……」
また捕らえられてしまったピーチエールは脱出を試みるが鬼の手はピクリとも動かない。
「コイツを助けに来たんだろ? このまま握り潰してやってもいいんだぜ? あ?」
ピーチエールを人質に取った赤鬼はニヤリと笑ってみせた。
しかし、為次は赤鬼に背を向け左手を軽く上げると大統領の方へと行ってしまう。
「おいっ!! 無視してんじねーッッッ!!」
怒り狂う赤鬼。
ピーチエールを持つ手に力が入り……
「な、なんだこりゃ……!?」
巨大な鬼の手は小柄な少女を握り潰すことはもちろん、痛みも苦しみも与えることができない。
凄く硬い…… 先程までいたぶっていた筈の少女は尋常ではなく硬かった。
両腕で握ってみるが何も変わらない。
叩いても引っ張っても全くダメージを受けていない様子だ。
「あの、何をしているのですか?」
「くそっ! どうなってるんだっ!?」
平然とするピーチエールに焦りが隠せない。
ヤケクソになって床へと投げつけてみるが……
ドカッ!
敷かれた絨毯が破れ床に小さなクレーターができただけで痛みすらも感じていない。
しかも、太ももの骨を砕いた筈なのに立ち上がってきた。
「う、嘘だろ……」
たじろぐ赤鬼に為次が話し掛けてくる。
「まあ、諦めた方がいいよ。あんたが手を離した時点でピーチの回収は終わってる。それに警備員さん達が襲撃に来るのも、むにゅりんを解析した時点で予測できてたし」
そう為次が言った瞬間だった。
窓がバーンとイキナリ開き白髪の老人が顔を覗かせる。
「なんじゃと!? それは本当か!?」
「今度はなんだ!? って、ジジィ何者だ、何処から湧いて来やがった!?」
赤鬼が老人を見て驚くのも無理もない、ここは3階である。
しかも両足を少し開く感じでダラリと垂らし、前屈みで股間付近に両手を付く変なの格好で宙に浮いているのだ。
「儂はもりもり博士じゃ。よくも儂の研究所を滅茶苦茶にしてくれたのう」
「もりもり博士だぁ?」
「それよりタメツグよ。今の話は本当か? 奴らが研究所を制圧に来るのを知っておったのか?」
「まあね。むにゅりんにセンサーと発信機付いてたから」
「ふざけるでない! 帰る場所が無くなってしまったではないか!」
「まあまあ、そう怒らないでよ」
「怒るに決まっておろうが……っ」
「はいはい…… それより大統領さん。宇宙人のあんたらが、こんなへんぴな惑星を侵略してどうすんのさ?」
うるさい連中を無視して為次は大統領に訊いた。
「なぜ私が宇宙人だと?」
「簡単な話だよ。俺達も宇宙人だし、あんたらより技術力も上だ。さっきスキャンしたら確かに大統領の頭の中にムニュリス星人が寄生してる。しかも悪評の高いアブベーン種族だ」
「……宇宙船があるのか?」
「もちろん。ま、船じゃないし小型だけど高レベル空間まで潜行可能なやつがね。しかもワームホールも生成可能ときたもんだ」
「ワームホール!? ……本当なのか?」
「見たい?」
「ああ…… 是非とも」
「じゃあもりもり博士を見てごらんよ」
そう言って為次は窓の外で宙に浮くもりもり博士を親指で指した。
「あの老人が?」
「スイ」
と、指をパチンと鳴らす為次。
すると空間が歪み次第に戦車が姿を現す。
「なんだねこれは……!? 光学迷彩なのか!?」
「お、おい。なんだこりゃぁ……」
大統領だけでなく赤鬼も驚いて窓の外を見ている。
姿を見せたレオパルト2はホイールを下に向け空間走行モードで浮かんでいた。
浮いているように見えていたもりもり博士は砲身の先に跨がって座っていたのだ。
「それが…… 宇宙船なのか……?」
怪訝な顔をしながら大統領は為次に訊いた。
「まあね。あんまり小さいからガッカリしたかな?」
「いや…… 本当にワープはできるのかね?」
「信じる信じないは大統領さんの勝手だけどさ。ワープは当然だけど、ああ見えても星系ごと吹っ飛ばせる破壊力はあるよ(まだテストしてないけどね)」
「にわかには信じられないが…… もし本当ならばワープのできない宇宙船を連れて他の星系まで行けるのかね?」
「え?」
予想外の質問であった。
てっきり為次はアブベーンがこの星を侵略しようとしているのだと思っていた。
なのに、まるで他の宇宙船を運んでほしいかのような質問だ。
「そのサイズの宇宙船で巨大船を連れてワープできるのか? と、聞いている」
「あ、ああ、うん。物にもよるけど自力である程度動けるならワームホールを生成して一緒にジャンプはできるけど…… あんまりデカ過ぎると牽引は難しいかも」
「居住モジュールのみならばどうだねっ!? あれならば!! あれならまだ自力での航行は可能だ!!」
「あっ…… まさか……」
突然の大統領の必死な訴えに為次はなんとなく理解できた。
乗って来た宇宙船が何らかの原因で壊れたのだろう。
帰る手段を無くしてしまったのだと。
