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プロローグ
しおりを挟む雛森 千春は16歳の女の子。
極普通の一般家庭にひとりっ子として生まれた。しかし、両親が事故で他界し、現在は親戚の見守りの元、1人暮らしをしている。
彼女は幼い頃から美しく、腰まであるふわっとした艶やかな黒髪に、黒曜石のような黒い瞳を持ち、顔立ちは優しく、明るい性格だ。
彼女の美貌はいつも、周りの者達を魅了していた。
そんな彼女は、ある特別な力を持っている。
それは、「自然」の力を自在に操れ、「自然」と会話ができることーー
(暑いなぁ…。)
ーーそれなら、涼しい風を吹かせてあげましょう。
(大変!お隣さんが火事っ!)
ーー俺に任せろ。大雨を降らせてやる。
(家に泥棒さんが!)
ーーそんなもの、雹(ひょう)で潰してやる。
「自然」とは、人間の手が加わったものを除いた、この世のありとあらゆるものをいうのだ。
つまり、「地」「水」「火」「風」「空」この全てが千春の味方だということ。
そして彼女は、自然に名前をつけて呼んでいる。
『地』は、スエロ__地や草花、木を司る。
『水』は、アクア__水を司る。
『火』は、ファイ__火を司る。
『風』は、フィン__風を司る。
『空』は、シエロ__空がもたらす全てのものを司る。
「自然」に守られ、愛される日々。
そんな千春はこの日、友達の誕生日パーティを楽しんでいた。
帰る頃には夜も遅くなってしまっていたが、
やや騒ぎすぎて熱のこもった体を冷やそうと、夜道をパーティドレスを靡かせながら歩いていた。
「あぁ、楽しかったぁ。デザートも美味しかったし!ちょっと食べ過ぎたかな?」
そんな事を呟いていると、
『ーー、愛し子様…!どうか…!』
「…えっ?」
ふと頭の中で不思議な声が聞こえたかと思うと、
突然目の前が強い光で覆われた。
暗闇に慣れた目には辛く、その余りのまぶしさに目が眩む。
「っ…なに⁈」
そして、しばらくしてから恐る恐る目を開けると、千春は見知らぬ森の中に1人ポツンと立っていた。
ここは、地球とは違う世界。
千春は、突然異世界へと召喚されてしまったのだった。
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