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怖いもの
しおりを挟む「これ雨降るかなぁ?律の所に行きたいのに。」
学校の玄関口で、今にも泣き出しそうな空を見上げる。
今日はテストでいつもより早く授業が終わったから、少し律の所に寄りたかったのにな。
天気予報では晴れだったから傘なんて持って来てないし。このまま律の所に行ったら帰りは土砂降りよね。
学校から寮まで1キロほど。帰りつく頃にはずぶ濡れ確定だ。
空はどす黒い雲で覆われていた。
「これはお天気お姉さんもショック受けてるかなぁ。」
予想大外れだよー。
「…桃原?」
「あ、柳瀬。」
その声に振り返ると、そこには黒い傘を持った柳瀬が立っていた。
「何、傘ねぇの?俺置き傘してたからさ。
…雨降るかもだし、寮まで送ってくぞ?」
「え。いや、」
何で最近そんなに優しいの。そんなこと今まで言ったこと無いじゃん。
「ほら、行こうぜ。降ってきたら入れてやるよ。」
柳瀬に腕を掴まれる。
「えっと、」
どうしよう。じゃあ残念だけど律の所はまた今度にしようかな。
「じゃあ、お願い…」
「それには及ばない。」
突然の聞き慣れたイケメンボイスと共に、私はその声の主に反対の腕を掴まれて引き寄せられた。
「え?あ、律⁈」
なんでここに?しかも人の姿。
「…桃原、こいつは?」
「ふん、お前には関係ない。行くぞ。」
律はそう言うと私の腕を取って歩き出す。
「え、律?」
「あ、おい!なんだよお前!」
「ごめんね柳瀬!私は大丈夫だから、また月曜日ね!」
「え。桃原…?」
❇︎❇︎❇︎
「ねぇ、律どこ行くの?っていうか何で学校にいたの?」
「…どこ行くって社だ。」
「え?でもここ普通の道だし…。」
「別に学校からじゃなくても行ける。」
「あ、そうなんだ。」
で、なんで学校にいたのかな?私に何か用事があったとか?
「…なんだよ。」
「今日はどうしたのかなぁって。」
いつの間にか私達は手を繋いでる。
私の手を引いて歩く律の横顔はいつもより少し固い?
「別に、ただお前の事を考えてて、たまには俺から逢いに行ってもいいかと思っただけだ。」
「え、それほんと⁈」
「?なんだ?」
「うん?えへへ、嬉しいなって!」
「そうか。」
あ、笑った。やっぱり律の笑った顔は好き。
さっきはどうしたんだろ。
それから私は学校からじゃなくてもあの神社へ行ける道を教えてもらった。
あまり人通りの無い道だったから、どちらにせよあの神社に辿り着ける人って少ないんだろうな。
「…今日はどのくらいいれる?」
「そうだなぁ、門限は21時だから、それまでには帰るよ。」
「分かった。」
それから社に着いた私達は、いつものように、たわいもない話をする。
夏休みになったら何しようだとか、甘いもの食べに行きたいだとか。
そんな話をしていたら、あっという間にもう帰らないといけない時間。
「あーあ、そろそろ帰らなきゃ。」
そう呟いた時だった。
ゴロゴロゴロ…
え、もしかして雷…?
「っうそ…。」
「…?どうした?」
「え?や、なんでも…」
ピカッ!!
「やっ、」
思わず耳を塞いで目を瞑った。
私は雷がこの世で一番嫌いだ。
小さい頃、外で遊んでいたら目の前に雷が落ちた事があった。
そのけたたましい音と光と衝撃がとても恐ろしくて、それからトラウマになってしまった。
「まさか、雷が怖いのか?」
「…っ、」
どうしよう、この歳にもなってって呆れられる?
「…ほら、こっち来い。」
「え。」
そう言うと、律は正面からギュッと抱きしめてくれた。
「え、え⁈律何を、」
「怖いんだろ?ならこうしてればいい。」
「…う、呆れた?」
「何でだよ。可愛いだろ、たかが雷が怖いなんて。
…ぶふっ。」
「ちょっと!笑ってるじゃない!」
「ほら、離れると雷が落ちてくるぞ?」
「う、嘘よ!」
「まぁ、俺は別にいいけどな。」
「…やだ。離れないで。でも雷が怖いから仕方なくなんだからね。」
「ふっ、あぁ。」
律の腕の中はあったかくて、落ち着く。
雷の音は聞こえるのに、不思議と怖くない。
「ありがとう、律。」
やっぱり私、律の事大好き。
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