それならば金属を必死に集めているのも分かる。
巨大な宇宙船の損傷が激しく、修復に相当の資材を必要としているに違いない。
と。
「どうだね? やれるのか!?」
「自力航行が可能なら問題は無いよ。だけど、そんだけのデカさの船は何処にも……」
降下前に地上を観測した限りでは巨大な宇宙船など発見できなかった。
例え小型船であってもワープをするだけのエネルギー元を持っているならば見落とす筈はなかった。
「宇宙船なら西の沖合にある。居住モジュールだけならば今でも浮上可能だ」
「あっ。海の中か……」
広大な海を持つこの惑星。
宇宙からのスキャンは地上しかしていなかった。
面倒だったから……
「スイっ!」
為次がスイを呼ぶとレオパルト2の砲塔後部の雑具箱が開き、中からサテライトが出て来た。
サテライトは一気に上昇すると一瞬で西の彼方へと飛び去って行く。
執務室には静寂に包まれた……
ガコッ
と、急に装填手ハッチが開くとスイが上半身を乗り出した。
「タメツグ様ぁ、有りました。丸くて四角いのが沈んでいるのです」
「んん? 丸なの? 四角なの?」
よく分からない報告に為次は地球でスマホとして使っていた物をポケットから取り出すと、サテライトからの情報を表示して見る。
そこに映っていたのは確かに丸と四角が組み合わさった、前方後円墳みたいな宇宙船だ。
大きさは全長23300メートルと大統領が巨大船と言うのも納得の代物であった。
「おけ、大統領。あんたらを運んであげるよ」
為次はニヤリと笑ってみせる。
「本当か!? 本当に可能なのかね?」
「飛べるなら問題無いよ」
「……見返りは、見返りはなんだね? 君達の望むものは……」
「そうね、姿を見せて一芝居打ってくれればそれでいいかな」
「……芝居と?」
戻って来たサテライトを見ながら為次は話始める。
既に筋書きはできていた。
アブベーンを悪者にしてそれを魔法少女ともりもり博士が打ち倒す。
アブベーンの予想外な目的に手っ取り早い解決法だと自負しているのであった。
※ ※ ※ ※ ※
その頃、正秀は……
「そこのお姉さん。ちょっと聞きたいんだが大統領の家を知らないか?」
「家…… ですか……? 自宅は知りませんが……」
「知らないのか、手間取らせちまったなっ」
「大統領に用があるなら官邸に…… あっ……」
お姉さんの話を最後まで聞かずに立ち去る正秀。
迷子になっていた……
と、大統領は表情も変えずに為次に向かって言った。
目の前で少女が凌辱をされていても微動だにしなかった大統領であるが為次には関心を持ったらしい。
「一応ノックはしたんだけどぉ」
律儀に答える為次ではあるが……
「…………」
特に何も返答は無い。
そこへ謎の男の喚き声が聞こえてくる。
「おいこらテメェ! 勝手に大統領に近寄るんじゃねぇよ! 何しに来やがった? ああん?」
「あー…… あんたには用は無いからピーチと遊んでていいよ。しっしっ」
為次は中途半端に振り向き、左手で追い払う仕草をしながら言った。
「なんだと! 俺様を舐めるったぁ、いい度胸じゃねーか! すぐにぶっ殺してやるぜ!!」
気が短いのであろう、掴んでいたピーチエールを壁に向かって投げ飛ばす。
「こんな奴はもう要らねぇ! 死んどけ!」
「きゃぁぁぁ!」
ドカッ ガラガラ……
壁に打ち付けられ床に倒れたピーチエールの上に崩れた瓦礫が覆い被さった。
男はそんなことは気にもせず再び赤鬼へと乗り込んだ。
裂けていた赤鬼の体が閉じ動き出す。
「うぉぉぉぉぉっ! 一瞬であの世に送ってやるっ!!」
だが為次は慌てた様子もない。
「はいはい、ちょっと待ってね」
「ああ?」
「さっきの質問に答えてあげよう。俺が来た理由はピーチの回収と大統領の目的を聞くこと。んで、最初の目的はあんたが手を離した時点で完了。頭の悪い敵は好きだよ」
「はぁァァァぁッ!? ん、だとぉっ!!」
為次は崩れた壁に埋もれているピーチエールの傍まで行くと、見えていた足を掴んで引っ張り出した。
「あ…… うう…… 触手の人……」
「為次だけどね。まあいいや合ってるし、はいこれ」
と、ポケットから小瓶を取り出し頭を起こしてやると口元にあてがった。
「あ…… ありがとうございます……」
大人しくヒールポーションを飲むピーチエールは嬉しかった。
このまま死ぬのではないかと思っていた所へ、期待の薄かった怪人軍団の一人がやって来たから。
どうやったのか知らないが国家警備隊によるアジトの制圧を振り切ったようだ。
その上で大統領官邸に一人で入って来ている。
宿敵であった筈の触手怪人が今は頼もしく見えた。
「勝手なことしてんじゃねーぞぉ!」
もっとも赤鬼はかなりご立腹だ。
2人のやり取りを見てイライラしている。
思い通りに行かないことに対しては力で捻じ伏せるという単細胞的思考。
巨大な拳を振り上げながら襲って来る!
「触手の人! 危ないっ!」
為次の背後から襲い掛かる赤鬼にピーチエールは注意喚起をしたが……
ゴスッ!
「んなっ!?」
「え……?」
赤鬼とピーチエールは驚いた。
なんと! 巨大で強烈なパンチは為次に当たったまま止まってしまったのだ。
平然とする為次は何も気にした様子はなく立ち上がると赤鬼を無視して大統領の方へと歩いて行く。
「お、おい…… 待てゴルァァァ!! ふぜけてじゃねーぞぉぉぉぉぉっ!!」
「もぉ、うるさい人だなぁ……」
「なんだと! だったらコイツがどうなってもいいのかっ?」
赤鬼はピーチエールを指しながら叫んだ。
「どうにもならんってば」
「あ? ああ?」
為次の言っている意味が分からない赤鬼は床で倒れているピーチエールを大きな手で掴み上げる。
「きゃぁ。は、離しなさい」
「うるせぇ、ジタバタするんじねぇ」
「くっ…… この……」
また捕らえられてしまったピーチエールは脱出を試みるが鬼の手はピクリとも動かない。
「コイツを助けに来たんだろ? このまま握り潰してやってもいいんだぜ? あ?」
ピーチエールを人質に取った赤鬼はニヤリと笑ってみせた。
しかし、為次は赤鬼に背を向け左手を軽く上げると大統領の方へと行ってしまう。
「おいっ!! 無視してんじねーッッッ!!」
怒り狂う赤鬼。
ピーチエールを持つ手に力が入り……
「な、なんだこりゃ……!?」
巨大な鬼の手は小柄な少女を握り潰すことはもちろん、痛みも苦しみも与えることができない。
凄く硬い…… 先程までいたぶっていた筈の少女は尋常ではなく硬かった。
両腕で握ってみるが何も変わらない。
叩いても引っ張っても全くダメージを受けていない様子だ。
「あの、何をしているのですか?」
「くそっ! どうなってるんだっ!?」
平然とするピーチエールに焦りが隠せない。
ヤケクソになって床へと投げつけてみるが……
ドカッ!
敷かれた絨毯が破れ床に小さなクレーターができただけで痛みすらも感じていない。
しかも、太ももの骨を砕いた筈なのに立ち上がってきた。
「う、嘘だろ……」
たじろぐ赤鬼に為次が話し掛けてくる。
「まあ、諦めた方がいいよ。あんたが手を離した時点でピーチの回収は終わってる。それに警備員さん達が襲撃に来るのも、むにゅりんを解析した時点で予測できてたし」
そう為次が言った瞬間だった。
窓がバーンとイキナリ開き白髪の老人が顔を覗かせる。
「なんじゃと!? それは本当か!?」
「今度はなんだ!? って、ジジィ何者だ、何処から湧いて来やがった!?」
赤鬼が老人を見て驚くのも無理もない、ここは3階である。
しかも両足を少し開く感じでダラリと垂らし、前屈みで股間付近に両手を付く変なの格好で宙に浮いているのだ。
「儂はもりもり博士じゃ。よくも儂の研究所を滅茶苦茶にしてくれたのう」
「もりもり博士だぁ?」
「それよりタメツグよ。今の話は本当か? 奴らが研究所を制圧に来るのを知っておったのか?」
「まあね。むにゅりんにセンサーと発信機付いてたから」
「ふざけるでない! 帰る場所が無くなってしまったではないか!」
「まあまあ、そう怒らないでよ」
「怒るに決まっておろうが……っ」
「はいはい…… それより大統領さん。宇宙人のあんたらが、こんなへんぴな惑星を侵略してどうすんのさ?」
うるさい連中を無視して為次は大統領に訊いた。
「なぜ私が宇宙人だと?」
「簡単な話だよ。俺達も宇宙人だし、あんたらより技術力も上だ。さっきスキャンしたら確かに大統領の頭の中にムニュリス星人が寄生してる。しかも悪評の高いアブベーン種族だ」
「……宇宙船があるのか?」
「もちろん。ま、船じゃないし小型だけど高レベル空間まで潜行可能なやつがね。しかもワームホールも生成可能ときたもんだ」
「ワームホール!? ……本当なのか?」
「見たい?」
「ああ…… 是非とも」
「じゃあもりもり博士を見てごらんよ」
そう言って為次は窓の外で宙に浮くもりもり博士を親指で指した。
「あの老人が?」
「スイ」
と、指をパチンと鳴らす為次。
すると空間が歪み次第に戦車が姿を現す。
「なんだねこれは……!? 光学迷彩なのか!?」
「お、おい。なんだこりゃぁ……」
大統領だけでなく赤鬼も驚いて窓の外を見ている。
姿を見せたレオパルト2はホイールを下に向け空間走行モードで浮かんでいた。
浮いているように見えていたもりもり博士は砲身の先に跨がって座っていたのだ。
「それが…… 宇宙船なのか……?」
怪訝な顔をしながら大統領は為次に訊いた。
「まあね。あんまり小さいからガッカリしたかな?」
「いや…… 本当にワープはできるのかね?」
「信じる信じないは大統領さんの勝手だけどさ。ワープは当然だけど、ああ見えても星系ごと吹っ飛ばせる破壊力はあるよ(まだテストしてないけどね)」
「にわかには信じられないが…… もし本当ならばワープのできない宇宙船を連れて他の星系まで行けるのかね?」
「え?」
予想外の質問であった。
てっきり為次はアブベーンがこの星を侵略しようとしているのだと思っていた。
なのに、まるで他の宇宙船を運んでほしいかのような質問だ。
「そのサイズの宇宙船で巨大船を連れてワープできるのか? と、聞いている」
「あ、ああ、うん。物にもよるけど自力である程度動けるならワームホールを生成して一緒にジャンプはできるけど…… あんまりデカ過ぎると牽引は難しいかも」
「居住モジュールのみならばどうだねっ!? あれならば!! あれならまだ自力での航行は可能だ!!」
「あっ…… まさか……」
突然の大統領の必死な訴えに為次はなんとなく理解できた。
乗って来た宇宙船が何らかの原因で壊れたのだろう。
帰る手段を無くしてしまったのだと。
それならば金属を必死に集めているのも分かる。
巨大な宇宙船の損傷が激しく、修復に相当の資材を必要としているに違いない。
と。
「どうだね? やれるのか!?」
「自力航行が可能なら問題は無いよ。だけど、そんだけのデカさの船は何処にも……」
降下前に地上を観測した限りでは巨大な宇宙船など発見できなかった。
例え小型船であってもワープをするだけのエネルギー元を持っているならば見落とす筈はなかった。
「宇宙船なら西の沖合にある。居住モジュールだけならば今でも浮上可能だ」
「あっ。海の中か……」
広大な海を持つこの惑星。
宇宙からのスキャンは地上しかしていなかった。
面倒だったから……
「スイっ!」
為次がスイを呼ぶとレオパルト2の砲塔後部の雑具箱が開き、中からサテライトが出て来た。
サテライトは一気に上昇すると一瞬で西の彼方へと飛び去って行く。
執務室には静寂に包まれた……
ガコッ
と、急に装填手ハッチが開くとスイが上半身を乗り出した。
「タメツグ様ぁ、有りました。丸くて四角いのが沈んでいるのです」
「んん? 丸なの? 四角なの?」
よく分からない報告に為次は地球でスマホとして使っていた物をポケットから取り出すと、サテライトからの情報を表示して見る。
そこに映っていたのは確かに丸と四角が組み合わさった、前方後円墳みたいな宇宙船だ。
大きさは全長23300メートルと大統領が巨大船と言うのも納得の代物であった。
「おけ、大統領。あんたらを運んであげるよ」
為次はニヤリと笑ってみせる。
「本当か!? 本当に可能なのかね?」
「飛べるなら問題無いよ」
「……見返りは、見返りはなんだね? 君達の望むものは……」
「そうね、姿を見せて一芝居打ってくれればそれでいいかな」
「……芝居と?」
戻って来たサテライトを見ながら為次は話始める。
既に筋書きはできていた。
アブベーンを悪者にしてそれを魔法少女ともりもり博士が打ち倒す。
アブベーンの予想外な目的に手っ取り早い解決法だと自負しているのであった。
※ ※ ※ ※ ※
その頃、正秀は……
「そこのお姉さん。ちょっと聞きたいんだが大統領の家を知らないか?」
「家…… ですか……? 自宅は知りませんが……」
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